森林限界突破の恍惚【日光白根山】

10:06
永井食堂でもつ煮定食を食べた以上、今更「じゃあこれから山に登りましょう」とはならない。たとえ天気が晴れたとしても。

標準コースタイムは4時間10分となっていて、あながち午後からスタートでもワンチャンあるんじゃないかと思わせる塩梅ではある。しかし、そこまで無理して今日中に山頂踏破する必要はないので、ゆっくり過ごすことで腹をくくった。

何か道中で面白そうな立ち寄りスポットはなかったっけ?と思い返してみたら、「迦葉山(かしょうさん) 弥勒寺」のことを思い出した。以前僕はここを訪れたことがあるけど、巨大な天狗に驚いたものだ。

その話をしたらみんな面白がったので、行ってみた。

迦葉山はたんばらスキー場に向かう途中にあり、日本百名山・武尊山(ほたかやま)の西側に位置している。

曹洞宗のお寺だけど、天狗伝説がありこのお寺は天狗を大々的に打ち出している。

ほら、麓にして、グイグイと迫ってくる天狗の看板が。びっくりして、思わずハンドルを切りそびれて道路の側溝に脱輪しそうだ。「100m左折」と言われても、怖くて思わず右折してしまいそうでもある。

巨大ろうそくが2本、道路を挟む形で配置され、「歓迎」と書かれている。どうやら、怖いけど歓迎してくれているっぽい。

10:10
細い車道が、お寺へと導いてくれる。道が狭いので、一方通行だ。下りは別のルートがある。

途中、歩きの人向けの参道が車道の傍らに見えた。修行の場として、歩きで弥勒寺を目指す人が今でもいるのだろう。

20180616-01

10:19
山の中腹にある、弥勒寺に到着。一応登山道マップの写真を撮っておく。あるかないけれど。

10:21
霧雨の中、弥勒寺に到着。

白いろうそくがものすごく派手に見える。「奉納・百萬燈」と書かれている。お寺というのは、茶色っぽいイメージが強いので、いきなりこういう「白!赤!」という色を見るとギョッとする。見慣れないんだな。

奈良県・薬師寺の西塔が1981年に再建されたとき、昔の色彩で再現された。それは国宝で730年に建立された東塔とは違う、白と朱がくっきりとしたものだった。それを見た僕は、「なんだか仏教っぽくないな」と思ったものだ。違う違う、本来仏教ってのはこんなのだったんだ。

いつの間にか、「古めかしいことが仏教だ」みたいな認識になってしまっているけど、それは違う。

ああそうそう、ろうそくはともかく、このお寺は金剛力士像がいるように見せかけて、カラス天狗が参道の両脇を守っている。

10:24
拝殿入ってすぐのところに、巨大な天狗のお面が2つ、こちらを睨みつけている。参拝者は、このギロリとした視線に耐え、「自分は悪いことをしていません」と身の潔白を唱え続けないといけない。

それにしてもどうしたらこんなに大きなお面が作れるのか。そして運べたのか。軽トラじゃ乗らないぞ、このサイズ。

10:26
特徴的なのが、拝殿に「お借り面」という天狗のお面がたくさん置いてあることだ。赤い海になっている。

右側のほうは、同じ型で作られたものなのだろう、天狗が積み重なっている。天狗、鼻高々。

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この「お借り面」の段取りはこうだ。

・1枚を借りて帰る。
・そうするとご利益がある(断定口調)。
・翌年は借りたお面を返却する。その際、お礼参りとして、もう一枚天狗のお面を持参し納める。
・次のご利益に向け、ワンサイズ大きな天狗のお面をお借りする。
これを繰り返す。

年利100%の利息をつける(お面を1枚追加する)という条件でお面を借りて、ご利益を得るという仕組みだ。

どこかの観光地の土産物屋さんで買った天狗のお面じゃダメらしい。この山の麓にあるお面屋さんで買え、と具体的な指定があった。地産地消。

自宅でこんな天狗のお面を飾る場所なんてないよ・・・と思うが、「神棚(又は仏壇)」に飾るのがよいそうだ。神でも仏でもどっちでもいいのか。微妙にアバウトだ。

ご利益を得る都度、毎年大きなものに買い替えていくというのは東京の「酉の市」で売られている熊手がそうだ。ただし熊手は職人さんから「買う」ことになる。しかしこちらは毎回「貰える」。お返し面をお寺指定のお店で買う必要はあるけれど。

そのお返し面だが、大迫力の状態で並べられていた。サイズが大きくなると、白ひげや眉、髪の毛が植毛されたお面になるのだな。怖さが増す。

大きなお面が奉納されている、ということは、ご利益を毎年毎年ゲットし続け、奉納が繰り返されているということなのだろう。その行き着いた先が、天井から吊るされている超巨大なお面。一体どんなご利益があったというのか。地球征服をしたくらいのことはやっていそうだ。

その天狗面のあまりのインパクトに、思わず自販機のガラにもなってしまっていた。こえー。

10:59
次に訪れたのは、永井酒造という清酒の蔵元。

遠くからでも、体育館のような大きな建物と、その建物に「水芭蕉」と書かれているので目立つ。

蔵見学は事前予約制で、曜日が限定されている。土曜日は対象ではないので我々は直売所に行くしかない。今晩、宿の部屋で飲む酒をここで探すことにした。

カフェも併設されている直売所。

この酒蔵は「水芭蕉」と「谷川岳」、2つのブランドの酒を醸している。

水芭蕉のほうが若干高級路線なのだろうか、吟醸酒の種類が豊富にある。

11:04
一部の特殊なお酒を除き、ほぼ全ての種類のお酒を頼めば試飲させてくれる。太っ腹だ。「単に飲まれておしまい、試飲させ損」とならない自信が、蔵元からはみなぎっている。

実際、僕を除く3名が試飲に試飲を重ね、「うーん、こっちもいいな」「でもあっちも」とさながら品評会のように「今晩の晩酌」選びに悩んでいた。

結局、まゆみさんちは「晩酌用」とは別に、「自宅持ち帰り用」としてもお酒を買った。それだけ気に入った、ということだ。さすが永井酒造。

(つづく)

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