13:00
景信山山頂。
もうちょっと高い場所があるんじゃないのか?と思える周囲だけど、国土地理院が三等三角点を設置しているので、ここがピークなのだろう。標高、727メートル。
ここまでくれば、縦走の折り返し地点にやってきた気分になる。
この先、小仏城山(標高670m)を登って、その次が高尾山(599m)だ。アップダウンがあるものの、だんだん山の標高が下がってくるので、「下った分だけ、登り直さなければいけない」という絶望感とは無縁だ。
景信山山頂を図解した、わかりやすい地図が山頂標識のすぐ近くにあった。ありがたい。
これを見ると、景信山には売店が二つあることがわかった。そうか、二軒ハシゴか。
できれば、先ほど通過した堂所山にも茶店があって分散されているとありがたいのだけど、僕みたいに「縦走しながら全茶店制覇」なんて考える人はいないだろうから、この考えは特殊だろう。
景信山の茶店は、山菜の天ぷらがあるという。山の上で天ぷらとはびっくりだ。油の処理はどうしているのか、とか興味津々。ぜひ食べなくちゃ。
山頂から眺めた、関東平野。すごい眺めだ。地平線が見えるんじゃないか、というくらい今日は良い天気。
ここに陣取れば、ゴルゴ13なら関東平野にいる誰でも暗殺できると思う。
13:01
景信山は人でいっぱい。
一体どこから現れたんだ、というレベルで人がくつろいでいる。ちょうどお昼時ということもあるし、縦走ではなく景信山そのものを目当てに登ってきた人も多いようだ。
写真のサイズを縮小して掲載しているのでぼやけてしまっているけど、遠方には東京スカイツリーが見えている。
新宿西口のビル群(東京都庁など)のさらに奥に見える。
東京スカイツリーは東京タワーと比べて可愛らしさが足りないけれど、634メートルという高さは圧倒的だ。遠くからでもよく目立つ。一方、333メートルの東京タワーは景信山山頂からは見つけられなかった。
それよりも、手前に見える、まるで墓石みたいな黒っぽいビルが気になる。なんだあれは。周囲の建物とは段違いの、圧倒的な存在感ではないか。
後で「八王子 巨大な黒いビル」などのキーワードでネット検索してみたら、あれは「サザンスカイタワー八王子」という超高層タワーマンションであることが判明した。八王子駅南口の再開発で誕生した、地上41階建てのマンションなんだって。
最初、黒いビルの右側にピンクの巨大な建物・赤い看板が見えるので、「こりゃあイオンモールに違いない」と思って探していた。でも全然見つからず、首をひねっていたのだけど完全に勘違い。ピンクの建物は「ルームズ大正道」というホームセンターだった。
別角度の写真。
みなさん、山に登った時についつい嬉しくなって、こういう写真を撮ると思うけど、あんま意味ないよなこれ。
だって、後で見返しても、何がなんだかわからん。
何しろ、望遠で撮影しているので、遠近感がぎゅっと圧縮されてしまい、もう何がなんだか、状態だ。
遙か彼方に横浜ランドマークタワーが見えるのはわかったのだけど、手前のビル群がよくわからない。武蔵小杉のタワーマンション群かな?とも思ったけど、それにしては近すぎるようだ。
ネチネチと地図を見ながら調べるとわかるに決まってるんだけど、面倒くさくなってやめた。
教訓。「後で家に帰って、撮った写真を見ながら調べよう」なんて思わないこと。風景を見たときは、その場で、生の目で見ながら場所を確認しよう。
13:03
また一つ賢くなったところで、茶店へ。
山頂の近くにある茶店は、「三角点 かげ信小屋」という名前らしい。
この小屋の周辺には、ベンチがたくさん並んでいる。座るところには全く不自由しない。屋根付きのものもあり、雨のときでも安心なくらいだ。
そのかわり、茶店の中には休憩スペースはないようだ。
置いてあるカップラーメンのサイズがデカいのが、微笑ましい。
「少量で十分です・・・」というご年配のことなんて知ったこっちゃねぇ、という大胆さ。なにしろ、カップ麺の名前が「ごつ盛り」だもの。
その横には、清酒が入っていると思われる、徳利がある。景信山、というオリジナルのお酒らしい。
いやいやいや、すごいなこれは。
多種多様に取りそろえがございます。ペットボトルも、缶も、瓶も。
えっ、瓶!?
