鎖と階段でできた山【石鎚山】

鎖場てっぺん

12:15
ほうほうの体で鎖場のてっぺんにたどり着いた。

身の危険を感じることは全くなかったけど、しまいには「左腕にはめた腕時計のステンレスバンドを鎖に引っ掛けて姿勢保持」なんていう無茶な体制になっていた。実際はかなり危ないシチュエーションだったと思う。

今来た道を振り返る。

・・・が、鎖はまるで地底奥深くに飲み込まれるように、その先が全く見えない。絶壁、というわけだ。やれやれ。

岩場の上

鎖を上りきった先は、開放感ある岩場だった。まるで山頂のようだ。あれっ、想定と違う・・・。

こちらの想定としては、相変わらずの山の中腹で、「鎖場を使わず迂回路を選択した人々が無駄な距離を歩いた先と合流」のつもりだった。ホラ見たことか、鎖を使えば時間短縮!ってなるはずだった。しかしどうも風向きが違うぞ、これは。

山頂っぽいところに、何か白いものが見える。とりあえずそこへいってみよう。

仏像

12:16
そこには石の像が立っていた。仏様・・・なのかなんなのかはわからない。

しかし、はっきりとわかるのが、ここが岩峰のてっぺんである、ということだ。周囲を見渡すと、ここよりも高い場所がない。どうやら、煙突のような岩場をよじ登ってしまったらしい。どうするのこの後。

下が見えない

12:16
石像の近くの岩に、鎖がぐるぐる巻きになっているのを発見した。ここから下っていくのだろうか?

霧の山

12:18
いやいやいや、無理だろこれ。

恐る恐る覗き込んでみたけど、下が全く見えない。降下点以降全く見えないところに足を踏み出す、というのはいくらなんでも無謀すぎる。

入り乱れる鎖

12:19
鎖でぐるぐる巻きにされた岩場。

ここまで巻かなくても良いのではないか?と思えるくらい、念入りに巻いている。

それはともかく、弱ったな・・・今来た道を戻るしかないのか。とんだ無駄足だ。いや、修行に無駄はないと思うが、純粋なる登山という点では著しく体力を無駄に消耗してしまった。

下りの案内

12:20
このまま岩場の上で白骨死体化するわけにはいかないので、撤退ルートを探す。すると、「下りの鎖」という矢印を発見した。あ、さっき見たのとは別のところに下りルートがあったのか。それは良かった。助かったァ!

遥か下に山小屋

12:21
で、下りの鎖。

いやいやいや、あんまり状況変わってないぞ。

遥か下に、前社ヶ森の小屋が見えるのだが、どうやらあそこまで急降下しないといけないらしい。真下にある建物がこうやってよく見える、ということはこの崖が先ほど以上に垂直っぽいということに他ならない。やだなあ、どうしようかなあ、落ちたら確実に死ぬぞ、これは。「ズルズルと岩場に体をぶつけながら滑落」なんて生易しいものじゃない。空を飛んで落下だ。

下り

12:22
「ありえん、こんな岩場はありえん」

とぼやきながら、鎖を握り締めつつ下っていく。一応こちらの崖もグリップ感はあるので、あとは重心コントロールさえうまくいけば大丈夫だ。とはいえ、かなり強引な下りっぷりだ。

木々の隙間に吸い込まれていく。

鎖

12:25
鎖場最後のところは鎖が岩から宙に浮いていて、足を踏ん張る場所がなくて途方にくれた。それでも、一気に下りきってなんとか五体満足で登山道に復帰。本当にやばい鎖場だった。こんなやばいのは初めてだ。

下から今通った鎖を見上げたところ。

帰宅後写真を整理していて、この鎖場の手前にあった案内看板をあらためて読んでみたらこんなことが書いてあった。

体力に自信の無い方は近道へ

僕はてっきり「鎖を使わないルートは、遥かに大回りさせられる」と思っていた。迂回路、というわけだ。しかし実際は「近道」だった、というわけだ。うわあ、鎖を使わないほうが近道だったとは。

しかも、こんなことまでご丁寧に書いてあった。

岩山の反対側が下りの鎖り場で、大変厳しい岩場です。

登りだけでなく、下りも鎖場だよ、ということ、そして難易度が高いよ、ということが書いてある。それにもかかわらず、僕はすべてを見落としていた。かなりうっかりしていたことになる。登山者としては致命的なレベルで。無事だったのは幸運、というレベルだ。
この鎖場は、上り下り合計で74メートル。でも、体感としては100メートル以上あった。

この後、鎖場前で追い抜いた人たちにまた会ったのだけど、「試しの鎖、どうでしたか?」と聞かれた。いやもうほうほうの体でした、と答えたら、「あの鎖場なら、剱岳の難所(カニのタテバイ・カニのヨコバイ)をクリアしたのに等しいといわれていますよ」と教えてくれた。そうなのか。

以前剱岳を登ったことがあるけど、確かに今回ほどヤバい!とは思わなかった。それくらい、この「試しの鎖」は厳しいということだ。

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ちなみにここから先にある一の鎖~三の鎖は、いずれも試しの鎖よりも短い。かなり厳しいお試しの場だ。

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