森林限界突破の恍惚【日光白根山】

11:33

永井酒造で晩酌用のお酒のセレクトを終えた一行は、その近くにある「道の駅 川場田園プラザ」に立ち寄ることにした。

まゆみさんが言う。

「えっ、おかでんさん行ったことないの?うちら、このあたりに来たときはいつも立ち寄ってるわよ」
「そうなんスか?いや、そんなところに道の駅があるなんて、ぜんぜん気にしたことがなかったです」

不思議だ。僕は、急いでいる時以外は「道の駅を見つけ次第立ち寄るのがジャスティス」という考えを持っている。多くの道の駅は画一的な作りで、今更ワクワクするような内容でなかったりもするけれど、時々「おやっ?」という発見があるからだ。

なので、「川場田園プラザ」というのを知らないというのはちょっと意外だった。おかしいな、ここは「利根沼田望郷ライン」という広域農道で、通ったことがあるはずなのに。

で、到着してびっくりですよ。

でかい!

道の駅、といえば、大小さまざまな規模がある。

東北の道の駅は完全制覇したことがある僕としては、道の駅の大まかな「こんな感じ」というのは理解しているつもりだ。

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しかし、ここはその「だいたいこんな感じ」を超越した、超巨大な施設だった。なるほど、だからむしろその存在に気づかなかったのか。デカすぎて、道の駅という認識ができなかったのだろう。

道中の看板に「道の駅」の標識が出ているはずなんだが、そんなことってあるだろうか。自分でも納得いかないけれど、そうとでも思わないと理解ができない。

何がデカいって、もう全てですよ。

屋内施設がいっぱいあって、庭も広くて、池もある。案内地図を見なくちゃ、その全貌がわからない。

建物は何棟にも分かれていて、全てを回遊しようとするとアップダウンのある庭を歩き、池を鑑賞するといった散歩が伴ってくる。

そうやって歩いていれば、自ずとお腹が減るし、喉だって乾く。そんなお客さんを見越して、食べるもの・飲むものにはまったく不自由しない作りになっていた。

だって、地ビールを作っていて、ブルワリーパブだってある。蕎麦屋も、ピザ屋もある。最高かよ。

「地獄」を表現して、「死後、こういうところに行きたくなければ現世で功徳を積みなさい」と説く仏教施設はいくつもある。でも、ここのように天国を表現して、「死んだあともこういういい思いをしたければ、今のうちにもっと功徳を積みなさい」と説くのも、人間モチベーションが湧くんじゃないかという気がする。

いや、「天国」を現世で提示しちゃうと、現世の天国で楽しく過ごしちゃって、堕落するか。

「現世の天国で過ごすためには、お金がかかるだろ?ずっと贅沢はしていられないだろ?でもな、死後の世界の天国は、お金がいらないんだぞ?」

と説くか。

なんだかすごく生々しいな。

山賊焼のお店。

山賊焼といっても、長野県界隈でよく見かける「りんごダレで漬け込んだ鶏肉を竜田揚げにしたもの」ではなく、

ミート工房で作った「ハム・ソーセイジ」を茹で上げ、アツアツの鉄板で焼いて完成!

ミート工房かわば

なんだそうだ。つまり、ハム・ソーセージの盛り合わせ。肉をごちゃっと盛り合わせているのがワイルドで、だから山賊というイメージなのだろう。

ところで「山賊」って一体どういう輩だったんだろう。なんだか、「山賊」とか「海賊」って、言葉としてはメジャーだけど、そのやらかしてきた歴史や悪行ってあんまり知られていない。特に「山賊」は、「山賊焼き」という名前のもと、平成のこの世では「おいしいもの、ニッコリさせられるもの」というイメージになってしまった。治安が悪かったころの山賊とは大違いのはずだ。

これが山賊焼。

「ライブの山賊焼」という看板が店頭に出ていたので、店先で肉をガンガン焼いている様子を道行く客に見せつけるのかと思った。でも実際に売られていたのは、ハム・ソーセージ詰め合わせだった。あれっ?

