潜入、湯治宿【大沢温泉】

商店街

14:25
大沢温泉方面に向かうバスは、15時に花巻駅を出発する。まだ時間に余裕があるので、「予備として」記憶にとどめておいたお店にも行ってみることにした。

こうやって「もし余裕があれば」「念のために」とかいってあれこれ余計な情報を仕入れておくので、どたばたするんだ。「やることがなくてポカンとする」くらいでちょうどいいのに。

西方面に向けて歩いていく。ちょうど花巻駅東口を出たバスが大沢温泉に向かっていく路線・・・のはずだ。バス路線というのはよそものには理解不能なルートをたどるので、大通りだからといって確実にそこを通るとは限らない。なので、あまり自信はないのだが・・・。

なぜこうやって半身で身構えているのかというと、「あわよくばもう一軒突撃」というシナリオが頭の中にあるのと、その場合「始発の花巻駅から乗車するのではなく、最寄のバス停を使う」ということを考えていたからだ。我ながら大変にけしからん。

商店街を歩くが、いわゆる都会のそれとは違う。ドラッグストアがあったり、メガネ&コンタクト屋があったり、携帯電話屋があったり・・・ではない。もっと苦みばしった渋みがそこにはある。

胸章・建前セット・御結納品・国旗

なんて看板が出ているお店がある。店頭には「お彼岸」という字も見えることから、冠婚葬祭全般にかかわる品を取り揃えているようだ。

それにしてもこういうのが商売になるのか!と今更ながら驚く。いや、実際には商売になっていないと思う。いまどき、胸章なんて買う人がどれだけいる?一つ二つ売れたところで、大した儲けにはならない。

逆に言えば、昔はこういう商売が成り立っていたということだ。そういえば、昔は実家の近くに「結納用品屋」があったな。結納の品を売るという単体で商いが出来たというのは驚きだ。一体どれだけ世間の人は結納しまくっていたんだ?と。

ところで「建前セット」って何だ?「本音と建前」という言葉ではよく使うけど、いざその意味を問われると困るな。後で「建前セット」について調べてみたら、地鎮祭のときにつかうお守りのようなもの?みたいな感じだが、真偽のほどはわからなかった。

パン屋

14:33
てくてく歩いて行った先には、「石窯パン工房ミッシェル」というお店がある。ここは、花巻ではとても人気があるベーカリーだといううわさを聞いていたからだ。

いわゆる「焼きたてパン」が今すぐ食べたい!というわけではない。しかし、花巻グルメを調べた際に目に留まった数少ないお店の一つだったので、「とりあえず実物を見てみなくちゃ」と変なやる気を出してしまった。

東京みたいな大都会だと、飲食店は溺れて埋もれるほど存在する。食べログなんかで調べた日にゃ、「おや?」とか「ほう!」という程度の感想しか与えてくれないお店は、完全にスルーされてしまう。検索で引っかかる件数が膨大だからだ。しかし花巻クラスの中規模都市だと、お店の絶対数が少ない分「おや?」というお店が存在するだけでもかなりいとおしい気持ちになるものだ。この「ミッシェル」もしかり。

もともと惣菜パンやハードパンは大好きだし、今回はなにしろ湯治宿に宿泊だ。よさげなパンがあったら、食事にするも良しおやつにするも良し。お店に訪れて損はあるまい。

・・・が、損したー。

お店、定休日だったらしく営業していなかった。やられた!

ここまで結構歩いて、まだ見ぬパンたちに思いを馳せ唾液腺をパンパンに膨らませていただけに、駐車場で立ち尽くしてしまった。ああなんだか腹が減ってきた気がする。ついさっき、ソフトクリームとナポリタンとカツを食べたばかりなのに。

「悔しいので隣のお店で代わりの品を買って憂さ晴らしします」

とはいかない。そんなに都合よく飲食店が並んでいるような場所ではない。おとなしく、この場を立ち去ることにした。

たぶんバスの路線がすぐ近くのはずだ。その気になれば、明日とか明後日にパンを買いにいくことができるだろう。パンが食べたくなったら、そうしよう。たぶんそんな面倒なことはやらないと思うけど。

