屯田兵になろう【北海道ハタケ仕事1】

ハタケ脇の一軒家

無人販売所の脇に入っていったところに、一軒家が建っていた。ここがハタケマメヒコの前線基地となっている。春から秋にかけて、マメヒコの従業員が1名ここに送り込まれ、毎日ひたすらハタケを耕すという生活を送ることになる。渋谷や三軒茶屋のおしゃれなカフェで働く!というつもりが北海道送りで農作業なのだから、このギャップたるや相当なものだ。

今年常駐しているのは女性の方だった。井川さんから車を渡され、そこに必要資材を詰め込んだ上でフェリーを使って北海道に送り込まれていた。北海道で何かをするためには車が必須。かといって、秋~春までの間はハタケは無人になるわけであり、そんな場所のために専用の車をわざわざ用意するのはもったいない、と思ったのだろう。

「ハタケ仕事だなんて!って思いませんでしたか?」

とそのスタッフさんに聞いてみたら、もともと北海道出身だったので(抵抗感はないです)、と笑顔で教えてくれた。

「ただし、買い物に難儀しますね。ユニクロでさえ、千歳にはないですから」

と言っていた。確かにそうだ。これまでの勤務地とは雲泥の差だ。

「イオンが生命線です」

と苦笑していたが、なるほど都会暮らしでないとそういう生活になるのだな。

住み込みで半年間働く、といってもあくまでも仮住まいだし、井川さんをはじめいろいろ手伝いや視察が訪れる。なので、家具や生活雑貨は最低限のものしか置かれていない上に自分好みにあれこれできる余裕もない。結構キツい生活だと思う。

時々、先代がハタケの指導のために訪れてくれているが、日によっては「丸一日誰とも会わない」ということだってあるかもしれない。外に出ていても、だ。なにせ職住隣接で、職場がハタケだから。

ハタケ

社宅(?)の奥に広がっているのがハタケマメヒコ本体。

広い!

いや、北海道ではこの程度の規模は「小さすぎて話にならない」という程度なんだろう。でも、「ウサギ小屋」と揶揄される規模の家に住み、通勤電車で縮こまりながら朝晩を過ごしている身からするとこの大きさは過呼吸ものだ。すげえなあ。

で、その広いハタケは既に整地されている。・・・つまり、今日明日でここに種を植えろ、ということか。わかってはいたけど、こりゃあ大変だぞ?

ハタケの土

ただ、土質の良さは素人目でもよくわかった。足がずぶずぶとめり込む柔らかさで、きめが細かい。そして土の粒にばらつきが少なく、ムラがあまりない。なるほど、野菜というのはこういう土地で作られるんだな、と今更ながら感心する。家庭菜園とか、ベランダのプランターとは全く次元が違う。

以前、「子供に鳥の絵を描かせたら、四本足の鳥を描いた」とか「魚の絵を描かせたら、切り身を描いた」などというのがニュースになり、「最近の若者は・・・」という論調になったことを思い出した。現場を知らない、知りようがない都会暮らしをやってるのだからある意味当然な話で、僕が今こうしてハタケの土質におどろいていることを踏まえると、そんな子供たちを到底笑えない。

自衛隊迷彩着用

当初聞いていた話だと、「初日は座学でハタケについて学び、2日目は実学としてハタケで作業」ということだった。しかし座学なんて何一つなく、全員揃ってあいさつがあった後はすぐに今日明日の作業内容が告げられ、着替えてハタケに向かうことになった。

相変わらずのマメヒコクオリティで、むしろこういうのが面白い。「話が違う!座学を楽しみにしていたのに!」と怒っちゃうような人は、到底マメヒコの自由奔放っぷりにはついていけない。

「いきなりかよ、やるなあ」なんて言いながら、僕はまだニヤニヤできるタイプ。いや、もともと僕はガチガチにプランを固めて、その通りに行動することに快楽を覚える性格だ。だからこういう臨機応変さは得意ではない。しかし、ことマメヒコに関しては、もういちいちそんなので一喜一憂しててもきりがない、という悟りの境地に達してしまった。レンタカーの手配しかり、味噌会の運営もしかり。

