09:44
弁慶でさえ七回躊躇した岩を、エイヤエイヤと一気に通過する。なんだ、オレTUEEEEEと思いながら。この七戻りは、「聖」と「俗」を分ける門として位置づけられているという。神社でいう鳥居のようなものなのだろう。ということは、もうすでにこっちは聖なるエリアというわけだ。
ああ、すがすがしい気持ちでいっぱいだよ。
うそつけ。
弁慶七戻りを振り返ったところ。
ああ!
なるほど、確かにこれは・・・。ちょうど先ほどくぐったところの天井部分は、ゴロンゴロンと転がったままひっかかったような状態の巨岩。どうしてこうなった?
弁慶、無理して通らなくていいんだぞこんなところを。なんで七回も躊躇したのだろう。大回りすればいいじゃん、と身もふたもないことを考える。
いかん、折角「聖なるエリア」に入ったのだから、余計なことを考えてはいけない。
09:46
聖なるエリアの先にあったのは、石垣で作られた階段。そして、階段の脇に「高天原」と書かれた看板。高天原?アマテラスさんをはじめとして神様が住んでいる場所ではないか。
いよいよ、そんな世界に到達してしまったか。いかんなー、気がつかないうちに三途の川を渡ってしまったらしい。
待て待て、「三途の川」は仏教だ。高天原は神道だ。
看板を見ると、この階段を登ったところには天照大神が祀られたほこらがあるのだという。
ほこらか・・・面倒だな・・・
大げさでもなく、かなり今回の登山をかったるく思っている僕にとって、「ほこらにおまいりするために、登っておりてくる」ことが面倒でしかたがない。体力、使いたくないのう。
だったら山なんか登るな、今回だって山頂のほこらにおまいりするだけなんだぞ?
いやまあ、そうなんですけど。
09:47
しばらく悩んだ末、石段を登ってみた。
登った先には、木造の、小ぶりながらりっぱなほこらがあった。あ、石で作られた、お墓よりも遙かに小さなものかと思っていたのでこれはポジティブサプライズ。
「今日から聖なる人になったおかでんです、よろしく」
と不遜なお祈りをして、その直後に「うそですごめんなさい」と謝っておく。
09:48
さあ、このあたりから筑波さんはそろそろ本気を出してきた。傾斜を強くしないと、いつまで経っても山頂にたどり着けないぞー、と言っているようだ。夏休みの宿題と一緒だな、ダラダラやっていたら、8月31日に追い込みをかける羽目になる。
ホント、学生時代は毎年悩まされたものだ。「この学科の宿題は、『あっれー、宿題を持参するのを忘れました』で逃げて、こっちの学科は、半分までやって形だけやったことにして・・・」とそういう悪巧みばっかり考えていたっけ。
そういうのはもうこりごりだから、山はちゃんと最初から傾斜をつけてほしい。最後いきなり、というのは勘弁な。
09:49
このあたりは大きな岩がゴロゴロしている。すぐ隣の男体山とは様相が違うようだ。女の方が荒くれていて、なおかつ標高が高いというのは面白い。何故こっちが「男」にならなかったのだろう?
あ、そうか、これでわかった。「母の胎内めぐり」だって。
岩に囲まれたトンネル部分をよく「胎内」に見立てることがあるけど、ここもそう。修験道の修行の場でもあったそうだ。
母の胎内(出口から入口方面を振り返ったところ)。
「おぎゃあ!」
と叫びながら飛び出す・・・というのはさすがにやめておいた。前後に人がいたし。
09:50
「本日はおかでん様にとっておきの岩をご用意しておりますので、是非お気に入りのひとつを選んでいただければと・・・。ご満足いただけるまで帰しませんよ?」
と言われているかのように、次から次へと岩アンド岩。今度は「陰陽石」だって。えーと、高さ10メートルを超える岩が2つ寄り添っていて、これが陰陽なんだと。
どっちがインでどっちがヨーなのかよくわからないけど、「なるほど!」と適当に相づちを打ちつつ、写真を撮影しておく。何の記念になってるのか、さっぱりわかっていないけど。
09:52
ちょっと開けたところがあるので気分がくつろぐ。
まだ歩き始めて1時間も経っていないし、そこまで急な坂があたわけでもない。このまま、山頂まで歩いていける思う。一時休止はせずにそのまま進む。
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