2019年12月09日(月)
結婚式翌日。
静岡からやってきているいし家御一行様を迎えに、僕ら夫婦は宿泊先の倉敷アイビースクエアにやってきた。
月曜日だけど、みんな仕事を休んで1日滞在してくれている。午前中は倉敷観光をし、午後に静岡に向けて帰る予定だ。
アイビースクエアは、倉敷紡績(現:クラボウ)の工場として作られたものを再利用してホテルにしたもので、レンガの外壁にツタがびっしりと絡まっていることから「アイビー(ツタ)スクエア」と名付けられている。
風情のためにツタを植えたのではなく、夏場は工場の中が暑くなるので日差しよけのために植えた、という経緯があるらしい。カイゼン活動というか、苦肉の策から生まれた発想だけど、今や倉敷を代表する観光地となっている。
僕自身はこの宿に泊まったことがないので、客室がどうなっているのかを知らない。いつか潜入してみたいものだ。
ちなみに、メインダイニングとして用意されているレストランは和食のお店と洋食のお店が2つ並んでいて、和食の方が「蔦(つた)」という名前で、洋食の方が「アイビー」という名前。ちょっとおもしろい。
12月中旬だと、アイビースクエアの外壁のツタは赤く紅葉してとても美しかった。知らなかった、ツタって紅葉するんだな。
いし家御一行様には、2歳児と0歳児がいる。そのため、ダイナミックに動くことはせず、美観地区内をこじんまりと歩く。
途中見かけたクラフトビールのビアパブ、「蔵びあ亭」。昼間っからクラフトビールが飲めるイイカンジだが、ランチ定食が500円(税別)というのにびびった。
「納豆定食」とか「豚汁定食」程度だったらまだしも、「鶏の唐揚げ定食」「豚ロース照り焼き定食」などとしっかりとしたメニューのようだ。すげえ。
こら、「岡山だから物価が安いんでしょ?田舎だし」とか思うなよ?物価が安いったって程度というものがある。そもそもここは岡山県を代表する観光地のど真ん中だ。それで500円はびっくりだ。
たぶん、この500円定食は「撒き餌」であって、これを肴に「じゃあ、軽く一杯やりますか」という展開になるのをお店は期待しているのだろう。でなくちゃ、500円は割に合わない。
そういうお店の思惑を想像しちゃうと、お酒を飲まない僕は申し訳ない気持ちになっちゃって、むしろこのお店に入ることができなかった。
お昼ごはんの場所を探していたのだけど、結局「蔵ぷら亭」のすぐ近くにあった「つね家」というお店に入った。偶然、個室が空いていたからだ。
個室、すごくいい。中庭に面して雰囲気が良いということもあるけれど、広々とした空間だったし、なにせこっちにはチビが二人もいる。この子らは泣くし、ウロチョロする。大人の世界とは違う世界に住んでいらっしゃる。なので個室だと安心だった。
ただ、そうやって油断していると、時折扉がガラッと空いて、普通のお客さんが部屋を横切っていくのでびっくりした。というのも、このお店のトイレは屋外、中庭にあるためだ。お客さんがトイレを利用しようとすると、僕らが陣取っている部屋を通過していくことになる。
つね家のランチ、「彩」。松花堂弁当スタイル+天ぷらのお皿。これで900円+税。
弁当箱をカパッと開けると、そこには煮物などが入っていた。
昨日の結婚式からうってかわって、のんびりとしたお食事内容。
平日ということもあって、美観地区はのどかな空気。今日は川舟に人がすずなり、ということはない。
昨日、大勢の人がいる中、ここで花嫁・花婿衣装を身にまとい川舟に乗っていたとは思えないくらいだ。「思い出が蘇ってくる」ということがぜんぜんない。
「くらしき桃子」の存在を、いしは家族にアツく語る。
くらしき桃子は、美観地区においてもっとも人気を集めているお店、といって過言ではない。フルーツパフェを提供するお店なのだけど、あまりの人気っぷりにあれよあれよと店舗数を増やし、今や狭い美観地区界隈に4店舗もお店がある。数百メートルおきくらいだろうか。ドミナント経営極まれリ。
このあたり一帯は景観条例があるため、大きなお店を出すことができない。もとからある建物を利活用するのが原則なので、今風の広々としたカフェやお土産物屋さんなんて一軒たりとも存在しない。どこも、窮屈そうにお店を構えている。
くらしき桃子は、増大するお客さんをさばくためにお店の数そのものを増やしている。数百メートルおきに同じフルーツパフェのお店だなんて、客の共食いをして経営が成り立たないんじゃないか?と思うが、どっこい、どこも行列がすごい。
「フルーツ王国」を自認する岡山県にやってきた観光客たちは、フルーツを食べたい気分でいっぱいだ。そんな人たちの欲望を存分に満たしてくれるのが、ぎょっとするくらい豪快に盛られたフルーツパフェなのだった。
くらしき桃子は各店舗で微妙にメニューが異なっている。なので、ひとまずそれぞれのお店を巡って、どのお店のどのパフェを食べるか吟味したほうがいい。「えっ、さっきの店にはなかったパフェがある!」ということがあるからだ。とはいえ、混雑しているので、おとなしく列が少ないお店に並んで食べたほうが幸せだと思う。
いし一家は、「せっかくだからパフェを食べよう!どこのお店で何を食べようか?」とキャッキャ親子で盛り上がっている。娘二人の家族なので、家族の雰囲気が賑やかだ。僕のように男兄弟2名の家庭とは大違いだ。
