11:38
吾妻線大前行き到着。いわゆる「みかん電車」と言われる、オレンジと緑のツートンカラーだ。久しぶりに見た。
なぜ昔はこのカラーリングが一般的だったのだろう?食欲が湧いてくるじゃねぇかこの野郎。それに比べて最近のステンレスだかアルミだかの銀色ボディだと、どうも食欲が減少する。銀色+青いラインの京浜東北線なんて、ダイエット向け路線と言っても過言ではあるまい。
地域活性化!食べて応援!なんて企画を地方でやるなら、是非電車の色も考慮していただきたい。暖色系の色の車両だと、それだけで飲食業の売り上げが少しだけ上がるかもしれない。
「とはいっても、今晩の宿メシは弁当形式なんだよなあ」とちょっと残念に思いつつ電車に乗り込む。山海の珍味に舌鼓を打ち、大いに飲み語る、という場ではない。今回の僕は、立場的に「眉間に皺を寄せ、笑顔なんて一切見せずに無言でメシを喰い食堂を立ち去る」ということをしなければならない。「小腹が空いたから」といって宿の外に出てラーメンとか食べちゃいかんぞ?
乗った電車には、大きなかごが載せられていた。なにやら白い包みの大きな荷物も、座席に鎮座してらっしゃる。まだ電車を使った輸送ってのは行われているのだな。トラック輸送よりもはるかに安いのだろう。貨物列車を仕立てて走るまでもない荷物なら、こうやって客席の一部を使って輸送したほうがいい。
12:02
赤城山が見えるのどかな上毛の光景を車窓に見つつ、電車は中之条を目指す。
首都圏を走る軽やかな電車と違うゴトゴト音が心地よい。旅情をそそる。あっいかん、「療養」の旅なのにうっかり「旅情」という言葉を使ってしまった。
おそらく国鉄時代に製造されたのであろうローカル線の車両の良いところは、車掌さんのアナウンス声が独特ということだ。こもったような音が、むしろ今となっては温かく感じる。誰がしゃべっても同じような声に聞こえてしまうが、あれは「アナウンスが聞き取りやすいようにわざとマイクやスピーカーがそういうチューニングにされている」のだろうか?
そんなことを考えつつ、電車は中之条へ。
12:35
途中、車掌さんが車内を巡り検札があった。この路線、検札をやるのか!と驚いた。無人駅が途中にあったかもしれないが、「きっぷをお持ちでない方はこちらで精算します」と車掌さんが車両内を通過していくだけだと思っていたからだ。いちいち一人ひとりチェックするのか!
こちらはSuicaで乗車しているので、どうやって検札するのだろう?となんだか居心地が悪くなりソワソワする。待て落ち着け、ここで挙動不審なことをやったら、車掌さんに疑われるぞ。
「おまわりさんの前を通りすぎるときは、悪いことをしていなくてもぎくしゃくした動きになる」という体験は誰しもが(?)持っていると思うが、それと似たような状況に。やべーやべー、Suica出さないで間違ってANAマイレージカードを出しちゃいそうだったよ。
Suicaを見た車掌さん、ちょっと困った顔をして「どちらまで?」と聞いてきた。「中之条までです」と応えたら、1秒ほど間があって、「中之条、ですか・・・ではSuicaは使えますね。では改札を出るときにタッチをお願いします」と言われた。検札は省略。さすがにSuicaリーダーみたいなものを車掌さんは持ち歩いていなかったようだ。
そこではたと気が付いた。あー、吾妻線って全駅Suica対応しているわけじゃないのかと。全く事前に調べていなかった。危なく、駅で途方に暮れるところだった。今回は運よく中之条駅にはSuica改札があるようなので助かったけど。
というわけで中之条駅に到着。いつもこの界隈にやってくる時は車なので、電車で訪れたのは初めてだ。ものめずらしげにキョロキョロしてしまう。
12:36
中之条駅の改札。自動改札機は備わっておらず、簡易的なSuicaリーダーがあるだけだった。まだこの界隈は紙の乗車券が一般的なエリアらしい。そりゃそうか。
首都圏に住んでいたら自動改札が当たり前の生活になってしまっているけど、あれって狂気の沙汰だよな、タッチしてすぐに料金を計算して精算する。しかもJR私鉄入り混じって迷路のような路線と運賃なのに、即答だぞ?事前に計算を済ませておいて、待ち構えているとしたって早すぎる。
いずれ、Googleも自動改札ビジネスをはじめるかもしれん。鉄道会社各社に「無料で自動改札機を提供するので使ってくれ」と。で、Google電子マネーによって引き落とされ、その行動履歴はどんどんGoogleが蓄積していって、ビッグデータがいろいろ活用されていくという展開。マジでありえそうで笑えない。
おっと。駅構内に貼ってあったポスター。吾妻線では3つの駅でのみSuicaが使えるらしい。あぶねー。しかも、使えるようになったのはつい3ヶ月前(2014年10月)じゃないか。ますますあぶねー。
道理で車掌さんも、一瞬間を置いて「あれっ、Suicaだ!」と身構えたわけだ。これまで大勢の旅行客を、「すいませんねぇ、吾妻線はSuica、使えないんですよー」と撃墜してきたのだろうから。
そうか、四万温泉は「この冬おすすめ」なのか。そりゃよかった、渡りに船だ。お互い気が合うな。
では「次の冬おすすめ」はどこなんだろう?来年はそちらに鞍替えかな?
「ようこそ中之条町へ!」という案内看板が旅人をお出迎え。いやまた違った、療養しようとしている病人をお出迎え。
バス乗り場は3つあるらしく、四万温泉行きは1番のりば。
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