法事と登山と深夜バス【伯耆大山】

20141010-016

23:04
浜松町バスターミナルを出発した我らがキャメル号は、エンジンの音高らかに首都高へと乗り入れていった。東京は夜の9時。まだ寝るには早すぎる時間だ、とばかりに首都高独特の右へ左へのウネウネと加速減速が繰り返される。「今寝たら、夜中にぱっちり目を覚ましてしまうだろォ?今の時間は夜景を楽しんでおけ」ということなんだろう。すいませんご配慮いただいちゃって。

たしかに、夜中にもなると窓のカーテンはぴったりと閉められてしまう。隙間なく閉めておかないと、照明・・・特にトンネル通過時のオレンジ色の照明がまぶしくて、睡眠を妨げられてしまう。というわけで、この後しばらくすれば車内は「護送のための車」と化す。客席と運転席の間もカーテンが閉められるので、前すら見えない。見えるのは、ひたすら寝苦しくてウンウン唸ったり寝返りを打っている人の後頭部だけ。

そうはいっても、特にやることがない。本を読もうと思っても暗いし、スマホを見ようと思っても、画面の明るさが周囲の人に迷惑をかける。ウォークマンを使って音楽なりPodcastなりを聴くくらいしかやることがない。

「寝逃げ」状態でとりあえず、寝る。

しばらくすると、バスは高速道路にあるまじきぐいーっとした横へのGをかけつつ、減速していった。あ、どこかのSAに立ち寄ったらしい。プシーッ、という音とともに停車したバス。運転手さんが「トイレ休憩を取ります」とマイクでアナウンスをした。おや、もうこの段階で?「本格的に眠りにつく前に、オシッコちゃんとしとけよ」というご配慮らしい。まあそりゃそうだ、夜中2時3時に「トイレだ!起きろ!」と言われても、困る。

短距離の夜行高速バスの場合、2時間おきくらいにSAに立ち寄ってトイレ休憩、という「寝かせないぞこの野郎」ということがある。法律により、夜行バスの運転手は定期的に運転を交替しなければならないので、2名乗車となる。その交替の都度、トイレ休憩としてお客をSAなりPAに放し飼いにしていたらしい。長距離夜行高速バスも、当然2時間おきくらいに運転手交替があるのだが、運転手が交替するだけであってお客を外に放牧することはない。いちいちそれをやっていたら時間がかかるし、面倒だからだ。

時計を見ると、22:55だった。まだ2時間程度か・・・。まあ、そんなもんだろう、今更「キツいなー」とか、「あと8時間かよ!」みたいなリアクションはしない。

バスから外に出てみたら、新東名のNEOPASA駿河湾沼津だった。あれっ、いつの間にか沼津まで到達していたのか。案外前に進んだんだな、という感覚を持つ。でもな、ここからが長いんだよ、何しろ、偉大なる静岡様なんだから。

静岡の長さ、というのは旅をする人ならイヤと言うほど実感しているだろう。太平洋に沿って細長いため、新幹線を利用していても「えっ、まだ静岡なの?いい加減にしてよ」とウンザリさせられる。新幹線でさえそうなのだから、青春18きっぷを使った鈍行の移動なんて修行に近い感覚だし、車にしても苦行だ。

そんな静岡さんだが、新幹線ののぞみ号が完璧に素通りしてしまっていることにいたくご立腹だ。ずっと前から「のぞみを停車させてくれ」と運動をして、その都度JR東海に無視されている。静岡空港ができるよ!という時には、「空港直下に新幹線の地下駅を作ろう!駅からアプローチできる空港って斬新じゃね?」と提案していたが、やっぱりJR東海に失笑され無視された。そんなわけで、リニアを作るという話になったとき、「静岡県をリニアが通る際は通行税を取る」といったすごい提案もあったようだが、やっぱりスルーされて今に至る。

20141010-017

23:05
NEOPASA駿河湾沼津の駐車場は富士の裾野にあるため、ゆるやかな傾斜の高台に位置している。眼下には町の明かりが見えて、きれいだ。

ところで、「NEOPASA駿河湾沼津」ってなんというややこしい名前なんだ。新東名が開通して営業開始となった際、この手の名前がゴロゴロしていて頭がクラクラしたものだが、未だにどうも座りが悪い。SAの名前もキラキラネーム、ということなんだろうか。いずれ、どう読めばよいのかわからない、ふりがな必須のSA名なんてのが出現するかもしれない。

SAというのは、PAの機能を内包している場所だと僕は思っているのだが、PASAと並べることに何の意味があるのだろう?しかも、「NEO」だし。さらには、駿河湾沼津、って地名が長いし。交通標識を高速道路上につくるとき、文字数が多くて表記に随分苦労したんじゃなかろうか。

