吊尾根の下の、一つ屋根の下で【上高地デュオキャンプ2019】

08:26
テントサイトでコーヒーを飲んだあと、改めて朝ごはんを食べに出かける。選択肢はキャンプ場内にある「小梨平食堂」かバスターミナルにある「上高地食堂」の二択になるけれど、今回は上高地食堂を選択した。

今日このあと、特にやることはない。ソロキャンプが二人に増殖したからといって、特別にやれることなんて上高地にはない。ただひたすら、歩くか、のんびりするしかない。なので時間感覚も適当だ。

たぶん今日はこのあと、明神にある「カフェ・ド・コイショ」に行ってコーヒーとケーキをいただくんだろうな、くらいに考えている程度だ。それで往復2時間。まあまあ、これで半日が潰れる。

清水川を越えていく。いつ見てもこの流れは美しい。水面にもやがかかっていて、特に今日は美しい。

08:33
朝の河童橋。8時半ともなれば、ぼちぼち気が早い観光客が訪れている。

観光客は、この河童橋に到着したは良いものの、一通り写真を撮るとやることがなくなってしまうのか、河原に降りる人も結構いる。河原に立っても、何か特別眺めがよくなるわけではないのだけれど。

奥に見える焼岳がガスで半分覆われている。これはこれで風情があって美しい。

「どうだ、これが僕が何度も言っていた『地上の楽園』だ」

といしに説明する。いしも「すごいですね」と応えていたが、どれほど僕の感覚とシンクロしているのかは、不明だ。

年寄りは花や四季折々の景色を愛でる、というのは古今東西の定番だ。そういうのが美しいとか、大切だと「しみじみ」感じられるようになるのは、ある程度の歳月を経て「枯れ」の境地に達しないと難しいのかもしれない。

干支が一回り違ういしは、この上高地の景色を見て「しみじみ美しい」と思っただろうか?

なにせいしはたった一ヶ月半前に、オーストラリアのエアーズロックに登頂してイエーイ、なんて盛り上がってた人だ。エアーズロックも美しいとは思うが、「しみじみ」感とはちょっと違う。

僕自身、アメリカのヨセミテ国立公園に行って「美しい」とは思ったけど、どこか他人事だった。外国だし、すごい景色で当然、みたいな感覚があった。

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一方、上高地は「愛しさ」を感じる、自分の生活と地続きの美しさだ。こういうのを僕は「しみじみ」という形容表現で表しているのだと思う。

08:45
上高地食堂到着。

これまで過去2回の、GW期間中のソロキャンプのときは朝6時とか7時にここを訪れていた。寒さから逃れるためだ。寒い寒い、と言いながらテントから這いずり出て、この食堂で暖をとったものだ。

それがどうだ、わずか2ヶ月でこの余裕っぷりよ。9時前にお店到着とは随分といいご身分なものだ。

08:53
この頃のいしは、朝ごはんを食べる習慣があまりなかった。夜勤があったり日勤でも朝早く家を出るなど生活が不規則だったからだろう。僕と半同棲生活が始まったときは、「朝ごはんを食べている僕におつきあいで一緒に食べる」という程度で、本心としては「別に食べなくてもいい」という気持ちだった。

今回もそうで、「別に朝ごはんは食べなくてもいいですよ?」といしは言う。バカを言っちゃいけない。キャンプとか旅行とかだからこそ、非日常空間だからこそ、きっちり朝昼晩食べようではないか。食の体験と記憶、というのは旅行においてとても大事だ。たとえそれがおにぎり1個であったとしても、だ。

そうやって僕が背中を押した結果、いしが頼んだのはサラダとホットコーヒーだった。えー、サラダだけ?草食動物だ。上高地は別にサラダが名物じゃないんだけどな。

08:53
一方の僕はというと、朝からしっかりとモーニングを食べる。「洋食 朝定食」900円。コーヒーまたは紅茶付きなので、紅茶を頼んでみた。

これも、どこにも「上高地名物」感はない。

上高地で地産地消なんてのは存在しない。全ては遠路はるばる、人とガソリンを使って運び上げてきたものだ。大変なことだ。

自然が美しい、とか呑気なことを言っているけれど、その自然を楽しむために人がどれだけの負荷を自然にかけているのか?ということだ。

上高地食堂の売店には、「カッコウ笛」をはじめとし、いろいろな鳥笛が売られていた。へえ、何種類もあるんだな。

9:49
小一時間、上高地食堂でゆっくり過ごしてから外に出る。

まずはバスターミナルにご挨拶をしにいく。特に意味はないのだけれど、高速バス(さわやか信州号)の今日と明日の予約状況を確認しておく。「おお、新宿行きは今日満席があるぞ」とか、人の動向がわかって面白い。

新宿行きは15時ちょうどに2便、16:15に1便と合計3便の設定がある。人気路線だ。僕みたいに「バスで新島々、アルピコ交通上高地線で松本、松本から特急あずさで新宿」と2回乗り継ぎをするよりも安くて楽ちんだ。

ただ、4時間バスに乗りっぱなしというのは、面白みに欠ける。時間のロスがあったとしても、バス、私鉄、JRの特急と種類を変えて乗り継いでいったほうが楽しいと僕は思っている。だからこの新宿行きバスは使ったことがない。

早速明日の帰りのバスについて、整理券を発券してもらった。16:40の便だ。

あまり急ぐ必要はないと思うけど、なにせ夏山シーズンに入りつつあるこの時期だ。予想以上に混んでいて狙った便の予約ができない可能性は避けたかった。

ほら、明日の夕方の便の予約だというのに、既に整理券番号が10と11だ。既に9名の予約が入っている、ということだ。

おやきを売っているお店では、店頭にホットスナック類を売る陳列ケースが置いてあった。半熟卵のカレーパンやコロッケ、フランクなどが売られている。

ほう、ここで買ったものを食事としても良いな。覚えておこう。ビールのつまみっぽくなってしまうけれど、選択肢が多いに越したことはない。

おやきのお店の隣は「河童焼」を売るお店。まさに今河童焼が作られているところだった。

さすがにこれは下界から冷凍されたものを運び上げる、ということはしないか。

河童焼きを1つ買って、二人で分けて食べる。

いしは大喜びだ。「一人1つずつ買って、二人で半分こしてもいいですね」なんて言ってる。おいちょっと待て、朝ごはんはあまり食べないけど、甘いものは食べるのか。

「甘いものは別腹ですから」

そりゃそうだけど、メイン腹にサラダ、別腹に河童焼って組み合わせが変だぞ。

(つづく)

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