11:11
乗船できてもまだ先には進めない。ひたすらチンタラと前へ進む。狭い船に人が乗りすぎて将棋倒しになったらまずいので、ハッチのところで入場制限をかけているからだ。
その間、湾の反対側を見てみたら仰天した。おい、あれはなんだ?
ぱっと見、岸壁間際に建物が建っているのだと思っていた。しかしよく見ると、その箱状のものは海の上に浮いていた。ありゃ船だぞオイ!
あんな船、あっていいものなのか?ビルじゃねぇか。
よく見ると、ちゃんと「U.S.NAVY YR95」とナンバリングされている。そしてそのYR95に横付けされる形で、一回り小さなYR96の姿も確認できた。なんなのあの親子。
どうも、原子力空母の修理用はしけ船として利用されていたものらしいが、今は岸にくっついてホテルの役割を果たしているらしい。同時に、修理工房としての役割は今でもあるという。さすがにあんな船が外洋に出たら、ひっくり返るだろうし敵とは対峙できそうにない。
後部甲板のヘリコプターハッチ。この船には2つハッチがある。片方のハッチが開いていて、そこから船の内部に入っていくルートになっていた。
さあ、ようやく!・・・というところで、参加者の一人であるN軍曹が「ごめん、先行ってて。船降りるわ」と言い残し戦線離脱。完全に猛暑にやられてしまったらしい。
「ええ?あともう少しで日陰があるのに!」とびっくりしたが、それくらい限界ギリギリだったらしい。今回の基地見学を誰よりも楽しみにしていたN軍曹がまさかの離脱になるとは、意外だった。サバゲーでも米軍の格好を好んでしていたミリタリー好きだったのに。
11:12
離脱した軍曹のことは気になるが、残された我々は先へ進むしかない。軍曹は「俺の屍を超えていけ」とは言わず、屍になりつつようやくハッチの中に入ることができた。船の中なので、かなり狭い。この中にヘリコプターを格納する際は、プロペラを折りたたむことになる。
ガンダム世代の僕なので、ホワイトベースでガンダムが格納されているエリアを想像してしまう。そんなSF的雰囲気がここにはある。
女性の兵隊さんが控えていて、時折解説をしてくれる。広報官かと思ったが、この船に乗船しているれっきとしたクルーらしい。ネイティブの日本語を喋っているので、日本で採用した人なのだろうか?
格納庫の壁面には、整備用の荷物が入ったトランク棚がある。波のせいで移動してしまわないように、ベルトで縛り付けてあった。さすが船だ。
格納庫の真ん中に、「NO STEP」と書かれた赤い布がかぶせられた場所があった。こいつがヘリコプターを甲板に出し入れする機械らしい。その上にはヘリの解説ボードが置いてあった。「MH-60R シーホーク」が本来はここにいるとのこと。
行列をなし、一人ずつ順に狭くて急な階段を登る。
船の側面に出た。
見学ルートが設定されている場所は、どこでも写真撮影に制限はなかった。禁止にしたって撮られるもんは撮られちゃうだろうから、ヤバいものは全く目に触れない場所にあるのだろう。お陰で堂々と撮影ができる。
たとえばこんなのも。MK46魚雷用MK32短魚雷発射管。
発射筒の中まで撮影できちゃう。
エヴァンゲリオンのアンビリカブルケーブルみたいな、電源ケーブル(と思われるもの)。
あ、やっぱり電源だった。
KIKEN KOUDENATSU TATIIRIKINSHI
(危険 高電圧 立ち入り禁止)だって。ローマ字で書いてる、ということは、アメリカ人でも発音できるようにするための配慮だろうか?「キケン!」と叫べば日本人でも気づく。
青いシートがかぶせてあるのは、補給艦がやってきたときに食料などを受け渡しするためのワイヤー支柱。
艦内を歩く。
結構ごちゃごちゃしている。通路脇に鉄カブトが積上げてあったりする。
前部甲板に出てきた。
機関銃の銃座がお出迎え。隙に乗じて接近してきた海賊船などをこれで撃退するのだろう。
とはいえ、これは防御が弱い。銃座の前と足元に防弾用のプレートがあるが、本当にこれで海賊と対決できるかというとちょっと不安。プレートには「STRIKE FACE」と書いてあった。防弾プレート、という意味だ。
「やっぱり隙間があるように思うんだが」
銃座に立ってみて、そう思う。そりゃそうだ、相手に狙いを定めるためにも、視界が確保されていないといけない。視界が開けている、ということはそこを狙われたら死ぬってことだ。
「おいお前、甲板の機銃でバババーっと掃射してこい」
と上官から命令されても、びびって「イエッサー」とはいいづらい。・・・ああ、だからこそ、この船のキャッチコピーは「常に勇敢であれ」なのか。
イージスシステムがある艦橋を見上げる。
フェーズドアレイレーダーがこっちを見ている。やばい!・・・やばくないけど。
11:32
MK-41垂直発射システム。
MK45 5インチ砲。
あ、正面から見るとちゃんと砲頭にはカバーがかぶせてあるんだな。誤射を防ぐため・・・じゃないよな、この程度だと。風雨が入り込むのを防ぐためだろうか?それとも、「私は今、貴方と戦うつもりはありません」という友好の証だろうか?
また艦内を通り抜ける。
まるでホテルの車寄せみたいに、来客を出迎える水兵さん。誇らしげな星条旗と、艦のマットがお出迎え。
11:38
下船したら、そこにはマスティングッズを売る売店があった。いちいちこういうのが商売になるのだから、ミリタリーというのは面白い。
結構厚手のパーカーが売られているけど、誰が買うんだこれ。こんなに暑い時期なのに。
マスティングッズのメニュー。13種類という豊富な品揃えでマニアな貴方をもきっとご満足させます。
船ごとにこういうのがあるのだから、海軍、果ては米軍全体でかなりのグッズが存在しているのだろう。そういうグッズ製造を一手に引き受ける代理店なんてものがちゃんと軍隊内にはあるのだろうな。一部署として。
ちなみに安いものだと絵葉書で300円、高いものだとシャツで4,000円。値段を変えるのが面倒くさいからだろう、このお店では1ドル=100円で計算されていた。売られているものは、陳腐化しないようなものばかり。売れ残ってもまた次の機会に売ればいいや、というわけだ。
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