後日、井川さんと面談をする機会があったのだが、「おかでんはザルの目が粗そう(おおざっぱ)にみえてザルの目が細かい。その逆の人(細かそうに見えて実はおおざっぱ)はたくさんいるけど、そういうおかでんのような人材は必要だ」と言われた。いや、実際そうだと思う。マメヒコ、ザルの目がかなり粗いもん。で、そのまま話を進めていけば、今頃僕はマメヒコの社員になっていたのかもしれない。

ちなみに、レンタカーをご一緒した女性の方は、後日いつの間にかマメヒコの社員になっていた。他にも、この北海道遠足に顔を出した人のうち2名が遠足後に社員になっており、なんかもうマメヒコの人材収穫現場と化している状態だった。

転職を決意した人たちは、「信者」とか「熱狂的なファン」みたいな胡散臭いレベルの話じゃなく、シンプルに面白い世界だと感じたからだろう。日常の中にある非日常が毎日続くような場、それがマメヒコ・・・ということなのかもしれない。

さて僕は、農作業をするための服は陸上自衛隊の迷彩服にしてみた。このすぐ近くに陸上自衛隊の演習場があることを知っての上での、ミリオタ的ギャグではある。でもさすがは実戦向けの服だけあって、土いじりのような作業には最適だった。頑丈で破れる心配がないし、汚れても平気。最強の作業着だ。

既に成長している植物もある

既に何かが植えられているエリアもあった。聞くとニンニクだという。

豆畑マメヒコだからといって、豆ばっかり作っているわけではない。今回、豆以外のものも植えるという。

本業はあくまでも喫茶店なので、自家消費用の野菜、しかも安心できる製法のもの、が欲しくてハタケを運営している。だから、余剰分を市場に出そうとか、大量生産しようなんていう発想は持ってない。豆を作っているのは、喫茶店で使うからというのもあるが、「乾燥させておけば保存がきくから」という理由が大きいそうだ。

「今日がまさに一番美味しい時だ!ってことで一気に野菜を収穫して、空輸とかで東京におくったっとしても買ってくれる人、いないでしょ?トウモロコシ1,000本とか。1本2本なら買ってもいいかしら、ってなるけど、それじゃあ農家としてはやってらんない。需要と供給がマッチしないんだよ」

と井川さんは言っていた。なるほどそりゃそうだ。というわけで、マメヒコは最近、ハタケで採れた野菜を詰め合わせたボックスを宅配で取り扱うようにもなっている。中身は完全にお任せ状態であり、開けてみるまで何が入っているかはわからない。

本格的にそっちで稼ぐ気はないとしても、作った分を適切に消費しないと無駄になる。それではハタケをやる意味がないので、何をどれだけ作るか、というのはとても難しいことだ。

ハタケ

十勝でハタケをやっていたときは、農作業初心者だったこともあり、ついつい「家庭菜園」の延長線上で細かく土地を細分化し、あっちにこれを植えて、こっちにそれを植えて、と他品種栽培を同時にやっていたそうだ。しかし、農業、特に北海道の近代農業というのは効率化が大事であり、周囲のプロからは呆れられたという。

そういえば、さっき飛行機の中で読んだANAの機内誌「翼の王国」では、北海道・幌加内の蕎麦が特集されていたのだが、その記事中に出てきた農家さんは165ヘクタールもの蕎麦畑を耕していると書いてあった。規模が違いすぎる。蕎麦だけ、ひたすら13キロ四方くらいの畑が広がってるってどういう光景なんだろう。

ビニールで守られているものもある

既にビニールの覆いが2つできていた。いわゆる「トンネル栽培」というやつで、この中にはとうもろこしが植えられている。地熱を上げることで生育を早めるためだ。

ところどころビニールに穴が開いていてどきっとする。すわ、野生動物に襲われたか?と心配したが、これはあくまでもトンネル内の湿気を逃がすためのものらしい。

これからのトンネル建設予定地

これからのトンネル建設予定地。

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