どうやら、「ライブ」というのはブランド名?らしい。「ライブの山賊焼」という商品名だった。

それにしてもうまそうだな、これで540円というのも食指が動く。要冷蔵品だし、明日夜の帰宅だし、購入は見合わせたけど。

危ないよな、道の駅って、ファーマーズマーケットがあって、野菜中心に売られていると油断していたら、ときどきこういうのがある。しかもお手頃価格で。

「山賊焼を買って帰らない?よかろう、ならばこの場で食べられるホットスナックを用意しよう」

と、お店はぬかりがない。欧風ラザニア、ドイツ風チャーシュー、オムボール、ソーセイジと夏野菜のキッシュ、八幡巻、ミートローフ。

どれも「おや?見慣れないな?」というものばかりで、見逃せない。アメリカンドッグとかコロッケ、メンチカツだったら「まあ食べなくてもいいや」という気になるのだけれど。

ただ僕ら、さっき永井食堂でもつ煮をお腹いっぱい食べた余韻がまだ残っていた。お腹が空いていなかったので今回はパス。もつ煮、腹にたまるなぁ。

道の駅川場田園プラザの公式サイトを後で見てみたら、トップページに「1日まるごと楽しめる 遊べる食べられる道の駅」というキャッチコピーがつけられていた。いやほんとそうだと思った。おそるべしだ。子供連れなら、ここの庭で子どもを走らせて疲れさせ、おとーちゃんおかーちゃんはカフェでくつろぐ、という過ごし方もありだろう。

ベーカリーもある、ジェラート屋もある、クレープ屋もある。

ピザ屋なんて、ちょっとした非日常感を味わうにはちょうどいい。

これで泊まることができたらもっといいよな、と思ったら、道路を挟んだ隣のエリアにはちゃんとオートキャンプ場があり、ホテルもあり、日帰り入浴施設もあった。なんという資金力。圧倒的ではないか。

イノシシやシカといったジビエ肉の缶詰がいろいろ売られていた。しょうゆ味、みそ味、かれー味、大和煮・・・。いいねぇ。

でもつくづく思った。道の駅は旅行最終日の、帰り道に立ち寄るに限る、と。「あとは家に帰るだけ」というシチュエーションだと、ついつい財布の紐が緩む。あと、要冷蔵品とか、重たくなるものを買うにしても気持ちが楽だ。一方、僕らのように今晩一泊する予定があり、明日は登山が控えているとなると「いいけど、ちょっと買う気にはならないな」となってしまう。別に、登山ザックに缶詰とか肉を背負うわけじゃないんだけどね。買ったものは車のトランクに置くので問題ないのだけれど、気分的な話。

ファーマーズマーケット。いろいろ野菜が売られている。こういうところにくるといつもワクワクするんだが、巨大な白菜を1玉買って、一人暮らしで持て余すとか、巨大なめこを買ったけどあっけなくカビが生えたとか、そういう事案が後をたたないので今回はパス。

旅行先の道の駅でなめこを買う → 帰宅後、疲れてその日は荷解きをしないまま寝る → 翌日は仕事 → 仕事から帰宅して、ようやく荷物整理 → 買ってきたなめこの存在に気づく → 調理はその翌日以降

ということで、買ってきてから食べるまで随分時間がかかるのだった。

これはなめこに限った話ではなく、なんでもそうだ。特に昔は「帰宅したらまずはビールを飲む」という生活だったので、後片付けはおざなりだったし。今はお酒をやめて几帳面な性格になったので、こんなことはない。

で、なめこは数日もしないうちにあっけなくカビが生えることに相当びっくりしたものだ。「菌でできた植物なのに、カビが生えるのか!」と。

レストランのメニューも、侮れない。

「とりあえず厨房にとってラクそうな、定番メニューをラインナップしましたよ」
という感じのお店と、やたらと気合が入ってその分お値段も高いお店と、この手のお店には両パターンある。でもこのお店はその中間で僕にとって心地よい。

とはいえ、ネーミングがすごい。

「焦がしにんにくのマー油で炒めたチャーハン」
「ホテル仕込みのカツカレー」
「旨辛!ピリ辛肉みそのまぜそば」

などと、つい食べたくなるような料理名がつけられている。誰だ、この施設はプロのしわざだ。素人が「良い商品さえ提供すれば客はついてくる」とばかりに売り出したものとは違うぞ。

今晩の晩酌用お酒とつまみ、そして登山用品。それら4人分を詰め込んだら、ホンダフィットのトランクはいっぱいになってしまった。ゴミ収集車みたいだけれど、ゴミは一つもないぞ。

さて、ここから東に向けて旅立とう。目指すは、栃木県。

(つづく)

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