13:03
オクシズの茶店「茶の芽」の中に入る。
畳の上に長机が据え付けてあって、急須、茶碗などが並ぶ。良い感じ。
あー、こういうお店って東京にはあまりないなぁ。カフェがブームというかすっかり街に定着したけど、素っ気ないのがイケてると思っているっぽいお店があちこちにある。それとちょっと空気感が違う。
オクシズまでやってきたのは、かき氷が目当てだから。そうそうこれこれ。
「まるごと抹茶かき氷」「まるごとほうじ茶かき氷」。
抹茶を使ったスイーツというのは最近多く見かける。抹茶ラテとかアイスクリームとか。でも、なんとなく「緑色のものを飲み食いしている」というだけであって、抹茶ァァァ!という実感に乏しい。若干の苦味と、砂糖の甘みと、わざとらしい緑。
見せてもらおうじゃないか、茶処静岡の本気を!
・・・と思ったら、かき氷が出てくるまでの間にお茶が出てきた。
しかも、きっちり時間を計るための砂時計付き。思わず背筋がシャンとする。このシチュエーションだと、田舎者感丸出しで雑に飲むわけにはいかない。
静岡で感心するのが、実家に帰省すると当たり前のように急須で淹れたお茶が出てくることだ。しかもそれをおしゃべりしながら何杯も飲む。昭和の時代ならともかく、21世紀の今でも日本茶が家庭に根付いているのを実感した。
しかも、出されるお茶が美しい緑色の煎茶というのも僕には驚きだった。僕が広島の実家で飲んでいたお茶は、大抵が茶色いほうじ茶だったからだ。これは家庭、特に母親の嗜好によるところがあるとは思うが、我が家では緑茶を飲む機会なんてなかなかなかったので「さすが静岡!」と勝手に感心しているところだ。
そんな静岡の本気、「まるごと抹茶かき氷」。
700円で、たっぷりと丼に盛られているのが嬉しい。
こっちは「まるごとほうじ茶かき氷」。
練乳など、上からかける蜜が2種類用意されている。
「冷たい食べ物なんだから、あんまり風味は感じられないんじゃないか」と思っていたけど、さすがお茶屋さんが出すお茶のかき氷。食べると抹茶は爽やかな苦味、ほうじ茶は晴れやかな香りが実感できてとても良かった。ああ、これは美味しい。
14:27
お昼ごはん+おやつを食べて満足したので、今回の静岡入りの本題。お墓参りに行く。
来年には子孫が一人増えますのでよろしくお願いします、とご先祖様に報告する。「えー、まじで?」という声が聞こえてきそうだ。
お墓から振り返ると、そこは駿河湾。海が広いなぁ・・・。
東京に住んで東京で働いていると、ビルから見える景色はゴチャゴチャした湾岸のタワマンやガントリークレーンだらけだ。自然と、海というのはそういうものだとイメージしてしまう。
なので、こうやって水平線が見える海を久しぶりに見ると、今更ながら「おおお」と思う。海はそういうものだ、と知っていても、そうだ。やっぱりたまには海、山、川、いたるところに行かないと。
都会の中でギラギラと物欲にまみれた人工物に囲まれていると、常に交感神経が高ぶっているけれど心の奥に響く喜びや興奮って薄いことに気づく。
14:46
今回、海沿いから日光東照宮に登り、そこから日本平まで行ってから帰ってくることにした。
静岡県出身のいしが、地元の良いところを紹介したい、と珍しく気合が入っている。
いつも多忙な彼女は、社会人になってから「突発的」かつ「日帰り」での帰省が多いのだそうだ。夜勤明けでそのまま実家に帰り、親戚と会食してその日の夜には東京に戻っちゃう、みたいなスタイルだ。
なんで帰る日時を実家に伝えないの?と聞くと、
「その時間通りに帰れるかわからないから。変に期待させちゃっても悪いから」
と言う。いやそれはそうかもしれないけれど、僕とは真逆のスタイルだ。
僕の場合、帰省する一ヶ月前には日時の予告を実家に連絡する。そして新幹線のチケットを手配したら、「●時●分頃に家に到着予定、家を立ち去るのは●月●日の●時頃」と細かく予定を伝える。当日までに予定に変更があったら、その都度修正情報を実家に送る、というやり方だ。
両者の性格の違いなんだろう。でも、物理的距離というのも行動の違いを生んでいることがわかった。
この一年、何度か東京と静岡を往復してみてわかったんだが、静岡というのは絶妙に近い距離の帰省だ。新幹線でほぼ1時間。幸い、いしの実家は静岡駅からさほど遠くない場所にあるので、自宅から実家までドアtoドアで2時間あれば十分だ。
こうなると、「突発的に帰省」というのが現実味を帯びてくるし、「日帰り帰省」も十分に可能だ。
一方、僕のように現在岡山県に両親が住んでいる立場となると、帰省するとなるとお金も時間もかかる。必然的に盆暮れくらいしか帰省できない。盆暮れは大変に新幹線が混むので、1ヶ月前に予約を取る。ほら、突発なんてとんでもない。
なるほどなぁ。
そんなわけで、僕自身静岡に一泊するのは初めてとなる。実家泊ではなく、駅前のホテル泊だけど。これを機会にあれこれ見て回りたい。