女性陣のパフェに対する熱視線に圧倒される。
で、その熱視線が結実したのがこれ。
洋梨パフェ、冬桃がたりパフェ、いちごパフェ。高さがすごい。
これなら、仲間うちでシェアしたって、自分のパフェが減るなんて心配はいらない。シェアしたって、まだ手元にたっぷりと自分の取り分が残っている。これをゴッソリと食べ終わったら、きっと満足感が残るだろう。
たちがわるいことに、「パフェならなんだかヘルシーな気がする」ということで、罪悪感が乏しいし。
ただし、お財布にとってはずいぶん罪だ。なにせ、税込価格で2,000円近いからだ。
そりゃあ、こうやって実物を見ると、「まあ、これだとお高くなるのは当然だよな」と思う。しかし、だからといって出費の額が少なくなるわけではないので、結構エイヤッと気合を入れないとこのお店で食べるのは難しい。
僕みたいに倉敷に縁もゆかりもある人間にとっては、2,000円近い値段を出すのはしんどい。しかし、観光客として外部からやってきた人にとっては、「せっかくなんだし」と財布の紐が緩むのだろう。
くらしき桃子、儲かってしょうがないでしょう?・・・と言いたいところだけど、移り気な観光客相手の商売なので運営が大変だと思う。新鮮な果物を使っているので、廃棄ロスが出ると一気に利益をふっとばしてしまう。天気次第で観光客の数は変わるし、週末は混んでも平日は客が少ないだろうし。
こちらはぶどうパフェ。色とりどりのぶどうが積み上がっていて、見た目美しい。
洋梨パフェの断面はこんな感じだった。
人数分だけパフェを買うと、マジで1万円札が消えていくことになる。なので、一部の人はお安いフルーツジュースやケーキ類をオーダーし、それらをみんなでシェアしあえば良いと思う。
ちなみにこの日、パフェ4個+ジュース2杯で支払いが9,000円ほど。全員バラバラな注文だったので、お陰でいろいろなスイーツを見たり食べたりすることができて、楽しかった。
くらしき桃子のあと、いし一家は静岡に向け車で帰っていった。高速道路があるとはいえ、長丁場で大変だ。気をつけて帰ってほしい。
いっぽうの僕らはというと、今晩もう一泊倉敷に滞在し、明日の夜に岡山を発つ予定だ。
このあと倉敷市役所に行き、婚姻届受理証明書を発行してもらう。
そして明日はおかでん家親戚への挨拶の後、吉備路をサイクリングし、夜に「サンライズ出雲」に乗って東京に戻る、というイベントが控えている。事実上の新婚旅行だ。
表向きには、「新婚旅行は冬季閉鎖中の上高地」ということになっている。
しかし実際は、「レンタサイクルで神社仏閣を巡り、そのあと寝台特急に乗る」という学生旅行っぽいことをやるのが新婚旅行だった。なんて地味なんだ。
せっかくだからどこかに行こう、なんて全く考えなかった。これっぽっちも、だ。なにせ、来年いしはアフリカに行ってしまうのだから、呑気に海外旅行なんてやっている暇はない。
(つづく)
コメント
コメント一覧 (5件)
ご結婚されたんですね。おめでとうございます。20年近く前、カレーのまんてんとえぞ松の記事を拝見し、その後は牛サシか何かでお店の全メニュー制覇など、楽しく読ませて頂いておりました。久しぶりに閲覧し、コメントをさせて頂く次第です。
idekenrrさん>
お祝いメッセージありがとうございます。久しぶりのこのサイト、外観も中身もすっかり変わってしまって驚かれたと思います。
「美貌の盛り」をやっていた頃から基本的に何も変わっていないつもりなんですが、昔連呼していた「無茶してナンボ」という言葉は今だと全然使わなくなったな、とふと気づきました。無茶できなくなったんだろうなぁ。
また20年後、「まだやってたのか」とidekenrrさんから言われるよう、これからも頑張ります。
おかでん殿
結婚式前後の事連載が完結してからコメントさせていただこうと思い、遅くなりました。
連載もさぞ工夫された事とおもいます。
今まで通りのアワレみ隊ontheWeb連載の流れで、スペシャルイベントを違和感なく読ませていただきました。
奥様そしてご子息と末永くお幸せに!
にしても両家参列の式とは言え準備がこんなにも大変だったとは…。
自分達は諸事情により2人だけで新婚旅行を兼ねてのラスベガス挙式(ジョン・ボンジョヴィと同じチャペルを妻が熱烈希望)だったので、現地日本人コーディネーターにお願いしたくらいですが。
話は飛びますが、高校野球選抜大会の日程次第では、大阪から広島へ延泊してますゐ訪問を企んでおります。昼・夜・昼&特ランチ弁当なんてシミュレーションし始めただけで涎が止まりません!
軍曹殿>
ラスベガス挙式すげー。そんなことをやっていたんですか。しかも2人だけって、逃避行みたいですごいですね。
そういえばラスベガスって、質屋とチャペルが非常に多かったような気がする。
結婚もギャンブルといいますが、軍曹殿はそのギャンブルに勝ったようでなによりです。
ますゐ詣で、ぜひご堪能あれ!僕も最近のますゐについては全然疎いので、最新情報入手のために足繁く通ってみてください!!
おかでん殿
事実上の高飛びってやつです。
その前は同級生とか野球部同期の友人達がお祝いの会を開いてもらったので、感謝しています!
(実家出禁も半年後には解除されました。)