日本の中のブラジル【群馬ブラジリアンタウン】

走ってみる

県道に出てみる。群馬県は赤城山やその奥にある谷川連峰などから冬になると空っ風が吹くという。それも納得だ、これだけ広々として平らな土地だったら、風が遮るものがない。今日は雨が降っていることもあり、とても寒い。

とりあえず、この地に大量のブラジル人が訪れるきっかけとなった、三洋電機や富士重工の工場を見に行くことにした。工場の中に入って見学をさせてもらえるわけはないので、ぐるっと外周を見るだけのことだ。見たから何か新しい発見があるわけではないのだけど、まあ、一応。

パナソニックの工場入口

本当に「一応」だった。さすが町工場とは訳が違う。やたらと巨大な敷地に工場はあり、そこには人の気配も少なかった。そりゃそうだ、雨の中作業をしている人なんていない。屋内の生産ラインにもっぱら人はいるのであり、外側からその様子をうかがうことはできなかった。

「うーん、やっぱりいかにもブラジル感、ってのはなかったな」

当たり前のことを当たり前に確認して、おしまい。ぐるっと工場を一周してみたが、ポルトガル語の横断幕があることもないし、ブラジル国旗が掲揚されていることもなかった。工場の門を出たら、そのあたり一帯が飲み屋街・・・なんてこともない。多分みんな送迎バスかマイカーかで通勤しているのだろう。徒歩で通勤だなんて、何を寝ぼけた事を考えているんだ?ここをどこだと思ってる?

GoogleMapなどではこの工場を「三洋電機(株)東京製作所」と記述している。「えー?三洋ってパナソニックに吸収合併されてもう存在しないでしょ?情報古いなあ」と思っていたし、実際にこの工場に行ってみると大きな「Panasonic」の看板が出ていた。ほら見たことか。

「やっぱり今はパナソニックなんだよ、だって三洋はつぶれちゃったんだもん」

なんて車中では言っていたけど、とんでもない勘違い。ちょっと待て、まだ三洋電機(株)は現存している(2015年時点)。パナソニックの100%子会社だし、2015年4月には社員がパナソニックに転籍してしまったけど、法人格はまだ残っている。だから、GoogleMapに記載されている情報は正解。

なお、2016年1月時点で三洋電機のサイトを見に行くとなかなかに味わい深い。まず、URLが「panasonic.co.jp/sanyo」になっているのが「うーむやっぱり」と思うし、サイト内の「家庭用商品」ページに行ってみると、たくさんの商品ジャンルが掲載されているけれどその全てが「生産終了品」だった。三洋電機としてはもう現存する商品はなく、あとは販売済み自社製品のアフターサービスだけやっているということなのだろう。

お店

「いいかい、何かブラジルらしいものが通りすがりにあったら、何でもいいから写真を撮っておいて?」

こっちはハンドルを握っている立場なので、気軽に撮影なんてできないし、そこまで周囲を索敵するわけにはいかない。

「ブラジルらしいもの、って何ですか?」

やれやれ、そんなことから教えないといけないのか。困ったもんだ。・・・と思ったが、確かに「ブラジルらしいもの」って何だよ。とりあえず、「日本語ではない文字が書かれている看板」は「ブラジルらしいもの」なんだと思う。でも、真のブラジルというのは、道端に転がっていたり、ふと見上げた空にあるのかもしれない。あんまりブラジルに馴染みがない分、油断がならない。

「ほらっ!左前方!何かブラジルっぽい看板が!それっ!」

とにかく早い段階で撮影のお願いをしないと間に合わない。なので、何枚か撮影してもらったが、「撮影するだけ無駄な被写体」なものを「撮れッ!今だ!」と指示しちゃったものもあったし、通り過ぎる直前に慌てたのでカメラが間に合わず、ブレブレになってしまったものもあった。

町のいたるところにポルトガル語の看板があったり、ブラジル人向けのお店があるかと思ったらそれは全く違う。ほんのところどころ、「あっ!?」と気づく程度だ。見つけたらお得感を感じてしまう、そんなレベルで数は多くない。僕らはほとんど表通りしか走っていないので、そこで見た範疇だが。

裏道に入れば、他にもいろいろブラジルっぽいあれやこれやがあるのだろうか?それとも、10パーセント程度のブラジル人比率では、町並みにはあまり影響を与えないのだろうか?

で、撮影してもらった写真がこんな感じ。なにが書いてあるのか、さっぱりわからない。家に帰って写真を見てみると、左端のお店は子供向けの塾かなにかのようだ。しかし面白いのは、それだけでなくサンバ教室もやっているということ。サンバ用の服や靴も売っているようだ。やっぱりブラジル人はサンバが好きなのだな、こればっかりはステレオタイプじゃないんだなと感心する。

ワンボックスカー

「すごい!前方をポルトガル語のワンボックスカーが走ってる!」

と言うことで激写された車。

どうやらこれは、自動車学校の送迎バスらしい。若葉マークが描かれている。ブラジル人の場合、まずは日本語を理解するところからはじめないといけないので大変だ。道路交通法や実技以前だ。

いや、ひょっとしたらあくまでもこの教習所では「ブラジルの運転免許を取ることが出来る」のかもしれない。で、国際免許を取得して、日本でも運転できるようにする・・・いやー、さすがにそれは現実的じゃないな。免許を受け取るためにブラジルに帰国しないといけないし、以降も国際免許の更新のたびにブラジル戻りだ。さすがに日本じゃ手続きはできないだろう。面倒だしお金がかかってかなわん。

パウロレストラン

富士重工の工場にも行ってみたが、ここも特に何か楽しいものがあるわけではない。かする程度に近づいて、すぐに折り返した。どうやら、富士重工があるあたりはもうブラジルタウンではないようだ。多分、だけど。何しろ情報が少ないし、そもそもブラジル人達が肩を寄せ合って生活しているわけではない。

ベイシア、カインズホームといった北関東ならではの大型店を横目に、住宅地をうろうろする。お昼ご飯の場所を探しているからだ。

ブラジリアンプラザ亡き後、飯を食う場所としては大通り沿いの「ブラジル・レストラン」が有名。シュラスコも食べられるらしい。黄色い壁のお店は遠くからも目立つ。

しかしあまのじゃくな我々が選んだのは、住宅地の中にひっそりとある、「パウロ・レストラン」だった。こっちはランチのビュッフェが990円で食べられる。

店内

店内には客がおらず、営業をやっているのか?と心配になったけど店員さんに声をかけたらOKだという。広い客席、どこに座ろうかちょっとオドオドしながら自分の席を決める。なにしろビュッフェだ、料理が並ぶカウンターから遠すぎず近すぎないポジショニングが大事。さーてさーて盛り上がってまいりました。

まるで今日がお誕生日会でもやるかのように、天井からはブラジル国旗がたくさんぶら下がっていた。ご機嫌なお店らしい。

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