吊尾根の下の、一つ屋根の下で【上高地デュオキャンプ2019】

15:28
アルピコ交通上高地線で新島々駅に到着してみると、何やら騒々しい。いつもはがらんとしている駅前だけど、今は人が結構いる。しかも、なにやら「やることがなくて立ち尽くしている」感じの人ばっかりだ。

何事だろう?

新島々駅は、上高地行きのバス始発駅であるばかりでなく、乗鞍高原、白骨温泉に向かうバスの始発駅でもある。そして、飛騨高山や新穂高温泉郷に向かうバスの立ち寄り地でもある。

とはいえ、電車が到着したときだけ人がわっと集まり、そのお客さんがバスに乗っていなくなると閑散とする場所だ。

いつも僕がここを訪れていたのは、GWだった。ひょっとしたら、今日みたいに7月ともなれば人がこのように増えて当然なのだろうか?

15:43
いや違うぞ違うぞ、何やら道路がどえらいことになっている。

松本から平湯温泉、さらには高山まで抜けていく国道158号。一本道なので、上高地に向かう際は必ず通る道だ。そこが大渋滞になっているのだった。

右から左、見渡す限りに車がびっしり。しかもそれが身動きしていない。えらいことだ、事故渋滞だぞ。

バスターミナルのスピーカーからは、この先で観光バスと乗用車がすれ違いで事故を起こしたこと、復旧と現場検証のため運行再開までしばらく時間がかかること、時間はまだ未定であることが告げられた。

えー。

一体どれだけ時間がかかるんだ。

だって、現場検証しようにも、パトカーが現地にたどり着けるのかどうかかも心配だ。なにせ道がこの一本しかないのだから。さすがに「すまん、長野側からは現場にたどり着けないので、岐阜県警さんかわりに現場を任せた」というわけにはいかないだろう。だいたい、ここからは見えていないだけで、事故現場から岐阜県側も同じように大渋滞を起こしているはずだ。

15:49
さあ困ったね、困ったけど仕方がない。今さら「諦めて松本に戻ろう」という選択肢はない。

でも心配なのが、上高地に到着できたは良いもののキャンプ場の受付が閉まっていたり、売店が終わっていて食料調達ができないことだ。

今回この旅行に同行するいしは、寝袋を持っていない。僕の寝袋を使ってもらう計画だ。そして僕は現地で毛布を借りて、毛布にくるまって寝る予定だ。ついでに、ウレタンマットを借りることも考えている。これまでのマットは一人寝のサイズだったからだ。

もし今日、営業時間内に受付ができなかったら、僕は冷気が地面から上がってくるのを感じながら夜中を過ごすことになる。二人で一つの寝袋をシェア?いや、いくら結婚前の情熱的な時期だからって、それはさすがに無理だ。気合いの問題ではなく、物理的に寝袋に入り切らない。

復旧するまでの間、暇なので道路向かい側にある旧・島々駅舎を移築したものを見に行ったりして時間を過ごす。

15:48
順次運行を再開する、というアナウンスがあったので列に並ぶ。

上高地に向かう人だけでなく、乗鞍、白骨に行く人達全員が途方にくれている。

僕はというと、上高地初体験だといういしに「初日、徐々に薄暗くなっていく上高地と岳沢の絶景っぷり」を体験してもらいたかった。しかしどうやらそれは無理そうだ。むしろ、日暮れ前に上高地に到着できるかどうか、だ。今が夏至直後で、一年で日が長い時期で良かった。

15:56
バスがやってきた。上高地行きはバス1台で乗客全員を収容できないため、3台くらい連なってやってきた。

16:23
バスは隊列を組んで出発。しかし、直接上高地には行かず、いったんさわんどバスターミナルで下車して次のバスに乗り換えてくれ、と言われた。このまま上高地に突撃すればいいじゃないか!と思うが、そうはいかない事情があるようだ。

どうやらこのバスには乗鞍高原や白骨温泉に行くお客さんも一緒に乗っており、さわんどバスターミナルまで移動したのち、各方面にお客さんを割り振るつもりらしい。

17:47
道路の往来が再開したとはいえ、一度道路にぎゅうぎゅうに詰まったクルマがスムーズに流れるようになるまでは相当ギクシャクするようだ。ストップ&ゴーを繰り返す。

新島々から沢渡、平湯温泉に至るまでの道は片側一車線で細く、トンネルが多くて急カーブもところどころある。道路改良で昔と比べると随分マシになったが、それでもトンネル内にY字型の分岐路があったり、90度に道が曲がるような場所が残されている。

乗用車だけの往来ならさほど問題はないのだけど、大型の観光バスやトラックも行き来する道路だ。急なカーブを大型車が通り抜ける都度、対向車が減速してやり過ごさないといけない。そういうのが積み重なると、大渋滞になる。

渋滞ならまだいい。今回のように、対向車とぶつかって事故も起きる。事故れば、上り線下り線ともに麻痺だ。

1時間半近くも時間をかけ、ようやくバスはさわんどバスターミナルにやってきた。

ここは、パーク&ライドで上高地入りする人が利用するバスターミナルで、マイカーの人ではない僕にとっては無縁の場所だ。まさか今回、こんなことで初利用するとは。

バスターミナルには、路線バスを担っているアルピコ交通ではない、別の会社のバスが停まっていた。さわんど~上高地のシャトルバスだという。

17:48
一部のお客さんは、「白骨温泉行き」と表示されているバスに乗り換えていった。

僕らは上高地行きのシャトルバスへ。

18:04
大幅に到着予定時刻が遅れた状態で、ようやく釜トンネルにたどり着いた。このトンネルをくぐれば、上高地だ。ようやくだ。

トンネルの入り口を撮影することには何の意味も記念的価値もない、とわかっていても、毎回撮影してしまう。

一方のいしはというと、バスの中でずっと寝ていた。そりゃそうだ、仕事終わりの徹夜明けだから。

とはいえ、「上高地の熟練者」っぽい振る舞いをしたい僕としては、「ほら!右を見て。あそこにダムがあってね」とか、「左側に温泉が」とかあれこれ言いたい。言いたくて仕方がない。そして、「上高地は環境保護のためにパーク&ライドの仕組みが導入されていて」などとあれこれ解説したい。

うつらうつらしているいしに無理やりレクチャーを施してみたが、結局睡眠学習にさえならなかったようだ。後で復習をしてみたら、ことごとく覚えていなかった。

(つづく)

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20

コメント

コメントする

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください