ライトかつエレガントな縦走【金時山】

11:26
階段を登っていく。

登った先に空が見える、というのが嬉しい。なんだかもう、山頂に到着たかのような気になるからだ。

お得じゃん?

「お得」という言葉を登山で使う時点で何か違和感があるが、実際そういう気分だ。

ついさっきまで東京にいて、バスに揺られていたはずなのに。もう、別天地の雰囲気だ。

11:27
って、あれ?

「階段の先に空が見える」というのはなるほどその通りで、草木が生えていない一帯に行き当たった。

オカルト好きだった昔なら、こういう光景を見ると必ず「UFOが着陸した跡だ!」と大喜びしていたはずだ。しかし時は流れ、「UFO?なんだよバカバカしい」と冷笑するようになってしまった。悲しい。

老化、というのは肉体的な変化よりも、むしろ思考の硬直化と「変なもの」への許容度の減少という形で現れるんだと思う。

もっとも、UFOに関しては、矢追純一という稀代のストーリーテラーが表舞台から消えてしまったことにより、UFOというファンタジーを紡ぐことができる人材がいなくなってしまったのだと思う。それと入れ替わりに、CGを使った嘘くさいUFO動画がたくさん出回り、余計オワコン化していった。

この何故か草木が生えていない場所は、「長尾山」という山の山頂だった。

えっ、山頂?そんなに登りつめた感じはしないのだけど。

でもまあ、山頂というのは標高がどうであれ、気持ちが良いものだ。

とはいえ、さすがにここでガッツポーズをとって記念撮影、という気分にはならなかったのでパス。そのまま、休憩もとらずに通過した。

ちょうど体がイイカンジに温まってきたところだ。ここで休みたくはない。

11:29
ここからは、しっかりした土の広い道になる。なだらかで、まるで平地の中にいるかのようだ。

でも、実はこれもカルデラの外輪山の一角。不思議なものだ。

11:33
木々の隙間から、仙石原方面がよく見えるのでチラチラ見ながら歩く。

はるか彼方に、外輪山の山々が屏風のように連なっているのが見える。箱根の山、一帯どれだけデカかったんだ?

「富士山が噴火したら、東京マジ終わる」とか言われているけれど、富士山の近くにある箱根がこの有様だ。もし富士山がこれだけ吹き飛ぶことがあったら、もう日本オワタと言って過言ではない。

庵野秀明は、「シン・ゴジラ」で東京破壊を描いたけど、その勢いで「シン・フジサン」も作ってほしい。ただし、火山が人類の敵、という設定だと、映画としては勝ち目のない戦いすぎてエンターテイメントにならないかもしれない。

ここはやっぱり、マッドサイエンティストが悪役として現れて、「俺がこのスイッチを押せば、富士山は爆発するぞ!」「待て!やめるんだぁぁぁぁぁっ!」というやりとりを映画のクライマックスで持ってくるか。うわあ、陳腐。

11:36
おっ、正面ににょっきり出っ張った山が見えてきた。

カメラのレンズをズームにしてみると、山のてっぺんは平らで、そこに茶店があるのが見えた。

あれが金時山か。

11:37
登山道に、こんな警告が出ていた。

ハイカーの皆さんへ
金時山は、昔は猪鼻嶽(いのはなだけ)と呼ばれた急峻で岩場の多い山です。特に頂上付近の尾根筋では、コースの両側が切り立った深いガケで、大変危険です。
コースをはずれたり、走ったり、ふざけたりは絶対にしないで下さい。
箱根町

金時山が人気なのは、この「山頂がにょきっと突き出ている」山容にもある。どこから登っても最後は鎖場や急坂で、どの登山ルートから登っても楽しいのだという。

それにしてもイノシシの鼻にたとえられている山、というのは初めて聞いた。確かに言われてみるとそうだ。

11:46
このあたりは、最後の「イノシシの鼻に登る」手前で、不気味なまでに穏やかな水平移動となっている。

11:48
進行方向右手、南側の展望が完全に開けてきた。

こりゃあいい!こんな絶景を眺めながらの登山って、最高かよ!

芦ノ湖が見えてきたぞ。

(つづく)

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