11:32
チップを7匹も焼くとなるとそれなりに時間がかかる。フライだって7匹だ。時間がないとはいえ、注文したら2,3分後にすぐ卓上に届けられるのはがっかりだ。もう腹をくくったんだし、じっくり焼いて、うまい魚を食わせてくれ。
待っている間、テラスに出てみる。そこは、砂浜と、キラキラ輝く支笏湖と、山があった。絶景で、思わず全員が絶句した。
山の形がここから見てもかわっている。なだらかなところがあったかと思えば、ぴょこんと出っ張っている。火山ならでは、なのだろう。そしてカルデラ湖だからか、空がとても近い。雲が迫って見える。
このあたりは夏の間はボートに乗ったりいろいろ遊べる場所らしい。しかし、既に9月末ともなれば北海道じゃ立派な秋。そんな夏の思い出なんてどこ吹く風で、すっかり夏バージョンの営業は終わっていた。
この界隈の地名をポロピナイと呼ぶらしく、だからさっき注文した料理の名前が「ポロピナイセット」というのだな。
見てよこの支笏湖。
まるで南国の海みたいじゃないか。こんな光景が北海道の、しかも湖で見ることができるとは思わなかった。確かにこれだけ綺麗なら、ダイビングなりボート遊びなりしたくなる。
今?今はだめだ、じゃれて水面に手をつける気にすらならないくらい、風が強いし冷たい。水温がかなり低いのは間違いなさそうだ。
11:39
みんな競うように写真を撮影しまくっていた。フォトジェニックな光景だ。
人がわれわれ以外ぜんぜんいないというのも、別世界風であり絵になる。
真夏だと、この浜でバーベキューをやる人もいるようだが、今じゃとてもそんな気配がない。そもそも、千歳市街からアプローチは楽とはいえ、支笏湖温泉よりさらに山奥だし、なんやかやで1時間以上かかる距離だ。わざわざここまでやってくるとはすごい。
・・・ああそうか、北海道民にとって、「車で1時間」くらいじゃ屁とも思わないか。スケール感が違うのは地図だけではなく、住んでいる人の距離感覚、時間間隔もそうだ。
12:08
出来上がったポロピナイ定食。
これで1,000円なのだから、安いと思う。
ヒメマスと対峙。さすがに支笏湖で養殖されている淡水魚なので、大きさは小ぶりだ。巨大な鮭とは見た目がぜんぜん違う。
姿焼きの方は塩焼きになっていて、フライはタルタルソースが添えられている。
「魚のフライ=タルタルソース」という定番はここでも健在。アジフライのような青魚、鮭のような赤身の魚といろいろ幅広く使えるものなんだなタルタルソース。あらためて守備範囲の広さには感心させられる。
とはいえ、「揚げ物全般にタルタルソースがあう」とは言い切れないらしく、コロッケとかカツにタルタルはちょっと食べたことがない。
チップをかじってみて、思わず全員「おおう」と声を上げてしまった。男女問わず。
というのも、かじった部分の身が、ピンク色をしていたからだ。
「なるほど、鮭の仲間だねえ」
と今更ながら感心する。しかし、なんともすわりが悪いというか、落ち着かない。こういう串焼きにされた川魚というのは、白身以外お目にかかったことがないからだ。当然この魚も白いものだ、と思ってしまうが、かじった断面はピンク。見慣れないものだから、ソワソワしてしまうのだった。
味は、うまい。しかも、かなり。
「鮭と・・・味は近いな、さすがに」
「でも、あっさりしている」
「それだ、あっさりした鮭だ」
上品で美味い魚、ということでわれわれはニコニコだった。いわゆるサーモンのこってり感はとても美味だが、チップもいい。チップをスモークサーモン状態にしたら、絶品なんじゃあるまいか。
「わざわざ北海道に来た甲斐があったねー」
ハタケ仕事のことを一瞬だけ忘れて、舌鼓を打った。
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