鎖と階段でできた山【石鎚山】

石鎚山温泉

10:18
京屋旅館の建物の端に、「石鎚山温泉」の看板と温泉マークが掲げられていた。登山終わりにここでお風呂に入ったらすっきりできそうだ。入浴料500円。乳白色のお湯らしい。

下山して時間があったら入浴したいけど、時間が取れるかどうか。なにせ今は実家滞在中なので、夕食時間までに帰宅しないといけないので。たぶん無理だと思う。

後で知ったのだけど、ここのお湯はかなり良いものらしい。レポートがネット上でもさほど多くないものの、ざっと読んでみるとほめている記事が多い。硫黄が混じっているわけでもないのに乳白色、というのも驚きだ。結局この日は入浴しなかったのだけど、今思えば入っておけばよかった。

石鎚山温泉飲泉所

建物の脇に、「石鎚山開祖 役行者」と書かれたほこらがあった。中には役行者と思われる木像がある。

「せっかく修験道の本場に来たのだから、この私に厳しめの試練を与えてください」

と思わず口にしそうになったけど、あわててやめた。悪い冗談だ。今回も楽に登らせてほしい。まだまだ僕には、本格登山のための経験と体力が乏しい。

痛んだアーチ

10:19
京屋旅館の敷地を出て道路を渡ると、そこには「ようこそおいで下さいました」と歓迎しまくりの石段が待ち構えていた。いや、「待ち構えていた」と言うのはちょっとおとなしい。地味なつくりだ。山岳宗教の地として名高い場所にしては、やけに参道(?)が狭い。というか、アーチが錆びてるけど大丈夫か?

ミンミンとセミが鳴く音がこだまする山の中。ざわっと風が吹き抜ける。照りつける太陽。静かな夏だ。そんな中、こういう光景を見ると、なんだかノスタルジーに駆られる。もちろん僕にはこんな原体験はないので、「マスメディアによって作り上げられた郷愁感」なのだけど。

ほら、テレビでグルメレポーターがよく言ってるでしょ、「懐かしい味がしますね!」って。何だよそれ、と思う。

お堂

10:20
階段を登っていくと、「石鎚山大天狗 法起坊堂」という建物があった。真っ赤に激おこしている天狗の顔が周囲をにらみつけている。夜なら、これだけでも肝試しができそうだ。

ええと、ここはお寺なのかな、それとも神社なのかな?鰐口があるところからすると・・・いや、鰐口(鈴)は神社でもお寺でもあるか。「坊」を名乗っているところを見るとお寺っぽい。

何でボク怒られないといかんのですか、ボク悪いことしましたっけ?と思うが、そういえば「笑顔の天狗」って見た記憶がない。天狗というのはいつも難しい顔をしている存在なのかもしれない。

法起坊、というのは石鎚山に住む天狗で、日本八大天狗のうちの一人(?天狗の数え方が「人」でよいのか不明)とされるくらい格が高いという。そりゃそうだ、法起坊は役行者そのものである、という考えがあるのだから。

「アイツ、最近天狗だよな」という言葉は現在でもよく使うけど、役行者がいた昔であっても、「天狗になる」ことはあったということだ。

そんな大それた別格天狗を、ロープウェー駅に向かう途中の道路わきにしれっと祀ってるとは。じゃあここから先山の上には何が祀られているんだ?確かこの先、「石鎚神社」があるわけだけど、何が祀られているのだろう。役行者でも大天狗法起坊でもないとなると、大日如来・・・いや、神社で大日如来はありえない。

シャッター街

10:21
ロープウェー乗り場までの道を歩いていく。ちょっと登った丘の上にロープウェー乗り場があるようで、そこまではちょっとだけつづら折れしたコンクリート道を歩くことになる。

沿道には売店らしきものがあるのだけど、この時期はぜんぜんはやらないらしく、どこも営業をしていなかった。そりゃそうだ、周囲を見渡しても人があまりいない。なにせ四国の山奥だから。

石

10:22
役行者像が安置された一角があった。背景パネル付きの親切設計。

真ん中にいるのが役行者らしい。左右には狛犬が守りを利かせ、周囲には仏様らしき像、カラス天狗、中国の仙人みたいな人、阿修羅っぽい像などが並ぶ。オールスターって感じで、これぞ神仏習合って感じがする。そういうのを超越した存在なのが、オレたちの役行者、ってことなのか。

(それぞれの像にはちゃんと意味があるのだけど、そのいわれを知ったのはずいぶん後なのでここでは割愛。「仁」「智」「勇」をあらわしているとか、蔵王権現とかいろいろ)

ところで役行者っていつごろの人だ?平安時代?鎌倉時代?・・・と思って調べてみたら、何をご冗談を、大化の改新のころに生まれたとされている。えっ?聖徳太子の時代!

ここまで古い人だと、伝承されている話というのはずいぶん後世によって創作されたものだろう。そういえば、あっちこっちの山が「役行者が開山した」とされていたっけ。富士山も役行者が開山したはずだ。日本武尊、弘法大師、源義経などに並んでいろいろ伝説がある人なんだな。

坂を上る

道沿いにいろいろお店らしき建物があるのだけど、どれひとつ営業はしていない。静かに時を刻んでいる。石鎚神社の例大祭があるときなどだけ開くのかもしれない。

ロープウェイ駅

10:22
石鎚山ロープウェー、山麓下谷駅が見えてきた。ここから山の中腹までびゅーんと登っていくことができる(表参道ルート)。もちろん、ひたすらテクテク歩いて登っていくこともできる(御塔谷ルート)が、かなりきついらしい。今回は標高1,450メートルまで楽をさせてもらうつもりだ。

ロープウェイ駅入り口

山麓下谷駅入り口。

チケット売り場

ロープウェイのチケット売り場。みやげ物売り場にされてしまい、2つある窓口のうち1つは機能していなかった。

ロープウェイは20分おきの運行で、8月のお盆明け平日である今日は08:00~18:00までの運行。夕方遅くまで運行されているのだな。でも驚きなのが、大祭中の土日だ。03:00~18:20、と記されている。豆腐屋が乗るのだろうか?というド深夜からの営業だ。きっと、ご来光を拝んだりする人が訪れるのだろう。

運賃表

ロープウェイ運賃表2016年8月現在。

大人だと往復で1,950円。団体だと少し安くなるようだ。

こういうのを見るたびに毎度思うのだけど、周囲の赤の他人の皆様に声をかけて、「僕ら団体ってことにしません?」と示し合わせて人を集め、団体運賃を適用してもらうってことはできるのだろうか。いやまあ、できるかどうかでいえばできるのだろうけど、恥を知れ。

チケットを買う

そんなわけで正規料金を払って買いました大人往復、1,950円のチケット。往復で買えば、片道ずつ買うよりも110円安くなる。

ロープウェイ乗り場には外国の人もいた。いくら外国人観光客が増えたとはいえ、「海外旅行で日本に訪れ、しかも四国に行き、さらに石鎚山に登る」という人は稀有だと思う。日本から遠く離れた欧米系の人だし。四国界隈に住んでいる人なのかもしれない。

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