静岡に住んで東京のオフィスに新幹線通勤する、ということは物理的に可能だ。テレワークが中心の時代だし。でも、オフィスが東京駅(または品川駅)から遠いと、新幹線を下りてからの移動に時間がかかる。今は駅から近いオフィスだったとしても、今後組織改編とか異動でオフィス移転があったら、通勤時間がガーンと増える可能性がある。
結局、コロナでリモートワークと出勤のハイブリッドワークになって、「時々出社でいいよー」という制度が導入されたとしても、さすがに新幹線通勤エリアに住む覚悟は僕にはない。いつまで「時々出社でいいよー」が継続するかわからないし、「出社してねー」になったときのオフィスの所在地が全く読めないからだ。
あと、デスクワーカーである僕は比較的リモートワークに向いている職種だけど、エッセンシャルワーカーのいしはリアルな職場に出ることが原則だ。そうなると、地方移住したときの職業選択の幅が狭まることになる。
じつは僕は高崎または那須塩原あたりに移住するという選択肢が一応頭の中にあったのだけど、いしからは全く同意が得られなかったのでその可能性を消した。
その際、東海道新幹線沿いに住む、ということは考えなかった。というのは、東京から遠く離れたなぁ・・・と思うわりには不動産価格が安くないからだ。
たとえば辻堂とか茅ヶ崎とか。イケてる街なのはわかるが、それにしたも高い。
東海道沿線不動産物価、というのが確実にあって、それは「東京から遠ざかれば不動産は安いだろう」というスケベ心で物色している人にとってがっかりさせるものだ。人気エリアだということが値段からよくわかる。
それはともかく、久能山東照宮の手前までやってきましたよ、と。
このあたりは「石垣いちご」の産地だ。海と山との間に、いちご農家がいっぱい並んでいる。
石垣いちごとは、山の斜面の石垣の間にいちごを植える栽培方法で、この界隈のブランドになっている。石垣が蓄熱することで、昼間は地面があたたまる+夜は熱が逃げにくい、ということで栽培が促進されるのだそうだ。
実際のところ、今じゃ周囲を見渡すとビニールハウスを使ったいちご農家が多いようで、ほんとうに石垣を使って栽培している農家さんがどの程度いるのかは不明だ。でも、いちごが名産なのは間違いない。
そんなわけで、久能山の麓にはいちごソフトなどいちご製品を売るお土産物屋さんが並ぶ。
どこか手頃な駐車場がないかと探し、お土産物屋さんの駐車場に停める。
観光地に行くと、便利な場所にお土産物屋併設の駐車場があって、「駐車料金はかかるよ!でも、ウチで買い物したら駐車料金はタダだよ!」というシーンに出くわす。ここもそう。
あちこちのお土産物屋さんが駐車場の客引きのために誘導員を道路脇に陣取らせ、呼び込みをやっている光景というのを見かける。僕はそういうのを見るとビビって、敢えて客引きがいない場所を探す。別にぼったくり店じゃないんだし、あんまり心配しなくても良いのだけれど。
14:46
久能山東照宮。徳川家康が没後最初に祀られた場所。
長ーい石段が続く。
昔ここを訪れたことがあったのだけど、全く記憶に残っていない。
この時に訪れたのが最後なので、22年前か・・・。
「つい先日のできごと」と感じていることが、よくよく考えてみると10年前20年前、というのがザラになってきた。歳を重ねるというのはこういうことなんだろうし、「自分はなんでも知っている」という錯覚に陥って、最新の状況に疎いことに気が付かない老害となる理由がよくわかる。
(つづく)
コメント
コメント一覧 (4件)
おじまるです、お久しぶりです。
今回は地元静岡ということで、興味深く見ています。
「まるしま」さん残念ながら、廃業されました。
奥様がおっしゃるとおり、昔は6時半から開いていましたね。
静岡のおにぎり屋には、たいてい「おでん」がありますね。
静岡人はそれを普通と思ってます(笑)
おじまるさん>
あー、まるしま、廃業でしたか。残念。
いしが楽しそうに思い出話を語るので、いつか訪れてみたかったのですが。
あと、いしが「夏、プールに行ったらよくおでんを食べていた」と言っているのは、おそらく大浜公園プールのことなんだと思いますが、それも今は閉まっているようですね。これもまた残念。
FDA、なんと小松にも来てたことあるんですよね。
「誰が使うねん(w」と言ってたら数年で撤退しちゃいましたけど。
今はチャーター便のみが飛来するようになりましたが
小松空港の手荷物受取所には『FDA』の名札が輝いております。
チャーター便のスケジュールまで公開してる珍しい会社でもありますね。
ティータさん>
FDA、面白い航空会社ですよね。
これまでいくつもあった地方航空会社は、経営の多くを羽田便に頼っていたと思います。なので、JALとかANAに戦いを挑まざるをえなかった。
しかし、静岡空港という場所柄、羽田便を就航させるメリットがない。なので、静岡からその他地方空港、または地方空港から地方空港、という独自性の強い路線が生まれている。
今後どうなるのか楽しみです。