入居者募集

14:40
花巻駅からバスが出発するのは15時。あまり時間がないので、いっそのこと「ミッシェル」近辺のバス停で待ち伏せしていようかとも考えた。しかし、ぱっと周囲を見渡した限り、バス停のありかがわからない。「歩いているうちに次のバス停に出くわすだろう」なんていう甘い見込みだと遭難しかねないので、面倒でも花巻駅に戻ることにした。

花巻駅西口方面に向けて歩いて行く。

道中、「入居者募集」の立て看板を発見した。ほう、3DKで家賃が33,000円か。安いな。しかし、このあたりで働くとなると時給も安いことから、東京感覚で「安い」なんて安易には言えないと思う。普段は東京に住んで仕事に励み、週末は別荘として花巻に・・・というのは、不可能ではないけど。ただし、家賃よりも往復の交通費の方が高くつく。

生活の党

14:42
政治家のポスターが貼ってあるな、と思ったら小沢一郎のものだった。そうか、岩手県といえば小沢王国だからな。12月に那須湯本に行ったときは渡辺喜美のポスターをあちこちで見かけたけど、なにかとこの温泉療養旅は選挙とゆかりが深い。

じゃあ先月(2015年1月)行った四万温泉はどうなんだい?というと、ポスターこそ見かけなかったけどそのあたりは小渕優子の地盤だ。有力政治家行脚の旅でもやっているかのようだ。

ちなみにこの小沢一郎氏のポスターだけど、「生活の党」と書かれていたのでちょっと古い。生活の党は2014年12月に「生活の党と山本太郎となかまたち」という愉快な名前に変更されたはずだ。さすがにこの冗談みたいな党名をポスターにするのははばかられたのか、相変わらず生活の党時代のものがそのまま使われている。「比例区は生活の党」とも書かれたままだ。もっとも、「生活の党と山本太郎となかまたち」の略称は「生活の党」で認められているので、投票用紙に「生活の党」と書くのは有効票だ。

立派な建物

14:43
何か立派な木造建築が見えるので何かと思ったら、旧花巻町役場なんだそうで。昭和4年の建物をこの地に移築している。もちろん今では役場の機能はない。

花巻ラーメン

14:47
なぜ栄えていない方面である花巻駅の西側を歩いているのかというと、「花巻ラーメンバカボンド」というお店が気になったからだ。結構ガッツリしたラーメンを出すお店らしい。

東京の自宅で企画立案した時点では、「ガッツリ!いいじゃないか。焼きおにぎりとか食べたあとでも全然行けるっちゅーねん」と鼻息荒かったのだが、いざお店の前までやってきたらがぜん食欲が失せていた。食欲が失せたんじゃない、あれだけ食べてりゃ、そりゃこれ以上食べようと思わないのが人の常だ。

「あー、でもここで食べなかったら、もう次食べる機会なんてないだろうなあ」

と遠巻きにお店を眺めていたら、店内の店員さんと目が合ってしまった。時間が時間だけに、営業中とはいえ店内はガラガラ。なので、店の外で物欲しげにしている僕の姿が目にとまったらしい。

「どうするの?店に入るの?」

という顔を一瞬されたので、慌てて

「いや!単に目が合っただけですから!」

と意味もなくその場を足早で立ち去ってしまった。やーいチキン野郎。

もしここでお店の人が外に出てきて、

「へいらっしゃい!どうぞ中の温かい席へ!」

なんて言われたら、気が弱い僕はそのままずるずるっと店の中に入り、で、ついでに「お、大盛りで」と余計な注文をしちゃいそうな気がする。

やらなくてセーフ。でもやらなかった事に一抹の悔しさも覚える。

待て待て待て、だーかーらー、今日からは療養なんだってば。そういえばさっきからやたらとお店とか用意周到に調べてるじゃねぇかこの野郎。そういう観光とか一切無しで、ひたすら風呂に入りまくるのが趣旨じゃなかったのかよ。いかんな、随分たるんでる。もっと気を引き締めて、温泉でだらけないと。

「気を引き締めて、だらける」という相反したことが今の僕にとっては必要なのだった。

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