11:48
今回の旅は、まるで落ち穂拾いのようだ。
これまで、なんどとなく通り過ぎていた観光地を拾い上げていく。
「行った気になっていても、案外何も見ていない、体験していない」ことは世の中にいっぱいある。そういう場所を、今回敢えてクローズアップしている。
戦場ヶ原の最果てにある「湯滝」だって、そうだ。
このすぐ脇を走る道路は何度となく通り抜けたことがある。しかし、いつも決まって「さあ!金精峠を越えたら群馬県だぁぁぁぁ」と先のことばかり気にしていて、「湯滝」という存在は捨て置かれてきた。
でも、よく見て欲しい。「湯滝」だぞ。すごく魅惑の名前じゃないか。何故こんな場所を見過ごしてきたのか。改めて今回初訪問してみると、そういう気持ちになる。
しかし、湯滝の滝つぼに通じる道の途中で、滝を見る!という気持ちが少しだけゆらいだのは事実だ。
というのも、駐車場代500円。
有料だったのか。
環境保全のために使われます、という名目だし、お金を払って駐車場に車を停める。けちって、駐車場手前の路肩に車を停めるなんていうケチくさいことをやるのはいかん。
駐車場から少し、林の中を歩く。
気持ちの良い散歩道だ。
鑑瀑台の手前に、売店があった。
見慣れない色のコンビニだな、と思ったら、ヤマザキデイリーストアだった。景観を守るために、本来の色よりも茶色っぽい看板にしている。
それは良い試みだと思うのだけど、のぼり旗がカラフルなのはオッケーなのだろうか。ちぐはぐだと思う。
しかも「お酒・ビール」というのぼりがひときわ目立つ。なんだろう、滝を見ながら観瀑台で立ち飲みしてくれ、ということなのだろうか。
コンビニの脇には、食事処もあった。
こちらはきのこ汁、湯葉そば・うどんなどがメニューにある。他にも、滝のそばのお店ならド定番である鮎の塩焼きや玉こんにゃくも。
そういえば、「滝観光の定番・鮎とイワナの塩焼き」ではあるものの、自分の過去を振り返ってみると塩焼きを滝で食べた記憶がない。これはどうしたことか。
滝観光の定番でもある塩焼き。ということは、おそらくかなりの数の滝観光客が買い求めているということになる。「売れ筋」だから定番になる。しかし、肝心の僕は、(たぶん)一度も食べたことがない。
ただ今の時刻、11:33。食べるなら今ッ・・・!
と思ったけど、やっぱり食べる気にはならなかった。今朝の宿メシでお腹がまだこなれていない。そんなわけで、今日もまた「滝で魚を食べる」のは未体験のまま、人生の時を刻む。
滝というものは、駐車場から結構歩いた先にある、ということが多い。
しかしこの湯滝は、駐車場から歩いてほどない場所にあるし、高低差がないし、売店の目の前だ。そういえば、滝つぼすぐのところに売店がある滝って、あまり日本では数がない気がするけどどうだろう?
観瀑台から見上げた、湯滝。
おー。これはすごい。
目をこらして、遠くの滝を見る・・・なんてことはなく、まさに目の前に滝がある。この距離感は、茨城県の「袋田の滝」に通じるものがある。
こんな場所で滝をガン見できるのは、ここが谷の隙間ではないからだ。滝というのは深く切り立った崖の奥にあることが多いけど、ここはあっけらかんと、「崖からダイブしちゃいます!」とばかりにあっけらかんと、単なる崖から水が滝になっている。
なにせこの段差のすぐ上には、「湯ノ湖」がある。湖からドカンと水が落ち、そして落ちた先はこれまた平らな戦場ヶ原だ。なんだこの階段みたいな段差は。
そんな地形だからこその、絶景。こりゃあいい。
こんなにアクセス容易な場所なのに、これまで一度も見てこなかったというのは勿体ないことをしたな。
なぜ滝をま正面から観察できるのかというと、水の流れが風変わりだからだ。
どかーん、と滝つぼに水がたたきつけられて、その勢いでそのまままっすぐ川は流れていく・・・と思いきや、水は滝つぼからすぐに90度角度を変え、横向きに流れるのだった。
おかげで、人間様は悠長に滝の正面に観瀑台をこしらえ、ジロジロと滝を愛でることができる。
滝から少し離れると、水流は強いものの川は細くなっていった。
えっ、あれだけ迫力のある滝なのに、その後はこんなに細い川幅になるの?と驚かされる。まさか、公園の噴水みたいに水が循環式?そんな馬鹿な。
「500円の駐車場料金を払ったのだから、お手洗いを使っておこう」
ということで、駐車場脇のトイレに行ってみた。
すると、ここはチップ制トイレだった。ありゃ。
最近、バイオトイレのおかげで山奥でも清潔なトイレが増えた。しかし、その維持のためにチップ制をとるトイレが多い。世の紳士淑女は、こういうところでスマートにチップを払えるよう、山に分け入るときは小銭を用意しておこう。
チップに慣れていないお国柄のせいか、お金を払わずに利用する人が非常に多いのは残念なことだ。いっそのこと、電子マネーや二次元バーコードで支払えるなら、ありがたいのだけど。
12:00
一旦車に戻り、今度は湯滝の上に回り込んでみる。
国道脇のわずかな路肩に、かろうじて車を停める。湯滝上部界隈で、路肩に車を停めることができる場所は数が少ない。停められなければ、運が悪かったと諦めるしかない。間違っても、道路にはみ出して車を停めないようにしたい。
湯ノ湖。
まじまじと見るのはこれが初めて。へえー、これはいい雰囲気だ。戦場ヶ原同様、ここも自然に囲まれていて、電柱と電線が見えない。ここで一日過ごすと、さぞや気持ち良いだろう。
この湖畔に、日光湯元温泉がある。
湖岸を一周する歩道があって、湯滝の上部には木の橋がかかっていた。
まじですか。何気ない湖なのに、あの橋の向こう側はばすーんと切り立った崖と滝?
わかっちゃいるけど、実際に目で見てみないと信じられない。
というわけで、木の橋。
あー、たおやかな湖面だったけど、このあたりから若干不穏な空気が。
うわー。
この光景、見たことがあるぞ。
ディズニーランドの「スプラッシュマウンテン」だ!
滝に落っことされる前に、やたらと油断を誘うのどかな演出があるんだっけ。
そして水は崖下に落ちていく。「湯ノ湖」から「湯滝」になった瞬間。
(つづく)
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