13:27
40分ほど衣張山山頂に滞在したのち、下山を開始する。
山頂は開放的な空間だったけど、一歩下り始めると即、藪が待っている。そりゃそうだ、標高が100メートルちょっとしかないのだから。
これから先、鎌倉駅に向けて歩いて行く。鎌倉駅は衣張山の西側にあるのだけど、我々は平成巡礼道を歩いて南を目指す。この先、切通しや「やぐら」があるらしいので、それを見るためだ。
13:28
茂みばっかりかと思いきや、下山途中でもところどころ見晴らしが良い場所がある。楽しい里山歩きだ。
なんなら、誇張表現抜きで、スキップしながら歩いても良いくらいだ。
「衣張山の山頂は、映画『海街diary』のロケにも使われたんですよ」
とリーダーが教えてくれる。確かにこの景色は、映画のシーンとしてとても印象的に使えそうだ。
・・・と、感心しながら、内心ヤベーヤベーと思っていた。ああ、海街dairyだったか、と。僕の頭の中では、誤って「宵待ちdiary」だと記憶していた。
13:29
前方に煙突が見える。鎌倉市のごみ焼却場だ。今日はこれから、あの近くまで歩いていくことになる。
ごみ焼却場の煙突というのは、「ここが市境ですよ」という格好の目印になる。なぜなら、決まってこういう施設は、隣の自治体とのギリッギリのところにこしらえるからだ。街の中心地にごみ焼却場がある自治体を僕は知らない。
というわけで、あの煙突から右が鎌倉市、左が逗子市だということがわかる。
13:33
よく踏まれた登山道を歩く。
13:36
気持ちの良い新緑歩き
13:36
報国寺に通じる道の分岐。
このあたりは地形が複雑で、道も古くからのものがあちこちにあって、さらには宅地開発されている場所が入り組んでいる。オリエンテーリング向けの場所だと思う。または、衣張山まるごと一つを使って「逃走中」をやると楽しそうだ。
山の尾根に挟まれた谷筋に、住宅がぎゅっと集まっている。航空写真を見ると、まるで体内の隅々に血液を巡らせる毛細血管のようだ。そしてその谷筋住宅は、一つの谷で独立しているものもあるし、隣の谷に繋がっているものもある。町歩きと探検が好きな人にはたまらない地形だ。
13:36
「名越(なごえ)切通」という案内表示が出ている。これから我々が目指す切通しだ。
13:37
とにかく、歩きやすいし傾斜も少ない道。
もう秋ですねぇ。紅葉が美しい季節になってまいりました。
いや、まだ4月だけど。
13:40
団地の上端に出てきた。
東方面に団地が広がっていて、「ハイランド」という表記がある。逗子ハイランド、という団地だ。
急に広大な団地が広がっているのに出くわしたので、面食らう。
聞くところによると、西武による開発だそうだ。西武!こんなところも開発していたのか。軽井沢やら伊豆やら箱根やら、本当に西武は手広くやっている。
「パノラマ台からの眺め」という写真入り看板が設置されている。
うーん、何も見えない。
後になって気がついたが、パノラマ台というのはこの先にある高台のことで、「そこに行けば絶景が楽しめますよ」という案内だった。ここから見える景色を紹介していたわけではなかった。
全員、馬鹿正直に写真と目の前の景色を見比べて、「うーん」と唸ってしまった。
ここは逗子ハイランドの最奥にあたるところ。なので、西側が堤防のようになっていて切れ落ちている。
逗子ハイランドの面白いところは、名前の通り逗子市に位置する団地でありながら、端っこの方は鎌倉市である、ということ。
我々がいるすぐ横に、「かまくら幼稚園」という施設があるのだけど、これはその名の通り鎌倉市。その幼稚園から通りを挟んだ隣のブロックは、逗子市だ。山を削って大規模開発をしているうちに、逗子市から鎌倉市に足を踏み入れてしまったらしい。ちょっと面白い。
同じ団地で町内会が違うどころか、市そのものが違うのだからちょっとややこしい。ごみ収集日とか、収集ルールというのも多分違うだろう。
13:42
ハイランドを横目に見ながら、団地からまた山道に戻る。浄明寺緑地、と呼ばれているエリアを歩く。
13:46
あったあった、パノラマ台の看板。
パノラマ台はルートから外れた場所にあるのだけど、ちょっとだけの寄り道なので立ち寄ることにした。なにしろ、さっきみんなで一生懸命、全然関係ないところで目をこらして風景を眺めていたのだから。
「全然関係ない」といっても、一応あそこは「関東の富士見百景」になっている場所なので、風光明媚ではある。ただし、4月にもなると春霞のせいで富士山は見えないけれど。
13:46
なんかさっきから同じような写真ばっかりですいません。
13:49
パノラマ台手前になると、景色が開けてきた。高い木を伐採しているのか、それとも強い海風のせいで高い木が生えづらいのか、このあたりは低木しかない。
景色は衣張山と似ているけど、ここからだとちらっと江の島が見える。
13:50
パノラマ台。椅子がひとつある。ここでカップルが夜景を楽しむと最高だろう。ただし、ここまでの道は闇夜なので、防犯上あまりおすすめできないけども。
ごみ焼却場を正面に眺めつつ、ロマンティックなひとときをぜひ。
13:52
あらためて名越切通しへの道に戻る。
この近辺はマムシが出るそうだ。
13:53
尾根道を下っていく。
13:55
途中、逗子方面の景色が開けた。広がる砂浜。
平地でも一戸建てが多いエリアだ。こういうところは、マンションに住むよりも憧れの戸建て!ということなんだろう。
東京からは随分遠いし、さぞや安く住めるんだろうな・・・と思って不動産情報サイトで確認してみたら、思いっきりのけぞった。ファッ!高いやんけ!
僕が住んでいる東京の下町エリアと比べて、むしろ高いんじゃないかというプライス。いや、びっくりした。さすが「湘南」というブランドがあるエリアだ。すんません、舐めてました。
僕みたいな社畜かつ「都心の重力に捉えられた男」は、都心に何分で出られるか・・・という基準でしか土地をみていませんでした。しかしこういう鎌倉や逗子を見てしまうと、「都心に近い」なんてくそ食らえだ、と思えてくる。いいな、こういうところの生活も。
ただし、逗子や鎌倉に憧れて移住する人が多い一方で、「海風のせいで衣類が乾かない」「塩害」「渋滞がひどすぎる」という話も聞く。こういうところに住むには、それなりの苦労もあるということだ。「毎日サーフィン三昧っすよ」なんていう楽しい話ばっかりじゃない。あと、現実問題として、都心の会社に通うならばやっぱりここは遠い。
話が脱線するが、昔僕の上司にあたる人が鎌倉に住んでいたのだけど、ゴルフコンペが会社であるときは幹事がゴルフ場選びに気を遣ったという。このお偉いさんだけが一人遠方の鎌倉に住んでいるので、うかつに埼玉の寄居だとか、成田の方だとか、そういう場所が選べなかったからだ。
鎌倉から都心までは電車で一本とはいえ、小一時間かかる。毎朝毎晩、さぞや大変だろう。「偉い人なので、きっといつもグリーン車に乗ってるんだろう」と我々下々は噂をしていたものだ。でも、だとすると自費でかなりの出費だ。
鎌倉に(新たに)住まう、というのはかなりのお金持ちでないと無理そうだ。僕は無理だ。まだ、小田原とか熱海から新幹線通勤をした方が楽っぽい。
13:56
どんどん進んでいく。
(つづく)
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