15:18
試飲を終えた我々は、八海山雪室の奥にある「雪室 千年こうじや」に向かった。ここは雪室の冷気を使った天然の冷蔵庫になっていて、頑丈な扉を開けて中に入ることになる。
「雪室の冷気」もなにも、今は冬なので外気と殆ど一緒なのだけど。
ここでは、先ほど我々が絶賛した「越後で候」が売られていた。
「おお!一升瓶もあるのか!」
やっぱり、清酒一升瓶ってテンションが上がるよな。なんだか、お祝い気分になれるというか。だって普通、家飲み用としては一升瓶はなかなか買わないものだ(もちろん、ガンガン飲む人は一升瓶を当たり前のように買うだろうけど)。だから、僕の中では「一升瓶=みんなでワイワイ飲む、楽しい時間」という思いがある。
「折角だから、一升瓶買っちゃおうぜ!」
酒を飲みもしない僕が、飲む残り4名をたきつける。「4名なら一人2.5合だ!宿のご主人にもふるまったら、一人2合程度だ、飲めない訳がない!」なんて言う。無責任だ。
いやちょっと待て、我々がさっき見た「越後で候」は青ラベルだったけど、ここには赤ラベルがある。なんだこれは。誘惑がいっぱいではないか。
後で知ったのだけど、青ラベルの「越後で候」は10月から3月の限定販売で、赤ラベルは12月限定なのだそうだ。赤ラベルの方は純米吟醸の生酒。
紛らわしいのが、通年発売の「魚沼で候」というお酒もあるということ。そして、「越後で候」には、先ほど試飲したような熟成古酒もある。
こんがらがるので、お買い求めの際はきっちりメモって、どうぞ。
先ほどの試飲コーナーでは1年古酒をお試ししたのだけど、ここには2年古酒が売られていた。
「まじか!1年古酒があれだけうまかったんだから、2年古酒の方がもっとうまいかもしれん」
と、2年古酒を1升、お買い上げ。
飲みきれなかったらどうするんだ、という心配はこの時点で全くしていない。飲み残しの一升瓶を抱きかかえて、東京に戻る気か?
一方、お酒を飲まないおかでんの買い物かごも色とりどり。
飲み助たちが「わー、2年古酒だー!一升瓶だー!」と盛り上がっているので、嫉妬に狂い咲いてしまい、ついあれこれ買ってしまった。重い重い、全部これ、液体だぞ。そして今晩飲むわけじゃないので、全部東京に持って帰るものだ。どうするんだよ、こんなに買って?
クリーミー豆乳はぜひオススメしたい逸品。単なる豆乳っちゃあ豆乳なんだけど、えぐみが若干あるようなことは全くない。甘みが感じられ、大好きだ。東京でも気軽に手に入ればいいのに、と思う。
「贅沢あまざけ」は先ほど試飲させてもらって、買うことを決めたもの。通常のあまざけよりも甘い。ちょっとくどい気がするけれど、まあ、その場の勢いで買っちゃった。
乳酸菌入りのあまざけは・・・後で自宅に戻ってみて、近くのスーパーで売っていることに気がついた。作戦しっぱい。
15:45
「折角なので、もうちょっと寄りたいんですけどいいですか?」
みんなにお願いして、「魚沼の里」の別の施設に立ち寄らせてもらった。
昨年も訪れた「つつみや八蔵」。
本来は、お酒を贈答用に包むための風呂敷とか熨斗を売っているお店だけど・・・
昨年、ここで買った山椒七味がめっぽう美味かったのです。香り高くて、うっとりしたものだ。
東京でも買える場所がないか?通販をやっていないか?と探してしまったくらい気に入ったのだけど、どうも売っていないようだ。なので、ここで改めて買うことにした。
ついでに、柚子七味も。
飲食店なんかで、何気なく料理に振りかけた七味が美味かった時って、「あれっ!?」と嬉しい気持ちになるよな。時には、唐辛子が茶色くなるまで古くなっているものがあるけれど。
15:53
「つつみや八蔵」のすぐ近くに、また別の建物がある。
何度も繰り返して書いているけど、本当にここの施設は点々と散らばっていて、「せっかくだからあっちの施設にも寄ってみよう」という微妙な距離感がある。あんまり遠いと面倒臭くなるのだけど。