ここで気がついた。瓶ビールを売っているぞ、おい。
「やっぱりビールは瓶じゃなくちゃね」という人向けなのか?缶ビールも売っているのに、さらに瓶まで売るとは。しかも、大瓶。
いやー、山で瓶ビールを売るかね?たぶん、初めて見た。生ビールサーバーが山小屋にあってびっくりしたことがあるけど、それを上回るびっくりだ。
だって、缶ビールだと、飲み終わった缶はぐしゃっと潰してコンパクトにできる。山の下に運び下ろす時に楽だ。しかし瓶だとそうはいかない。重たい瓶がそのまま残るし、かさばる。ヘリコプター輸送だろうが人力輸送だろうが、こんなに面倒臭いものはない、というくらいの存在だ。
しかもキリンとアサヒ、二種類も揃えているし。ムチャクチャやな。
ワインならまだわからんでもないんですよ。缶とかペットボトルのワインじゃ味気ないから。でもビールですよビール。缶ビールというのが市民権を得ている中、あえて瓶ですよ。もうびっくりを通り越して、唖然ですよ。
僕が酒飲みだったら、絶対ここで瓶ビールを飲んだと思う。で、「うーんよくわからないな、缶ビールと飲み比べをしないと」といって、缶ビールも飲むと思う。やめろやめろ、縦走がここで終わってしまうぞ。
そういえば、売り場にずらっと並ぶ食べ物は、おつまみ系の缶詰だらけだ。
高尾山に「ビアマウント」というビアガーデンがあるけれど、ここは「居酒屋マウント」と言い切って間違いない。
おっと、こんな雑誌記事があるんだな。
「おいしいなめこ汁食べにいこう!景信山へ」
なにやら癖の強い日本語だ。「景信山へおいしいなめこ汁を食べにいこう!」という表現ではなく、倒置法を使ったり、「を」を省略したり。その結果、パワーワードっぽく見える。
そうか、なめこ汁も名物なのか。
いやいやいや、たぶんこの縦走路中、どこの茶店でもなめこ汁はあって、どこでも名物なんだと思う。
でも気になるな、正直。
ところで天ぷらはどうした?無いのか?勘違いか?・・・いや、あった、この生地の右下に「揚げたての」という字が見える。事前情報通り、天ぷらは存在するらしい。
とりあえず茶店前のベンチに荷物をおろす。
テーブルには、「おすすめワイン」の紹介がされていて、一瞬ギョッとする。本気でこの茶店、飲ませる気満々だぞオイ。
ふと横を見ると、おっちゃんが一人、瓶ビールの大瓶を手酌しながら天ぷらを食べていた。あ、目の前に「居酒屋利用客」がいた。冗談じゃなくて本当だわ。
男性の中高年団体客ともなれば、結構な割合でお酒を楽しんでいた。よくやるぜ。
僕もお酒を飲んでいた頃は、山頂やら登山途中やらでさんざんビールを飲んでたけど、さすがに大宴会をおっぱじめるほどは飲まなかった。ちゃんと下山できるんだろうかこの人たち。
先ほどの「酒と、酒のつまみコーナー」とは違う場所に天ぷら専用カウンターがあった。注文とお金の支払いはこちらでどうぞ。
安いよな、300円だぞ。
海老とか原価が高いものは使わないからなんだけど、だとしてもお得に感じる。
天ぷらは注文が入ってから、目の前で揚げてくれる。うまそうだ。山の上とは思えない、「じゅう」という油の音が非現実的。
大きな中華鍋を天ぷら鍋にしている。
これが「三角点かげ信小屋」の山菜天ぷら。
すごい!いいじゃないかいいじゃないか。
300円でこの彩り。素晴らしいの言葉に尽きる。モミジが入っているのが、特に美しい。この季節ならでは、だな。あと一か月早くても遅くても、この彩りのお皿にはならなかっただろう。
早い話、毎日お店の人が茶店に上がってくる道中摘んできた「山に自生する葉っぱ」だ。でも、そういうのこそ、「野趣」ってやつでいいんだよな。アスパラとかカボチャとかここに入っていたら、むしろガッカリするもの。
つい気になってしまって、なめこ汁も買ってしまった。
何をやってるんだ、この後も茶店巡りがあるというのに、一店舗で2品も買うのはやりすぎだ。
でも、つい。だって、この「葉っぱの天ぷら」だけをムシャムシャ食べて、「ごちそうさまでした」というのは、なんだか収まりが悪いから。
こういう時こそ、ノンアルコールビールだったな。でも最初の陣馬山で飲んでしまったので、今回はパス。
(つづく)
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