鎖と階段でできた山【石鎚山】

コル

11:30
登山道脇に看板が出ていた。「ここは八丁」と書いてある。

スタート地点である成就から1km。石鎚山頂まであと3km。ここで1/4、というわけだ。

すげえや、15分で1/4か!ということは、1時間あれば山頂に到着できる!・・・そんなわけないな、ここからが修行の始まりだ。いったいどれだけ時間がかかることやら。

標高差

11:31
路程図、というパネルがあった。山頂までの標高差を示したものだ。

これによると、標高1,400mの成就からスタートし、今いる八丁は標高1,300m。あーあーあー、100mも下っちゃったよ。で、ここから一気に反転し、山頂までグイグイと高度を稼いでいくことになる。さあて、本当の登山はここからか。

階段

11:33
「そうだ、そのとおり」

とばかりに、一気に石鎚さんはやる気を出してきた。階段の登山道がお出迎え。

登山道というのは、言うまでもなく普通は土の道だ。で、斜面がきつくなってくると、それがぐねぐねとつづら折れになる。普通はその範囲で収まるよう、道は険しい地形を避けるものだが、それでも避けようがなければ階段を作る。さらに階段でも厳しすぎる地形なら、鎖場、ハシゴという最終形態が待っている。

・・・で、早速階段ですか。

斜面を見る限り、わざわざ階段にしなくてもイケそうな気がする。しかし階段にしているのは、自然保護の観点もあるのだろうか?それとも、階段にしなくちゃいけないくらいこの先がキツいのだろうか?

先ほどの「路程図」によると、3,200mの水平移動で垂直に682m登ることになる。つまり、100m水平移動に対して21mの垂直移動だ。うーん、キツいんだかそうでないのか、よくわからんな。

上り坂

11:44
最初の階段で心拍数を上げさせられた後、穏やかな上り道でクールダウン。

心得

11:45
「登山者の心得」という看板。

あいさつは「おのぼりさん」「おくだりさん」と声をかけあいましょう。

と書いてある。かわったあいさつで、こんなのは見たことも聞いたこともない。石鎚山独特なのだろうか?

せっかくだから、この風習を見習おうと思った。しかし、自分が登っている最中に「おのぼりさん」と言うのかどうかがわからなかった。下っている人にあいさつをするのだから、「おくだりさん」と声をかけるのかも?なんて深読みしてしまったからだ。

結局、この登山中「おのぼりさん」「おくだりさん」は一回も使わなかったし、ほかの人でも使っているのをお目にかかることはなかった。みな一様に、「こんにちはー」というあいさつで済ませていた。

階段

11:52
延々と続く階段。

つづら折れで少しずつ標高を稼ごうとせず、潔くグイグイとまっすぐ傾斜を登っていく。これはけっこうキツい。

また、つづら折れの道だったら、道の折り返し地点で「ちょっと一休み」と区切りをつけられるけど、このようにまっすぐ階段が続くと、休むポイントを見つけづらい。

塔ノ岳(丹沢)のバカ尾根を思い出した。あれもひたすら階段でキツい。

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お茶を飲む

11:55
「ひゃあー!」と叫び、思わず給水タイム。

日が陰っているのでまだマシだけど、かんかん照りのときだとかなり汗をかきそうだ。

帽子を持参しているけど、首に紐でひっかけているだけでかぶっていない。あと、わざわざコンタクトレンズにして、サングラスを持参しているのだけどそれも使っていない。装備を間違えたっぽい。

鎖場発見

12:06
なにやら標識が見える。なんだろう?

「←歩道」なんて書いてあるが、それは当たり前のことなのに。

鎖場

ああ、「試し鎖道」という表記がある。

ここから前社ヶ森へな、試し鎖道ルートと、歩道ルートがあるということか。

「試し」というからには試さないわけにはいくまい?ここがクリアできてこその、ここから先にある「一の鎖」から「三の鎖」だ。

わざわざ鎖場があるということは、それが最短ルートなのだろう。険しい道かもしれないが、最短ルートのほうが結果的に楽だろう。僕は今、猛烈に楽がしたいのだ。だからこそ試す、鎖場を。

ついさっき、登山者数名を追い抜いたばかりだ。彼らに追いつかれ、鎖場に取り付かれてしまうと後塵を拝してしまう。あまりここで悠長には構えていられない。とっとと鎖に取り付こう。

長い鎖場

12:07
「試し鎖道」。

二本の鎖が崖にぶら下がっている。あれっ、これって本当に崖だぞ?「一応道はあるんだけど、万が一に備えて手すりとして鎖を設置しています」というのとはわけが違う。

ざっと見上げた限り、「ここに足をひっかけろ!」という明確な足場がない。本当にシンプルに、「崖をよじ登れこの野郎」という鎖場だ。マジですか。こういうのはちょっと、これまでお目にかかったことがない。

悩んでもいられないので、とりあえず鎖に取り付いてみる。

手にした瞬間感じるのは、「鎖が太いな」ということ。よくある鎖場の鎖より、一回り太くて頑丈だ。「つかむ」というより「握る」という表現が似合うくらいの太さだ。そして、鎖同士の結合部分の輪っかがとても大きい。独特の形をしている。

鎖

12:08
スタート地点から見上げた先で鎖場は終わりだろう、と思って気軽に登ってみたのだけど、そこに到達してみて絶句した。あっ、ここはまだ序の口だったのか、と。

ここからさらに崖は斜度を強め、ほぼ垂直のようなところを登っていく。途中休憩するような場所はないので、一気に上ってしまわないといけない。どうするんだ、これ。

恐ろしいことに、この鎖は途中で固定されている場所がとても少なかった。なので、鎖に体重をかけすぎると、ぶらーんと振り子のように鎖に振り回されてしまう。そうなると滑落の危険が高まるのでかなり慎重にならないといけなかった。

あらためて覚悟を決め、鎖修行を続行させる。

しかし上に行けばいくほど、足場になるような岩のでっぱりがなくなっていった。

気が付いたら、まるで「上に向かって綱引き」をやっているようなポーズになっていた。両手で鎖を握り締め、両足は足裏をべったりと岩につけている状態。登るのは、足の力よりもむしろ手の力という有様。

この自分の姿勢を意識した瞬間、

「あ、これでちょっとでも足や手を滑らせたら、僕はもう死ぬんだな」

と思った。たぶん、やっちゃいけないとても危険な姿勢だ。

幸い、岩は十分にグリップしてくれたし、鎖もザラザラしていて滑りやすいということはなかった。ずるッといって危ない!ということはなかったが、これまでの登山経験ではありえない状態で、肝が冷えまくった。

見下ろす

12:12
途中だったけど、木の根っこがせり出したところがあったのでいったん休止。

下を見下ろすとごらんのとおり。ガチの崖ですやん。なんでこんなところを登らせるんですか。

・・・あ、修行だからか。そりゃそうだな。

エスカレーターとかエレベーターでは修行にならん。道が険しければ険しいほど、身も心も研ぎ澄まされていく。

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