14:19
駅を出ると、ちょうど目の前に送迎用のワンボックスカーが停まっていた。
我々のほかにもう一組のお客さんが乗るというので、そのお客さんがやってくるのを待つ。
明日の送迎も宿がやってくれればありがたいのだが、その場合は朝10時に宿出発となる。「のっとれ!」の受付に間に合わないので、これは利用できなかった。そのため、地元のタクシー会社に連絡し、明日の朝9時過ぎに宿まで迎えに来てもらう段取りをとっておいた。
14:36
「ほら!見てごらん!松之山温泉の看板があそこにあるよ!」
なんてはしゃぐおかでんだが、車中はどんより。怪しい空気を察知して振り返ると、3人ともまた居眠りをしていた。ああそうだった、お酒が入っているんだもんな、そりゃ眠たくなるよな。
見ろ、これが昼酒の現実だ!と感心した。
14:43
まつだい駅から車で15分だか20分だかで松之山温泉に到着。今晩お世話になるのは、野本旅館という宿だった。
宿の選定は、さかのぼること2ヶ月ほど前。たっぴぃさんとおやびんがおかでん宅にやってきて、ホットプレートで焼肉大会を開きながらあーでもないこーでもないと話し合って決めた。おやびんのリクエストとして、
「トイレが室内にあったほうがいい」
「ウォッシュレットがいい」
「食事はいかにも宿っぽいのがいい」
「建物が古くてお化けがでそうなのはイヤ」
というものがあった。それで1万円前後の宿を、ということで探した結果ぴったりだったのがこの宿。ちょうど良かった。
この世の中、選択肢というのは本当にいろいろあるものだ。だから、物分りがよく「なんでもいいです」と間口を広げていると、いつまでたっても物事が決まらない。むしろ「あれは駄目、これも駄目」と言っているほうが決定まで早いし、楽。・・・そんなことを実感させられる、チョイスとなった。
宿のフロント。
玄関先に長靴がずらりと並んでいるのが、いかにも雪国だ。温泉街だし、外に出るときはカランコロンと下駄を履いて・・・というわけにはいかない。それをやると、滑って転んでしまう。
広々としたロビー。
いやあくつろげるなあ。
待て、ここでくつろいでいないで部屋へ行け。
14:44
よっぽど嬉しかったのか、宿の廊下の写真も撮影している。
「こんな廊下がある宿に泊まったんですよ!」
と記録として残しても、それが一体どれほどの意味を後世に残すのかさっぱりわからない。でも「撮りたい」というパッションがみなぎっていたんだろう、きっと。
部屋の名前は「龍胆」と書いてあった。なんて読むんだ、これ。
龍のキモ?「ドラゴンレバー」・・・いや、さすがに宿の部屋でそれはあんまりだ。せめて「モツドラゴン」のほうが。そういう問題でもないか。
この漢字で、「りんどう」と読むそうだ。花の見た目と全然違う、すごい名前。なるほど、それだったらもし僕に子供ができたら、「龍胆(りんどう)」と名前をつけようか?あだ名は「リンちゃん」とかになるんだろうな、たぶん。
でも、おそらく「リンちゃん」なんて呼んでくれる人はおらず、ほとんどの人は「ドラゴン」と呼ぶんだろう。藤波辰巳みたいだ。
後で知ったが、リンドウの花言葉は「勝利」なんだそうだ。なんてこったい!「のっとれ!」に向けてこんなに縁起の良い部屋名は他にないぞ!
冷蔵庫の中をのぞいてみたら、ビールとかお酒が入っていた。いまどきこの手の宿って減少傾向だと思うので、久しぶりに見た。
昔は、部屋備え付けの冷蔵庫といえばお酒やジュースがずらりと中に入っていて、私物を格納する隙間なんてないのが当然だったものだ。多くの場合、瓶や缶が特注の冷蔵庫に突き刺さっていて、飲むために瓶を引っこ抜くと「まいどありー」と帳場にそのデータが転送されるしくみになっていた。今考えると実はハイテクかもしれん。
ただ、この手の冷蔵庫は朝8時くらいになると帳場からの遠隔操作で扉がロックされてしまう仕組みになっていた。お会計を締めるためだ。で、その際よく起きる悲劇が、私物を冷蔵庫に入れていたのに、それが入ったままロックされてしまい、取り出せなくなるという。「すいませんいったん鍵を開けてください」とお願いして、解除してもらう必要があった。
そんな冷蔵庫があった昔は、「外から飲食物を持ち込むなんてもってのほか」と厳しい宿も多く、鍵を開けてもらう際にはおっかなびっくりだったものだ。
おやびんのリクエストどおり、温水洗浄機付き便座が部屋に備え付けられていた。
寒いところで過ごすので、脱腸にならないように気をつけないと。たぶん大丈夫だけど。
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