「ちょっと、百名山に寄ってくわ」【伊吹山】

18:12
本日のお宿に到着。ホテルルートイン彦根で夜露をしのぐことにする。

そもそも僕の旅行というのは、大学時代から始まったアワレみ隊の活動が起点になっている。そのため、テントで寝るというのが基本であり、そのあと温泉旅館に泊まるのがデフォルト当たり前になっていった。その中で、「ビジネスホテル」というのはゴッソリ抜け落ちていたジャンルだ。なにしろ、都市部を宿泊地として選ぶことをあまりしてこなかったからだ。

あと、「仲間と一緒に泊まるのが目的」の旅行だったため、シングルないしツインやダブルといった雑魚寝を不可能にする仕組みの宿は敬遠されてきた。

それが今じゃ、ビジネスホテルを使うようになってきた。僕が歳を重ねるうちに、だんだん孤独になってきたからでもある。みんな、言っておくぞ。結婚しないという選択肢は誰にでも自由にある。全く卑下することじゃない。でも、周りの仲間が結婚し子供ができたり、責任ある立場の仕事に就いたりすることで、つるむのがだんだん難しくなってくるのが30代・40代だ。

そんなわけで、個人旅行でも気軽に利用できるビジネスホテルをだんだん重宝するようになってきた。

ビジネスホテル選びの際、僕がもっとも重視するのは「大浴場があること」だ。大浴場さえあれば、カプセルホテルでも構わないし少々お値段が高くなってもいい。それくらい、大事なことだ。なにせ、温泉旅館育ちなので。

「金の大小は問わない」わけだから、旅の目的地が決まって、そこから宿探しをする際は結構手っ取り早い。大浴場がある宿で絞り込むと、自ずと選択肢は少なくなる。

彦根の場合、もろもろ勘案してこの「ルートイン彦根」を選んだ。

朝食バイキングがある、というのも加点対象だ。いい歳して食べ放題かよ、と自分でも思うけど、たぶん今生きている中でもっともウキウキするのが、見知らぬ街をひたすら散策しまくることと、バイキングだと思う。

ホテルに到着した時点で、ずいぶんテンションが上がったらしい。

「おおお!フロントに無料コーヒーサーバーが置いてあるぞ!」

といったことで大興奮し、写真を撮っている。しかもピンぼけしている。

こんな写真をわざわざ残しておく必要はないのだけれど、当時は何か貴重な資料画像にでもなると思ったのだろう、残している。・・・で、それを今こうやって記事にも使っている。

こういう写真もガッチリ撮っている。別に何の変哲もないビジネスホテルの館内案内なんだけど。

この文章を書いているのは2020年12月。実際に旅行をしてから3年の月日が経っている。この3年の間に、僕は随分とこういう「執着心」が薄れてしまった気がする。いちいち写真で撮影するという気迫が失せたというか。なので、今こうして写真を見返してみて、「なんでこんなに写真を撮っているのか?」と呆れてしまう。

自分のことなので「なんで?」ということについて明確な答えは知っている。単に、「自分が見聞きしたものは全て記録しておきたかった」からだ。でも、「じゃあ、なんで全部記録しておきたいの?」と聞かれると、多分その答えは持っていなかったと思う。

結局、僕が記録したかったのは「自分が見聞きしたときに感じたこと」なのであって、「自分が見聞きしたもの」ではなかったのだろう。だから、写真という「見たものを保存する手段」というだけでは、今となっては謎データと化している。

とはいっても、やたらと密度高く写真を撮っているということから、当時の自分の気合の入りようとかテンションの高さ、というのを類推できる。興味がない事については写真撮影密度が減る。

記憶を記録にするための写真なので、こういう廊下の写真も残っている。

シンメトリーな構図で、ひたすらに長く真っ直ぐな廊下。

こういうのを「映える」と称して撮影する気持ちなんてのはこれっぽっちもない。この光景を驚きをもって観察したので、それをカメラに収めたまでだ。

温泉旅館の場合、こうはいかない。もっとグニャグニャした作りになっているし、途中増改築を繰り返し、意味不明な袋小路や使われていない部屋があったりする。だから、たまにこういう50m走でもできそうな、真っ直ぐな廊下を見つけると「この世にもこんな世界があるのか!」という驚きを感じる。

驚きのまま、部屋に入る。

部屋番号を覚えていないと、うっかり人の部屋のドアノブをガチャガチャやってしまいそうだ。画一的な廊下をくぐり抜けると、ここもまた画一的だけどプライベートな空間がある。

一人で寝泊まりするには十分すぎる、ゆったりした空間。

これまでの人生で、一番狭いシングル部屋体験は仙台のレオパレスだった。部屋内の往来も難儀するほど、狭かったのは強烈だ。

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あれを知ってしまうと、今やどこでも広く感じる。

ベッド。

枕が1つ。

ホテルによっては、シングルベッドなのに枕が2つあるところがある。あれは何かのサービス精神なのだろうけど、未だに使いこなしかたがわからない。一つは頭に、もう一つは抱き枕として抱きついて寝てください、という意味だろうか?いや、抱き枕だったら2つとも使って抱きついたほうがいいのか。

ビジネスホテルの部屋に入った直後の、「どうしようどうしよう」とソワソワする感は異常だ。少なくとも僕にとっては。

なにせ狭い部屋だ、あんまりウロウロするスペースがない。でも、見るべきものはいっぱいだ。早く外に出て食事をしたい。でもちょっと待って、館内案内を確認してみたいし、大抵こういう部屋には置いてある地元のフリーペーパーを見て、ご当地のお店の雰囲気を感じたりしたい。もちろん、お風呂だって入りたい。

落ち着け、まずは一つずつ片付けていこう。

窓からの景色を撮影することも、忘れちゃいけない。

館内案内を侮ってはいけない。ホテルでも旅館でも、これは必読書だ。

「へえ、マッサージサービスがあるのか。おや、深夜2時までやってるの?誰が使うんだろうな」

みたいなことを読みながら考えてみたり、建物の構造を見ながら、「この何も書かれていない空間は電源設備があるのかな、それとも厨房かな」とかどうでもいいことを考えてみたり。

このホテルの館内図の場合、部屋の並び順が横一列に順番となっていないのも面白い。

へえ、ホテルの1階には食事処があるのか。居酒屋として機能しているようだ。

酒を飲まない僕にとっては、もはや居酒屋というのは敷居の高い別世界だ。でも、ビジネスホテルの居酒屋なら、「ちょっと泊まりついでに立ち寄りました」ということができる。そもそも、お一人様歓迎の場所柄だろうし。

心が動く。敢えてこういうところで、ご当地感がまるでない「ソーセージ盛り合わせ」とか、よせばいいのに普通のラーメンとか食べてみたい。普段なら、そういうのでお金を使って満腹になるのは悔しく感じるけれど。

でもあいにく、今日の僕はこのあとの夕食のあてが既にあった。なので、1階の居酒屋はスルーした。

そういえば、このホテルは車でやってくることが前提となるような郊外にある。車でやってきた人にとっては、ホテルに居酒屋があるというのは大変ありがたいことだろう。だって、お酒が心置きなく飲めるから。

(つづく)

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