11:11
上高地バスターミナル到着。
上高地は、雲に覆われているものの、雨は降っていなかった。しかし、目の前に見えるはずの穂高連峰がまったく見えない。山の上は、雨が降っているようだ。
天気は冴えないけれど、この地に下り立った僕は強烈な感慨に浸っていた。
「この地に、また戻ってきたぞ!!」
という気持ちだ。
ここ数年、いろいろなことがあった。週末の行動パターンががらりと変わって、遠出する機会がすっかり減ってしまった。アワレみ隊の活動でさえも2013年を境にめっきり減ってしまったのは、僕が遠出をする余裕がなくなったからだ。
泊まりの登山はもうなかなか難しいだろうな、とさえ思っていた。
しかし2017年の今年、また風向きは変わった。むしろ今年からは、積極的に動くことを再開しなくちゃいけない。そんな中でのアワレみ隊長崎企画だったし、この焼岳泊まりがけ登山だったりする。
さようなら過去の自分、お久しぶりもっと過去の自分。そして未来の自分に祝福を。
端から見るとオッサンのキモい感慨にすぎないのだけど、オッサンだって生きているんだ。いろいろ思いに浸ることはあるので許せ。
そんな自分の復帰戦として最適だったのが、「登山家の聖地」ともいえる上高地だった。
なんだか涙が出てきそうになる。こうして一人で、この地を歩けるとは。あまりに懐かしい感覚だったので、最後に上高地を訪れたのがいつなのか、調べてみた。
えっ、2003年!?ということは、14年も前なのか。道理で・・・。すまん、すっかり疎遠にしてしまって。
ぐるり、とバスターミナルを見渡してみる。
相変わらず観光バスがいっぱい並んでいるし、カラマツの林は健在。昔も今も、あまり変わっていない光景・・・のような気がする。
今回、焼岳を登ってしまうと、上高地起点の百名山は終わりになる。「百名山ピークハント」を山登りで優先させる限り、上高地を訪れるのは今回が最後になってしまうのかもしれない。
でもそれはとても惜しい。やはりここの非日常感はすごいものがある。
北海道とか沖縄といった場所を除いて、ここは「日本における楽園」だと思う。
将来のことはどうなるかわからないけど、今回は一歩一歩を楽しみたいと思う。
11:13
バスターミナルに隣接しているトイレ。かなり屋根が大きい。
二階建て、三階建てになっているのだろうか?それとも二階以上はかいこ棚のようになっていて、簡易宿泊所になっているとか・・・。
僕が知っている2003年当時からこれがあったかどうか、記憶がない。
トイレの中には、カウンターがあった。銭湯の番台さんが控えている場所のようだ。
チップトイレになっていて、ここでお金を払うことになる。
ちょうどこのときは清掃員さんが控えていなかったけど、普段は常駐しているのだろうか?
中国を旅行した際、こういうタイプのチップトイレを何度もみかけた。おばさんが陣取っていたけど、一日中臭い場所に居続けるのは大変だな、と思ったものだ。
上高地の地図を確認する。
地図の中央に上高地があり、左に大正池、右に明神までが描かれている。
日帰り観光を楽しむ人は、ほとんどがこの範囲内で行動することになる。
僕らみたいな山登りをする人も、この界隈では通りすがりの人に「こんにちは」とあいさつをするのをやめる。
登山のマナーというかルールとして、登山道ですれ違った人にはあいさつをするというのが定番となっている。しかし、この辺りは一般の観光客が多く、いちいち声をかけていたらきりがない。そして、登山のマナーを知らない観光客は、いきなり「こんにちは!」と声をかけられたらビックリしてしまう。なので、この地図の範囲内ではあいさつはほとんどしない。
もちろん、明らかに山装備をしている人に対しては、あいさつをする。そういう「使い分け」をする。
上高地の中心部を拡大した地図。
バスツアーなどで訪れる観光客は、この地図の範囲内で行動することが多いはずだ。
バスターミナルから河童橋に行って、写真を撮って、河童橋界隈のお土産物屋で買い物をしてバスターミナルに戻る。1時間も必要はない。30分で事足りる。
しかし、それだと上高地は満喫できない。やはり、可能なら半日くらいはここで過ごしたいものだ。
上高地の玄関口である上高地観光センター。
バスターミナルはその機能の一部。
二階には、朝6時から営業をしている、松本市営の「上高地食堂」がある。深夜バスで、早朝に上高地に到着した場合にとても重宝する。
あー。こんなんだったかなあ。
バスターミナルのチケット売り場を眺めて、「あー」とか「うー」とか唸ってしまった。
たぶん、僕が知っている2003年とはがらりとかわったはずだ。何しろ、大きなディスプレイが掲げられ、バスの発車予定時刻が表示されている。こんな技術は、2003年にはなかった。すげえ!ハイテク化してるじゃないか!
本来の僕ならば、登山口に到着するやいなやすぐに登山開始をする。
同じバスに乗ってきた人たちよりも早く登山道に入りたいし、山小屋や山頂に到達したいからだ。チンタラしていたら、登山道が塞がってしまう。
しかし今回、なぜバスターミナル界隈をウロウロしているのか?
そもそも、焼岳登山をするなら、最寄りのバス停留所は「帝国ホテル前」だ。バスターミナルは、行き過ぎだ。
寝過ごしたわけではない。理由は二つある。
- お昼ご飯を上高地で食べてから、登山を開始するため。
- 帰りのバスを予約するため。
上高地は、昔からバスは乗車券と別に「整理券」の発券が必要だ。それは2017年も変わっていなかった。
なので、山から下山して、目の前に停まっているバスに乗ろうとしても「整理券がないのでダメです」と言われる場合がある。バスには定員があるので、そのキャパ以上にお客さんを乗せられないからだ。運が悪いと、上高地で半日くらいバス待ちになることもあり得る。
整理券は2日先の分まで手配ができる。なので、僕は下山時間を計算し、明日の乗車整理券を確保しておいた。
たぶん当日手配でもバスには乗れると思う。下山してから、そのときの気分次第で帰りの時間を決めるほうがいい。でも、万が一乗れなかったら随分残念な気持ちになるので、早めに手配しておいた。
ほら見ろ!明日14:30のバスなのに、既に整理券番号が12番だぞ!やはり、早めに手配している人はそれなりにいるようだ。
なお、帰りはバスで新島々に行き、新島々から萌えキャラ?「渕東なぎさ」の松本電鉄上高地線で松本に出て、そこから特急あずさで新宿を目指すことにした。帰りも「せせらぎ号」で長野駅経由新幹線で東京、ということも考えたけど、せっかくだから行きと帰りは別の道のほうがいい。
バスターミナルの時計下に張り出された注意書き。
釜トンネルは20時に閉鎖されます
上高地と下界とを結ぶ釜トンネル。20時を過ぎると閉鎖されてしまい、完全に上高地は隔絶された世界となる。
バスの最終は18:45なので、20時までちょっと余裕がある。じゃあこの間は何?というと、観光バスやタクシーはまだ往来できるよ、というわけだ。
なので、予定より大幅に下山が遅くなり、終バスに間に合わなかった!下山が19時になってしまった!という人がいたとすると、タクシーを使えばまだ上高地を脱出できるというわけだ。
もっとも、「下山が19時」なんてあり得ないけれど。
上高地観光センターというガラス張りの一角があった。
「宿泊案内所」という掲示がある。
昔、ここで宿を取ったことがある。GWに、兄弟で上高地をあてもなくおとずれた際、「どこか安い宿ないっすかね、1泊2食で10,000円以下で」と相談したっけ。
そうしたら、上高地温泉ホテルを10,000円で斡旋してくれた。今思うと、やたらと安い。本来この宿は、もっと高い値段設定の宿だ。山側の見晴らしの悪い部屋だったけど、温泉宿だし大満足だった。今はどうなのか、わからない。
上高地はその場所柄、宿代が非常に高い。1泊30,000円以上する宿だってあるくらいだ。しかし、西糸屋山荘別館のような山小屋スタイルの宿も中にはあり、そこならば相部屋だけど10,000円以下で宿泊も可能だ。または、明神まで遠征すれば、そこの山小屋はやはり少し安い。
さっきも書いたけど、上高地にはタクシーが出入りしている。もちろん許可証を持っている地元のタクシー会社だ。
バスに乗らないでタクシーだなんて!贅沢だ!どんな金持ちが乗るんだ!?と最初は思う。しかし案外これが絶妙な値段設定になっていて、相乗りするならば一人当たりの運賃割り勘は、バスに乗る時よりも「ちょっと高い」程度に収まる。
タクシーだと、バスと違ってすぐに乗れるし、荷物はトランクに詰めることができる。数名のグループなら、タクシーで沢渡や平湯温泉に行く、という選択肢は十分にありえる。
僕?いや、僕は単独行なので、タクシーなんて滅多に使わない。
(つづく)
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