吊尾根の下の、一つ屋根の下で【上高地デュオキャンプ2019】

18:22
上高地バスターミナルに到着したのは、18時をとうに過ぎた時間だった。

谷間に位置する上高地は既に日没していたけれど、まだ昼間の余韻で明るいので助かった。これが毎年のようにGW時期の来訪だったら、もうヘッドライトの準備が必要な頃合いだ。

夏だったから助かった。

この時間に上高地を訪れる人はさほど多くない。少なくとも日帰り観光の人は、時間的に無理だ。なにせ、19時に釜トンネルが閉鎖され、翌朝までゲートがクローズしてしまう。現地滞在する時間が残されていない。

なので、訪れた人は僕らみたいなキャンプ客と、上高地界隈の施設スタッフと思しき軽装の人が中心だった。

18:28
河童橋と、岳沢。そして奥穂高岳から前穂高岳につながる吊尾根。

2ヶ月ぶりの姿。全然久しぶり感がないけど、やっぱりこの光景は嬉しいものだ。スペシャル感が半端ないし、そんなスペシャルを「よっ、また見に来たよ!」と普段使いの感覚で愛でることができる自分に対して、嬉しさを感じる。

本当なら、上高地初登場のいしに対してここでクドクドとレクチャーしたかった。山の説明を一通りやったり、梓川の説明をやって、そこから河童橋だのその界隈の施設だの・・・まあ、オタクが早口で自分の知識を喋り倒す、まさにあれをやりたかった。

でも、さすがに時間がそれを許さない。おい、もう18時半だぞ。

これから先、受付を済ませ、レンタル品を借り、テントを設営し、荷物を整理し、風呂に入り、食材などの買い出しをし、夕ごはんを作って食べるところまでやらないといけない。やることがいっぱいある。少なくとも真っ暗になる前にテントの組み立てが終わっていないとしんどいので、急がなくては。

上高地および河童橋の解説は明日朝、ということにして河童橋をスルー。

18:30
河童橋のたもと、五千尺ホテルの一階のお土産物コーナーを駆け足で見て回る。

いしが黄色い声を上げて、「すごいすごい」と言っている。いろいろなお菓子が売られているからだ。五千尺ホテルはオリジナルのスイーツ製造に力を注いでいて、アップルパイなどがあった。

そうか、女性目線だとそういう商品に目がいくのか。

今更ながら新鮮な発見だった。上高地に何度も通っていたとしても、「甘いもの」に全然関心を向けていなかったことに気がついた。いや、甘くても安いならいいぞ?断酒して以降、これまで全く口にしなかった甘いものも全然平気になったからだ。でも、1,000円以上するようなケーキ、ともなると自分の守備範囲外だと即座に判定し、自分の脳には情報が入ってこなくなるらしい。お土産もの屋さんにそんなものが売られていたことすら、ほとんど認識できていなかった。

18:33
わっせわっせ、と小梨平キャンプ場に向かう。

さすがにこの時間ともなると、人の往来はほとんどない。ふだんは朝早くからひっきりなしに人が行き来する道なのだけど。

さすがに今から山を目指す人はいないし、下山してくる人もいない。下山したって、今から乗れるバスが存在しないからだ。バスターミナル周辺でビバークするのは許されるのだろうか?たぶん堂々とテントを張ったら排斥されるはずだけど、「行き場がないんです。バスがもうないので、寝泊まりする場所がないんです」といえばひっそりと寝袋で寝るくらいなら許してくれるんじゃなかろうか。

18:37
小梨平キャンプ場の受付。

こんなに人がいるのか!と驚く人口密度。

まさにこれからテント泊の受付をやる人、風呂に入るためにお金を支払っている人が大勢いる。

僕らと同様、バスの遅れによって到着がこの時間になってしまった人も当然いる。

18:39
それにしてもありがたきはハイシーズンよ。

登山界隈は、海の日三連休あたりからお盆までがハイシーズンとなり、もっとも人で賑わう。普段は運行されていないバスが、山奥の登山口まで運行されたりもする。そして山奥の山小屋でも、大学医学部がボランティアで期間限定の診療所を開設する場合もある。

そして、今回この小梨平もまさにハイシーズン仕様。GWのときとうってかわって、結構遅くまで營業されていて本当に助かった。ちょうど今日(7/13)からハイシーズンだった。もし前日上高地入りで、しかも事故で道路がふさがっていた場合、この時間の到着だと受付が終了していたかもしれない。そうなると、もう僕らは路頭に迷うしかなかった。

食堂はラストオーダー18:20で19:00終了。売店も19時終了。風呂は19:00受付終了で19:30終了。なんて便利なんだ。オートキャンプ場かよ!と思わず叫びたくなる。だって、GWのときなんて、食堂で夕ごはんを食べようと思ったらラストオーダー17:20だったんだぜ?僕は「さすがにそれはちょっと」と思って、夕ごはんを自炊していたくらいだ。

それはそうと、營業してくれていてありがとうとお礼を言いつつも時間が残されていない。あと20分で売店の買い出しを済ませ、風呂に入らないといけない。テント設営は風呂の後だな、こりゃ。結局真っ暗な中でテント設営になりそうだ。

受付を済ませると、日清食品のレトルト食品「カレーメシ」を2つもらえた。

なぜこれが無料配布されたのか、理由はわからない。試供品を配布してファン層を広げよう、ということなのだろうか。でもこれ、試供品ではなくしっかりしたフルサイズのものだ。ありがたい、一食浮いた。

売店と食堂はもう閉店の構え。シャッターを締め始めている。

いちおう、「OPEN」の札が店頭に出ているけれど、入り口部分だけシャッターをしめないでいる、という逃げ切り体制に突入。早く買い出しをしておかなくちゃ。

18:44
売店でひとまず今晩食べそうなものを買う。

「こんなにいろいろ売っっているんですか!」

といしが驚く。本当は、ここでどういうものが売られているかをじっくり見てもらって、欲しいものを吟味する時間を用意したかった。そういう時間があればあるだけ、「山奥なのに充実しまくった小梨平売店」の凄さを実感できるだろうし、この空間にワクワクしてもらえるはずだ。

僕はともかく、いしはキャンプの趣味は特に持っていない。旅館やコテージと比べて不便で快適とは言いがたいキャンプ生活を、できるだけ愉快に過ごしてもらいたい、と心底僕は願っている。そうすることで、「次またキャンプに行きたい!」と思ってもらえるからだ。グイグイと修行のようなつらいキャンプを強制し、「この不便さこそ醍醐味!」と強制すると、次がなくなってしまう。

そんなわけで、小梨平売店の充実っぷりをいしに是非実感してもらいたい。・・・けど、時間がないんだよ時間が。あの事故のせいだ。

しょうがないので、ばばばっと買い物かごに商品を入れて、とっととお会計に向かう。

「山男の涙」っていうお酒があるんだな。無濾過純米吟醸。50本限定販売だそうだ。へー。

18:48
本日の戦利品。

「コアラのマーチ」を買うあたり、これまでの自分ではない感じがしてしみじみする。だって、僕一人の上高地キャンプだと、チップスターとか柿の種だからな。

(つづく)

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20

コメント

コメントする

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください