12:32
「きびじアリーナ」という市営体育館のところに、ロードマップの看板が出ていた。
「吉備路自転車道」と書いてあるが、「ほう!」と思ったのが「一般県道 岡山総社自転車道線」とカッコ書きがついていたことだ。
自転車用の県道という概念は初めて触れた。へえ、僕ら県道を走るのか。あと、自転車用の道がわざわざ整備されているんだな。
そのままいい気分になってこの県道を突っ走ると、岡山市街地まで向かってしまう。今日はこの全行程の4/5くらいの備前一宮で自転車を返却しなければならない。
12:34
空が広い!
総社駅からちょっと自転車を漕いだだけで、すぐに一面の田園風景になった。この中をひたすら前へ前へと進んでいく。
一見退屈な光景に見えるかもしれない。でも、道中本当にいいタイミングでちょこちょこと立ち寄り地が現れるので、全く飽きることがない。これはすばらしいサイクリングコースだ。
夏場だと日陰がなくて暑いと思うが、12月のサイクリングは寒すぎなくて快適だった。汗が冷えて困るということもなかったし。
12:38
「やよい広場」というところに着く。高床式の倉庫が唐突にある。
「おっ、なんだなんだ」と意味がわかっていないにもかかわらず、記念撮影をしておく。
結婚直後なんだし、なんか記念撮影するきっかけさえあればどこでもなんでも僕ら、写真撮るんスよ。そこはもう許してください。
12:42
県道の自転車道といっても、あぜ道に毛が生えたような道だ。でもそれがいい。道なりに進め!と力強く行き先を指し示してくれていて、まるですべり台を滑っているかのような感覚だ。とても気分がいい。
正面に見えるちょっとした丘は、どうやら作山古墳らしい。
吉備路には、紛らわしいことに「作山古墳」と「造山古墳」の2つがある。デカくて有名なのは「造山」のほう。つまり目の前に見えているのは、ちっこいほうだ。・・・にしては、それでもデカいな。
吉備地方、昔はどれだけ豊かだったんだ?
12:48
作山古墳が迫ってきた。
「ええ!?マジで?これを5世紀の豪族は作ったの!?」
造山古墳とくらべてちっこいとはいえ、日本で10番目に大きい。
ただ一つ僕が勘違いしていたことがある。古墳というのはエジプトのピラミッドみたいなものだと理解し、この丘陵を一から造成したものだと思っていた。でも実際は、もとからあった丘を切り崩して形を整えたものなんだそうだ。なるほど、それならまだわかるけど、これ一つがお墓だなんて、びっくりだな。
12:54
近畿地方にある古墳は天皇家にまつわるものが多いとされ、そのために中に入れないところが多い。
いっぽう、吉備路にある作山・造山古墳は吉備地方の豪族の墓だということで、出入りに制限はない。ほら、ちゃんと歩道が整備されている。
古墳の上に行っても何もないだろうな、ということはわかっていたけれど、一応登っておく。自転車でシューッと横を通り過ぎただけだと、本当に単なる丘だから。
12:58
案の定何もない。
ただ、周囲は平野が広がっている場所なので、眺めが良い。
この古墳が出来た5世紀頃も稲作は行われていたが、今ほど徹底して農地が整備され、田んぼしかない風景ではなかったと思う。もっと木が残っていただろう。なので、21世紀の今のほうが眺めが良く、この古墳が周囲から際立っている。
13:08
解説看板によると、「これだけデカいということは、吉備に君臨した大首長だろう」と書いてある。つまり、仮説でも誰それの墓っぽい、という話がないわけだ。
古代ミステリを語る際、邪馬台国はどこにあったのか?ということがよく話題に出る。でも、吉備地方の存在というのも、不思議だ。
エジプトなんて、紀元前2660年のジェセル王の時代に作られたのが最初、とされている。えっ、つまり4000年以上も前の人の名前と墓が記録として残っているわけだ。
いっぽう我が日本はというと、初代天皇である神武天皇が紀元前660年前生まれなので、一桁も歴史が違った。
この古墳は5世紀頃のものだとされているので、仏教公伝(伝来)よりも前の話だ。日本書紀や古事記といった、天皇家プロデュースによる日本の歴史編纂から漏れると、後世に記録として残らない。せめて日本にもヒエログリフみたいな文字や石版に記録を残す文化があればよかったのだけど。
13:12
作山古墳を過ぎ、自転車道を走らせていくと正面に五重塔が見えてきた。あれが備中国分寺だ。
すごい。この地だと、東京におけるスカイツリー並、いやそれ以上のランドマークとしてそびえ立っている。
こういう景色を見ながら前に進んでいくというのは、本当に楽しい。「見ろ!あれが次の目的地だ!」ということで気分が盛り上がる。
13:16
作山古墳を東側から眺めたところ。
木が生えているけれど、下草が刈られていることもあって、なるほど言われてみれば古墳っぽい。言われないと気が付かないけれど。
これだけ土地が豊富にある場所なのに、民家は古墳に寄り添うように建てられている。ここでは田んぼファーストなのだろうか。
13:17
五重塔に向けてひた走る前に、一旦ルートから逸れる。
そろそろお昼ごはんを考えないといけないからだ。お昼は、この近くにあるカフェにお世話になろうと思っている。
その前に、「国民宿舎サンロード吉備路」に立ち寄ってみる。
天然温泉「吉備路温泉」があり、日帰り入浴も可能らしい。今回の僕らは入浴している暇なんてないけれど。
13:22
ここでも簡単なランチを食べることは可能。でも、僕らの目当てはランチではなく、パンだ。
ベーカリーが国民宿舎内にあり、いろいろなパンが売られている。
そう、これこれ。「総社ドッグ」。
ご当地グルメという言葉に目がないので、これを食べたくて立ち寄ったんだ。
ご当地グルメは無理やり感があって「えー?」と首を捻るものが結構ある印象だ。なにせ、食べに来た側としては「この土地の特徴を端的に述べよ」と出題してるようなものなので、わかりやすさや斬新さがないと納得しない。
その点、この総社ドッグはすごかった。
史跡が点在する場所なので和のテイストたっぷりなご当地グルメかと思いきや、まずホットドッグを持ってくるところがすごい。でもそれだと古代ロマンに思いを馳せることが難しいと考えたのだろう。バンズは赤米を練り込んだんだそうだ。凝ってるなあ。
そして、スパイシーなチリソースと、固めに茹でた大豆がトッピング。なんで大豆なのか不明だが、TEX-MEX料理のチリコンカンっぽい。聞くと、大豆は総社産なんだそうだ。へー。
この「サンロード吉備路」以外にも「総社ドッグ」を売っているお店は市内にいくつかあるが、どのお店も食材がバラバラだ。どうやら、総社のご当地食材を使えばオッケー、というゆるい縛りで成り立っているカテゴリーらしい。
総社市内には山崎製パンの工場があるので、「パンはヤマザキ製」というのを売りにしているお店もあった。
(つづく)
コメント
コメント一覧 (5件)
ご結婚されたんですね。おめでとうございます。20年近く前、カレーのまんてんとえぞ松の記事を拝見し、その後は牛サシか何かでお店の全メニュー制覇など、楽しく読ませて頂いておりました。久しぶりに閲覧し、コメントをさせて頂く次第です。
idekenrrさん>
お祝いメッセージありがとうございます。久しぶりのこのサイト、外観も中身もすっかり変わってしまって驚かれたと思います。
「美貌の盛り」をやっていた頃から基本的に何も変わっていないつもりなんですが、昔連呼していた「無茶してナンボ」という言葉は今だと全然使わなくなったな、とふと気づきました。無茶できなくなったんだろうなぁ。
また20年後、「まだやってたのか」とidekenrrさんから言われるよう、これからも頑張ります。
おかでん殿
結婚式前後の事連載が完結してからコメントさせていただこうと思い、遅くなりました。
連載もさぞ工夫された事とおもいます。
今まで通りのアワレみ隊ontheWeb連載の流れで、スペシャルイベントを違和感なく読ませていただきました。
奥様そしてご子息と末永くお幸せに!
にしても両家参列の式とは言え準備がこんなにも大変だったとは…。
自分達は諸事情により2人だけで新婚旅行を兼ねてのラスベガス挙式(ジョン・ボンジョヴィと同じチャペルを妻が熱烈希望)だったので、現地日本人コーディネーターにお願いしたくらいですが。
話は飛びますが、高校野球選抜大会の日程次第では、大阪から広島へ延泊してますゐ訪問を企んでおります。昼・夜・昼&特ランチ弁当なんてシミュレーションし始めただけで涎が止まりません!
軍曹殿>
ラスベガス挙式すげー。そんなことをやっていたんですか。しかも2人だけって、逃避行みたいですごいですね。
そういえばラスベガスって、質屋とチャペルが非常に多かったような気がする。
結婚もギャンブルといいますが、軍曹殿はそのギャンブルに勝ったようでなによりです。
ますゐ詣で、ぜひご堪能あれ!僕も最近のますゐについては全然疎いので、最新情報入手のために足繁く通ってみてください!!
おかでん殿
事実上の高飛びってやつです。
その前は同級生とか野球部同期の友人達がお祝いの会を開いてもらったので、感謝しています!
(実家出禁も半年後には解除されました。)