14:41
「ポマト」でお昼ご飯を食べたあと、次なる目的地は「天狗」とした。
沼田の近くに、天狗信仰で有名な場所があるのだ、ということを今回の旅の計画段階で学んだ。知らなかった!こんなところに天狗だなんて。
天狗といえば、修験道などの山岳信仰で登場する、空想上の生き物だ。
山伏の人が修行をするような場所に天狗は住んでいる筈で(推測。正確な知識は持ち合わせていない)、さてこんなところにそんな険しい、アスレチックじみた山ってあったっけ?
同じ群馬でも、妙義山に天狗信仰がある、と言われれば納得がいく。しかし、見てよこののどかな風景。周囲は田んぼと果樹園ばかりだ。遠くに見える山も、これといってギザギザしていたり険しい雰囲気はない。
こんなところに天狗様・・・?
にわかには信じられない。「空を飛んでいた天狗が、うっかり墜落して怪我をしていたところを猟師に助けられた」みたいな、偶然性の高い昔話だったりするんじゃなかろうか。元々は縁もゆかりもないという。
14:43
ややや!赤い欄干の橋を渡ったところに、なにやら巨大なろうそくが!2本も!
「歓迎 大天狗 迦葉山」
と書いてある。どうやら、本当にここは天狗が祀られている場所らしい。
こんなろうそくを模した柱、これまで一度も見たことがない。ものすごく独特な世界観だ。
「迦葉山」と書いて「かしょうさん」と読むらしい。読み方さえ、ちょっと独特。
橋を渡ってすぐのところに「迦葉山入口」と書かれた看板があり、山の中腹にあるお寺に通じる脇道へと入っていく。
最初、僕らはうっかり素通りしてしまった。若干地味な路地だったからだ。
ちなみにまっすぐ突き進んでしまうと、天狗とは全く関係のない「たんばらスキーパーク」にたどり着いてしまう。さすがにこの時期スキーは関係ないので、あわてて折り返す。
「迦葉山入口」の看板の脇には、売店があった。店頭に、真っ赤な天狗のお面が売り物としておいてあるのがちらっと見えた。あ、本当に天狗だ。
細い坂をウネウネしながら登っていく。車酔いしやすい人はおすすめできない道。
どうも狭い道だと思ったら、一方通行になっているっぽかった。登りと下りで、それぞれ別の道がある。
この登り道の途中、森の中に突然もう一軒売店が現れた。ここでも、天狗のお面が売られているようだった。
歩いて参拝する人がいるのだろうか。その人が、ここで一服がてら、お面を買ったりするのだろうか。
これから向かうお寺には、付近にバス便がない。最寄りのバス停はというと、先ほどの赤い欄干の橋のところなので、公共交通機関を使う人はそこから歩いて参拝することになる。距離も、高低差も結構ある。
じゃあ、車以外で訪れる人なんていないのだろう、と思ったら、車道脇にまたろうそくが。「神通力現成」と書いてある。
ちゃんと登山道があるし、まだボロボロになっていない「ろうそく型の柱」が立っているところを見ると、歩いて登る人は現在もまだまだいるらしい。すごい。
そもそもこのお寺に天狗面を奉納することで、願いが叶うのだという。だから、車でぴゅーっと行って、ささっと天狗面を奉納してサヨナラー♪というのではなく、苦労して麓から登ることに意義を感じている人が多いのかもしれない。宗教というのは、そういうものだ。合理的なものとは違う世界だから。
さきほどの「ろうそく登山道」の先には、立派な朱色の山門があった。
車は、この山門をチラ見するだけで素通り。ちょっと勿体ない気がする。フランスの凱旋門みたいに、あの門の下をくぐりたい・・・と思ったけど、それは歩いて登ってきた殊勝な信者だけの特権。
15:00
迦葉山龍華院 弥勒護国禅寺の駐車場に到着。
車で楽して山の上まで登ってきたけど、改めて歩いて登る人用の参道を見てみた。
あー、これ、しんどいやつや。
結構きつい坂が伸びていた。
なにしろ、駐車場からの眺めがこれですから。
ずいぶん標高を稼いだことが、風景からわかる。
でも、天狗がいるようには見えないのだけど?
15:01
かなり大きな駐車場に車を停め、そこからさらに石段を登った先に本堂などがある。
途中、大きな観音様がお出迎え。えーと、天狗様・・・じゃないよね?鼻が出ていないようだし。
ところで天狗って何者だ?
なんとなく「天狗」なるものは知ってはいるけれど、具体的にどういう存在なのか、殆ど知らない。河童以上に、知らない。
河童はまだ、「尻子玉を抜かれる」「きゅうりが好き」「頭のお皿の水がなくなると弱る」みたいな逸話を僕は知っている。しかし、天狗はどうだろう。えーと。牛若丸の話に出てきたような気がする。それくらい。
だいたい、「烏天狗」というのがいて、これはそもそも鼻が出ていないし、赤くもない。うーん。
天狗って、悪い存在なのか、良い存在なのかさえ、何もわかっていない僕がいた。そう思えば、不思議な存在だな。多分生粋の日本人で、「天狗」を知らない人はいないはずだけど、じゃあどういう存在なのか?という問いに答えられる人は殆どいないのではないか?
弥勒護国禅寺の境内地図。山深くにあるのに、立派な伽藍を誇っているようだ。
(つづく)
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