屯田兵に帰れ【北海道ハタケ遠足】

17:04
食後、ハタケの一角に黒いビニールシートを張る。「マルチ」と呼ばれるもので、これを張ることで雑草が生えるのを抑制しつつ、太陽光で地熱を上げて苗の発育をよくする効果がある。

張ったら張りっぱなしでOKというわけではなく、四隅に土をかぶせて風雨でめくれ上がらないようにしなければならない。そうじゃないと、ちょっとした強風で鯉のぼりみたいにはためいてしまう。

T型のワインオープナーみたいな形をした、マルチ用の杭も売られているようだ。それを使えば、土を被せるよりもよっぽど強固にマルチを固定できる。・・・が、しかし、そういうのにお金をかけはじめると、本当にきりがない。

見ての通り、1レーン分だけマルチを張ったって、長さが50メートルははるかに超えている。これに、数メートル間隔で杭を打ったとしたら一体何本杭がいるんだ?一体いくらお金がかかるんだ?

お金をかければ農業というのは少し楽ができるのだろう。しかし、「少し楽」なのと比例しないのが「利益」だったり「費用」なわけで、結局は人力勝負ということはこれまでもこれからも、かわらないのかもしれない。

「精密機械を作っていた工場の利活用で、レタスを生産する!」

なんてのは、今後も増えるかもしれない。天候不順による収穫量や野菜の質のブレを抑えられること、人件費を考えると利益とコストがひょっとするとペイする可能性がある。現にもやしやマイタケなんて、既に工場生産品が多いわけで。

しかし、根野菜はどうだろうか?水耕栽培ではないので、難しそうだ。技術的には可能だと思うけれど、採算割れになりそうだ。

これから大規模な気候変動によって風水害が増え、農作物が安定供給しづらい時代になっていったらどうなるのだろう?様々な野菜が、工場生産されていくようになるのだろうか?

僕はそれでもかまわないと思っている。しかし、世の「無農薬・有機栽培がいい」と思っている人は、工場生産野菜についてはどう考えるのだろうか?無農薬だから良い、と感じるのか、それとも野菜を工場で作ることの不自然さを好まないのか。

まあ、どちらにせよ「工場で有機栽培」というのはなさそうだ。化学肥料を与えて育てることになるので、「有機栽培の野菜を積極的にチョイスしたい」という人にとって、工場生産野菜が選択肢に上がるということはないのだろう。

18:20
そんなことを考えながら、一人ハタケを後にする。仲間はまだハタケ仕事を続行中だったので、僕一人だけタクシーで新千歳空港に向かった。

流しのタクシーなんているわけがないので、千歳市街のタクシー会社に電話をし、来てもらった。僕が履いている靴は土まみれでタクシーに乗るのがはばかられたんだけど、運転手さんはなんの躊躇もなく「ああいいですよそのまま乗っていただいても」と車に僕を招き入れてくれた。どうやら、「泥まみれの靴」というのはこの界隈では何ら珍しいことではないようだ。

ほかの仲間たちは、21時近くの飛行機・・・つまり、終電ならぬ終飛行機に近い便の予約をとっているらしい。なので、僕が先陣を切っての退却となった。みんな遅くまで残るんだなあ。明日は月曜日だぞ?

21時に新千歳→22時半過ぎに羽田→帰宅は24時近く

ということになる。旅装をほどいて、風呂に入って寝たら、もうすぐ次の日の朝だ。さすが北海道までハタケ仕事にやってくる人たちはパワフルだ。

一方のチキン野郎な僕はというと、18:40新千歳発の便をチョイスしていた。しかも帰りの便もLCCのバニラエアなので、搭乗時刻が厳守だ。18:20には搭乗口にいないと、置いていかれるかもしれん。そんなわけで、18時には空港着、17:30にはハタケ発という逆算をしなくちゃいけない。

ANAやJALだったら少々遅れても大丈夫!・・・というわけではないけれど、やっぱりLCCだと緊張感が違う。そもそも、チェックインカウンターの位置や搭乗口が空港のはずれにあったりするし、油断がならない。

あと怖いのが、機内持ち込みも預け入れも、荷物の制限が厳しいということだ。うっかりお土産を買いすぎたりして制限オーバーになると、その分手間と費用がかかるし搭乗に間に合わなくなる。空港でお買い物をするにしても、慎重になる。

新千歳空港で、LCCは0番とか1番といった「ターミナルの最果て」から出発する。お土産物を売っているのはターミナルの中央部分なので、「わあすごい!いろいろなものが売られているよ!」とワクワクしていたら後で走ることになる。欲をかかないで、早く搭乗口に着いておくのが安心。

18:22
成田空港と違って、LCCとはいえボーディングブリッジが用意されている。しかしその距離がそこそこ長い。そういうこともあって、搭乗時間厳守!ということにしているのだろう。

帰りの飛行機。

20:14
8時過ぎ、成田空港に到着する。

羽田だったら、「よし帰ってきた」という実感がある程度伴うけれど、成田だと「さてここからがまだまだ長いぞ」という気持ちにさせられる。今更だけど、成田は都心から遠い。

20:18
昨日はT2からT3まで徒歩だったけど、今日はバスを使う。時計回りで運行されているバスは、T3からT2に行くのには早いからだ。(のちにT2→T3行きのルートが変更となったので、T2→T3でも大回りはしなくなった)

20:27
T2に戻ってきた。さてここから特急に乗って都心へ。

途中、外国人観光客向けと思われるガチャがずらりと並んでいたのが面白かった。

今回の旅の総括?いやもう、一泊二日で北海道というのであっという間だった。折角の北海道なのに、ハタケ仕事だけだなんてもったいない!と人から言われる。もちろんその通りだと思うけれど、広大な大地に這いつくばりながら農作業をやる、というのは都会暮らしではなかなか得難い体験だ。

たとえば「関東近郊のどこかにハタケがあります。気軽に行き来できるのでどうですか?」と言われたら、もちろんサポートするけれどテンションは上がらないかもしれない。北海道に行く!という一大決心があってこその、モチベーションともいえる。もちろん、出費がかさむので、独身ならではのモチベーションではあるけれど。結婚したら、そうやすやすと「北海道にハタケ作業しにいくわー」とは言えないと思う。

仲間で、「せっかく北海道に来たのだから、あともう一泊して札幌のカフェなどに行ってくるつもりです」と言っている人がいた。ああそういう楽しみ方もあるのか。

僕自身も次は何か考えたい。折角の北海道なんだから、登山を組み込めたら最高だ。なにせ、ハタケ仕事用に重たいハイカットの登山靴を履いているくらいなんだし。

(この項おわり)

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