今回ののっとれ!ツアーでは、珍しく観光的要素が入っている。「日本三大渓谷」の一つとされている、清津峡に行くルートにしてみた。
「魚沼の里」にいた我々からすると、随分と越後湯沢方面に逆戻りした場所にある。しかも山の中だ。
てっきりこの季節は雪に閉ざされ、休業中だと思っていた。なにせ「渓谷」だ。日が差さない、奥深い谷にあるからこそ渓谷なのであって、豪雪地帯の渓谷ともなればアクセス道路さえも封鎖されているのだと考えていた。
しかし、のっとれ!の現地で毎年合流しているメンバー、もぐさんから「清津峡はいいですよ」と教えてもらった。それで初めて、えっ、冬でもやってるの?と知った次第。
なんでも、「越後妻有 大地の芸術祭」のアートがそのまま展示されているのだという。詳細は行ってみてのお楽しみで、事前に情報は仕入れないほうがいいですよ、と教えてもらった。なにそれ。そこまで言うなら行ってみなければ。
確かに教えて貰ったとおり、清津峡への道は通じていた。
そもそも清津峡は、越後湯沢方面から津南方面に抜ける主要道、国道353号線の近くにある。国道353号は大事な道なので冬でも除雪しているのだろう。その恩恵で清津峡も冬にアプローチできると思われる。
「なんだ、路面が見えてるくらいに雪がないぞ」
なんて言って駐車場に車を停めた我々だけど、道路脇には猛烈な雪が残されていた。なにこのバウムクーヘンみたいな雪。降っては積り、積もっては振りを繰り返すと、雪が降った日の数だけこんな年輪風な地層ができるのかもしれない。
うずたかい!
除雪していなかったら、この高さまで雪があるというわけだ。
清津峡の駐車場から渓谷入口までの間には、小出温泉と呼ばれる温泉宿数軒がある。この冬でも営業をしていて、ちょっとびっくりする。
清津峡はこの雪の大谷の奥。
雪が降るたびに、清津峡の職員さんはこの道を雪かきしないといけないのだから大変だ。
ここが清津峡。護岸工事なんて当たり前だけどされていないので、崖が川に迫っている。もちろん、雪もどっちゃりだ。
お金を払うのが惜しい人は、ここで「なるほどこれが清津峡か」と納得して引き返したっていい。はっきり行って、ここから先に進んでも、見える景色というのはさほど変わらない。そもそも、渓谷というのはそこまでエキサイティングな景色という性質のものではない。「滝」ならばまだしも。
崖に囲まれた川沿いに歩道なんて作る余裕はない。なので、ここから先はトンネルということになる。
清津峡を観光する、ということは、それすなわち「ひたすらトンネルを歩く」ことだ。トンネルをてくてくあるくのがたのしい、と思える人ならばいいけれど、「大自然に包まれて時間を過ごしたいわァ」みたいなことを考えている人はがっかりするだろう。
ここは、自然を見る場所というよりも「トンネルという、近現代の土木工事技術の成果を見る場所」だ。
同じことが、日本三大名瀑の一つ・茨城県の袋田の滝でも言える。あれも、滝を鑑賞するというよりもトンネルを歩く印象が強く残る。で、トンネルを歩いた先、ようやく外に出た!と思ったら、滝が目の前にありすぎて、ちょっと目のやり場に困るしいまいち迫力がないと感じてしまう。
清津峡渓谷トンネルは、ご覧の通りやたらと長大だ。
渓谷沿いに、崖の中を貫く形でトンネルは作られていて、途中3箇所に「今こんな場所を通過中です」という空気穴的な横穴が掘られていて、最後突き当りにも外を見られる場所がある。
なので、渓谷沿いに歩くという機会はゼロだ。清々しいまでに、トンネル歩きしかしない。
ちなみに入場料は大人600円。
秘密基地感があって楽しいのだけど、結構な距離があるのでそれなりの覚悟と準備でどうぞ。
階段はないけれど、当然川の急流に沿っていかないといけないので、トンネルも上り坂だ。
昔っから青いランプだったかどうか、記憶がない。これがおそらく、「大地の芸術祭」でしつらえたアートの一環なのだろう。
青いランプエリアの奥は、どきっとするようなオレンジの明かりゾーンに切り替わる。
ここが大自然の真っ只中にいるとは思えない。そりゃそうだ、コンクリートと人工的な明かりしか見えないんだから。
一番目の「息抜き用の横穴」。
こんな感じで、メイントンネルからちょこっとそれる穴があり、それは外につながっている。まさに渓谷の横っ腹にずどんと穴が開いている状態。
その横穴から渓谷を見ると、こんな感じ。
岩の形が独特の筋張った形をしていて特徴的だけど、何ていう名前の岩だかは忘れた。
目の前に迫る大迫力の自然!圧倒的な岩のインパクト!と言いたいんだけど、袋田の滝同様に目の前に迫りすぎていて、むしろ目のやり場に困るパターン。
俯瞰できないので、困る。
二番目の横穴にたどり着いてみたら、何やらシルバーの建造物が置いてあった。なんだこれは。
近づいてみると、これがトイレであるということがわかった。これもアートの一種なのか。
なんだか違和感が強すぎて、いいとか悪いとか、コメントのしようがない。
トンネルという、人工的な建造物の中に、さらに人工的な建造物が入るというメタ構造なのだろう。しかも、つるつるのピカピカで、そのトンネルの景色を反射して映している金属の外壁は、直線的かつ機械的なトンネルを敢えて歪んで見えるように作られていて、何やら奥が深そうだ。
深そうだ、というところで思考停止。これ以上考えなかった。次にいこう、次に。
時間があまりない。ここの終了時間が17時ということもあるし、このあと津南~松之山温泉~松代を経由して、さらに遠くの上越市の宿まで向かわないといけない。悠長にはしていられないのだった。
と、言いつつ、どんどん地底深くのトンネルを歩いて奥を目指すのは、なんだかシュールだ。
たぶん岩の成り立ちとかを達人に解説してもらいながら、この景色を見ると趣深いのだろう。何やらいわくありげな形をしているぞ。気にはなるけれど、これ以上はよくわからない。
(つづく)
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