あとで気になって、NEOPASAのコンセプトをNEXCO中日本のサイトで調べてみた。すると、こう描いてあった。

先進的で新しいコンセプトを基に、多様なニーズのお客さまに快適にご利用いただけるよう施設規模、業態・施設配置、園地計画に至るまで新たな設計思想で一から作り上げた商業施設であり、新しい大動脈である新東名とともに「新しさ」を表現するための「NEO」と、パーキングエリアの「PA」、サービスエリアの「SA」を組み合わせて ネーミングしました。

なんかコンセプト先走りって感じがする。従来のPA/SAとは違うんだよ、という差別化を明示したかったというのはわかるけど、利用者にとっては意味不明だ。日本人だけでなく外国人観光客でもわかるような、単純明快なネーミングってのが大事だと思うんだがなwebのUIがどんどん「ぱっと見て、機能やメニューがわかるように」追求されていっているのに対し、ものすごく閉鎖的な印象を受ける。

ちなみにNEXCO中日本は、このほかにも「EXPASA(エクスパーサ)」ブランドでSAを展開しているのでますますややこしい。いずれ、「ギガPASA」とか「グランPASA」みたいにどんどん名前がインフレしていくんじゃなかろうか?・・・まあ、「グラン」が付くとJRっぽくなるので、NEXCOは絶対に選ばないネーミングだとは思うけど。

2014年10月11日(土) 2日目

20141010-018

04:35
あくまでもSA立ち寄りはトイレ休憩が目的だ。売店で軽食を買って食べたりするような余裕はない。今回は2回の立ち寄りがあったが、それぞれ10分だった。

2回目は、中国自動車道加西SAに立ち寄り。4時25分に休憩となった。車内前方のディスプレイに、出発時刻が表示されている。このときは4時35分。まだ外は暗い。

加西SAは、ざっくり言うと姫路から北に向かった場所にある。目的地の米子までは、まだまだもうちょっと距離がある。

20141010-019

06:49
落合JCTから米子道に入り、日本海を目指していけば米子に到着だ。朝日の中、6時49分米子駅到着。

米子は、昔から交通の要衝として栄えており、鳥取県の県庁所在地である鳥取市よりも人口が多く、JR、飛行機ともに便利の良い町だ。何よりもJR伯備線が中国山地を貫いており、岡山に直接アプローチできるというのが大きい。米子市のことを「山陰の大阪」と呼ぶこともあるそうだが、なんだかよくわからないキャッチコピーではある。恐らく、「大阪=商業の町」というイメージから、米子も山陰の商業の町だと言いたいのだと思う。「○○の小京都」という言い方は全国各地にあるけど、「○○の大阪」という言い方はあまり見たことがないのでちょっとびっくりした。

20141010-020

06:50
駅前のバス乗り場に、キャメル号到着。10時間どうもありがとう。戦友、とか相棒、という感覚は最後まで湧かなかったけど、道中の無事故は感謝。

20141010-021

06:51
米子駅に到着したことだし、どこかで朝ご飯でも食べて一息・・・とはいかない。まず、登山口である大山寺に行くバスの乗り場と時刻を確認しておかないと。

調べてみたら、駅前の4番のりばがそうらしい。わかりやすく、大山の写真が天井からつり下がっている。

20141010-022

06:52
大山登山の難しいところは、このバスにある。便数が多くないからだ。もちろん、どの山だってバス便が充実しているところなんてのはないので、公共交通機関を使った登山の場合、「薄いダイヤのバス便」に頭を悩まされることになる。マイカーがあれば、時間を気にせずに登山口に直接乗り込むことができるのでその点楽だ。

米子駅から大山寺に向かうバスは、1日5便。今日の第1便は7:20発なので、あと30分後には出発するということになる。朝ご飯を食べている暇すらないような状況だが、接続がバッチリで大変に都合がよろしい。これがバスとか寝台特急サンライズ出雲だったらタイミングがあわないんだよな。

20141010-023

大山寺行きのバスにはもう一つ系統があって、これは「大山る~ぷバス」という。大山山麓あたりのいろいろな施設をぐるぐる回る観光路線になっている。それはそれで結構なのだけど、行き先がややこしいし、ルートもややこしい。事前にwebサイトを見てはいたのだが、さっぱり理解できなかった。大山山麓をループしてみたり、そのループから離脱してみたり、乗り換えたらループから脱出できるよ、というのがあったり。「上り線」「下り線」という概念がぐちゃぐちゃで、とにかくダイヤが見にくい。

たとえばこの写真の時刻表を見ると、米子駅から大山寺に行くバスは8便ある。なんだ多いじゃないか、と思うだろう。しかし、大山寺から米子駅に直接向かうことができるバスは、3便しかない。残りのバスはループに吸い込まれてしまうのだろう。上下線で非対称。

20141010-024

というわけで、僕は全くこの路線を信用しなかった。わけわかんねぇよ、と。下山した時に運が良ければ乗ればいいや、くらいの感じだ。大回りしてループして、乗り換えて、ようやく米子駅に行けるなんていうのは面倒くさい。

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