この建物は、「菓子処さとや」というらしい。昨年は訪れていなかったので、初訪問だ。
二階には喫茶スペースがあって、一階がお持ち帰り用のお菓子売り場になっている。
どうやら、自家製バウムクーヘンが売りらしい。麹を使ったり米粉を使っているのだろうか。
あ、違った。すいません前言をさっそく撤回。
ここのバウムクーヘン、小麦粉製だった。バウムクーヘンの表面に降り掛かっている白い粉(グラス、というらしい)は、八海山大吟醸を使っている。
その名も、「八海棒夢(はっかいばうむ)」。すげえ、「喧嘩上等!」みたいな感じで、すぐにゴメンナサイしちゃいそうだ。
そんな威厳のある名前だけあって、お値段はそれなりにする。そして、パッケージも堂々たる風貌。贈答品向け、ということなのか。
写真の中央にある箱なんて、中のバウムクーヘンがレーシングカートのタイヤサイズくらいあるんじゃないか?というデカさ。どうするんだよこんなにデカいの。ウェディングケーキのかわりに「バウムクーヘン入刀!」ってできるぞ、これを積み重ねたら。
今日の僕たちは、すっかり八海山ブランドを信頼しきっていた。社員食堂で満喫し、パンを買い、雪室でお酒やら甘酒を買い、七味を買う。もちろん、ここではバウムクーヘンを買う流れになるのだろう。きっと。たぶん。
あー、でも重いな、一人でそんなにはいらんな。値段もびっくりする価格だし。
小さく刻まれた、一回で食べきれるサイズでいいや。
・・・と思ったら、みんながやいやい横やりを入れてくる。
よこさんが
「隊長、本当にそれでいいんスか?後で後悔するんじゃないですか?」
なんてニヤニヤしながら言ってくる。
「そのサイズだったら、どこにでもある感じじゃないですかー。やっぱり、大きいバウムをドカンと買ったほうが、満足感って高いと思うんですよ」
なんてぇ無責任な。でも、図星過ぎてぐうの音もでねぇ。
「やめろやめろ、こんな重たいものを持って帰りたくないし、バウムクーヘンに千円以上を払うというのはありえん」
さらにおやびんが助太刀をしてくる。
「でもおかでんさんだったら、3日もあれば食べきるでしょ。すぐですよ、すぐ。食べ終わった後、『ああ、もう少しあった方が良かったなあ』って思うはず」
なんて言う。あああああ。
せめてもの抵抗として、「八海棒夢」よりも安いバウムクーヘン、「さとやバウム」に手を伸ばす。
さとやバウムは、いわゆる普通のバウムクーヘンの形をしている。丸い。一方の「八海棒夢」はデコボコしているし、大吟醸の白い粉が降り掛かっている。発酵バターを使っていたりアーモンドが使われているので、そもそも全く違うバウムクーヘンだ。
そうすると、よこさんから
「いやー、後悔すると思いますよ。八海棒夢はどんな味なんだろう、って。こっち方が良くないっすか?」
図星過ぎて辛い。誰か止めて。
女性陣二人がかりの「高いの買っちゃいなよ」アピールに負け、結局ぶっとい八海棒夢を買ってしまった。しかも、輪切りのやつ。
カットされたやつを買おうとしたのだけど、「やっぱり輪切りじゃないと」とみんなにけしかけられ、「お、おう」と言いつつ輪切りを。正確な金額は覚えていないけど、3,000円前後したような気がする。うひゃー。
なんだなんだ、やたらと散財している気がするぞ。僕はあくまでも新潟にレースをしにきた筈なのに。
重たいバウムクーヘンをぶら下げ、「さとや」を後にする。
ガラス越しに、八海棒夢を焼いている工房が見えた。
高いバウムクーヘンを買った高揚感とか満足感、ってのはあんまりなかった。「やってもうた」感の方が強かった。
でも、家に帰って食べたら、案の定めっぽう美味かった。で、これまた案の定、あっという間に食べてしまった。さすがに「3日」ということはなかったけど、5日ほどで。いかんなあ、太るなぁ、と「やってもうた」感に浸りながら。
(つづく)
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