那珂湊買い出し~三崎港買い出し、出産直前におけるおかでん家の旅

掘出神社の境内のすぐ隣に、「ほしいも神社」があるらしい。張り紙が貼ってあった。

令和元年11月23日竣工、と書いてある。

竣工・・・?工事現場みたいな言い方をするのだな。「創建」という言葉を使っていないのは面白い。

令和元年は西暦2019年。今は2021年2月なので、1年ちょっと前にできたばかりの、新しい神社ということになる。

張り紙には大きく「日本初」と書いてある。そりゃそうだろうな、ほしいもの神社なんて聞いたことがない。

そんなのがアリなら、「カレー神社」とか「もりそば神社」とかあってもいい。

ほしいも神社のお守りや絵馬が売られている傍らに、本物のほしいもが売られている光景。

ほしいも神社を目指す。

阿字ヶ浦の海が見渡せる、風光明媚な場所。

茨城県のこのあたりは、潮風を浴びながら野菜が育つので味が良いのだという。

いしはお腹がびっくりするくらい大きくなっていて、妊婦のすごさを目の当たりにする。

新しい神社なので、伝統と格式、そして風情に満ち溢れた境内ではない。

絵馬を奉納するところ(絵馬掛け所)は、シンプルなステンレスの棒と、緑色のありきたりなロープで作られていた。

「ほしいものをしっかり念じ 心を込めてご参拝下さい」と書いてある。

ここまで露骨に物欲ないし現世利益を追求する神社というのは、あんまり見たことがない。

そしてびっくりするのが、これ。

金ピカの鳥居。

しかもテッカテカの金色ではなく、くすんだ金色だ。この色を見て、浅草のアサヒビール本社ビルの屋上モニュメントを思い出した。

まるでお稲荷さんのように鳥居が並ぶ。どうやら、高額の寄付をすれば鳥居を建てることができるらしい。

ほしいもの神社、しかも令和の時代に爆誕した神社なので、伝統にとらわれずに新しい宗教観を提示できる。金色の鳥居がまさにそうだ。

しかし、お社はオーソドックスなデザインを踏襲している。あんまり今風にしてしまうと、ありがたみが失せてしまうからだろう。

ほしいも神社のロゴ(あえてロゴ、という言い方をする)としてドラゴンボールのような、◯に★印がついているものが用いられていて、これは今風だ。

この地でほしいも普及に貢献したと思われる昔の方々の顕彰碑が神社にあった。

「ほしいもの神様」と銘打たれている。あれっ、ということはこの神社って人を祀っている神社なのか。乃木神社とか、明治神宮と同じ?

ほしいも神社の向かいに、旅館周三(しゅうざ)という旅館がある。

ほいしいも、というのぼりがはためいていて、ここでもほしいもを売ってるよ!と参拝者に猛烈PRしている。なにせ、ほしいも神社の参道というか、門前町として唯一のお店だ。いやでも目立つ。

こののぼりをよく見ると、「ゆうパック」「郵便局」というマークが入っている。どうやら、地元の日本郵便が資金援助してこの「ほしいも」のぼりを作って各生産者に配っているらしい。さすがほしいもの聖地。

で、その旅館の軒先でほしいもが売られていた。「芋工房 周三」というらしい。

立ち寄ってみる。

へえー、5種類も売ってるぞ。

甘さスッキリから甘さ濃厚まで、いろいろ選べる。

甘さスッキリから、
たまゆたか、ほしこがね、シルクスイート、ひめあやか、べにはるか
という順で濃厚な甘さになっていくという。

人気No.1は一番濃厚な甘さだという「べにはるか」。やっぱり人は甘いものを求めるのか。フルーツが品種改良でどんどん酸味を減らして甘さを追求していってるのと同じ。

ほしいも売り場は、カラフルさがない見栄えで地味だ。

でも、この地味さゆえに僕らは「おお!」と興奮する。いい加減、スーパーとかで売られている商品の派手なパッケージに疲れを覚えているからだ。嘘くさいというか、「こういうビジュアルにすればお前は注目するだろ?」とマーケティングの固まりで、企業の思惑が透けて見える商品はイヤだ。だから、このほいしものようにマーケティング度外視のパッケージを見ると、ガチ感を感じて、むしろ美味しそうに見える。今買わなくちゃ!という気持ちになる。

ということで、買ったほしいも。

一番スッキリの「たまゆたか」と、一番濃厚の「べにはるか」。

地味な色にはかわりないけれど、両者を並べてみるとこんなに色が違うのか!と思う。たまゆたかは、まるで落ち葉のような色をしている。

食べてみると、べにはるかはねっとりとした食感で、甘い。確かに旨いんだが、パクパク食べるにはくどい。一方、たまゆたかは素っ気ない甘さとさっくりした歯切れで、「あれっ、物足りないかな?」と感じさせる甘さだ。でも、そのせいでいつまでも食べ続けることができる。

「パクパク食べたい」なら、むしろ甘くないたまゆたかのほうが良いと思う。奥が深いな、ほしいもって。

(つづく)

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コメント

コメント一覧 (4件)

  • 出産前の小旅行って行きたくなりますよね
    うちも安定期に入ってからこちらのサイトを参考にして広島に日帰り旅行に行きました
    (たしか、当時あったこちらの掲示板でいろいろ教えていただいたと思います)

    おかげで宮島、ますゐ、お好み焼きと堪能できたのをこの記事見て思い出しました
    あれ以来広島行ってないのでまた行きたいな~

  • GUYさん>
    子どもが生まれることで、自分の人生が大きく変わる!という節目の覚悟があるので、「さようならこれまでの自分」という気持ちで出産前に旅行に行きたくなるんですよね。

    ただもちろん、旅行中に母体が急変する可能性はゼロではなく、人様におすすめできる話じゃないんですけど。
    このサイトは殆ど誰も見ていないので、放火する人がいないですが、人気サイトだったら「子どもや母親に万が一があったらどうするんだ」などと焚き付けてくる人がぜったい出てくるはず。

    GUYさんは無事に旅行を満喫できて、なによりでした。
    出産前の旅行って、写真を後で見返して「ああ、僕ら家族もこういう時期があったなあ」としみじみ感慨に浸るものですよね。
    特に、子どもがいないときならではの夫婦の笑顔、っていうのが今となっては貴重。子どもができちゃうと、父親の顔・母親の顔になっちゃうから。

  • マタニティ旅行、っていう言葉、たまたま先日知りました。
    詳しくは調べてませんが、なんでも妊娠中なので、という理由で刺身盛3皿が売りの旅館に生もの変更してくれと頼んだら全部刺身こんにゃくだった、というツイート(いまはポストっていうんでしたっけ?)が話題になってたとかなんとか。
    ネットの反応としてはやや「否」寄りの賛否両論な感じだったので「炎上」というほどではない印象でしたが、旅館の名前を出しちゃうのはどうよ、とか旅館から一言くらい相談があってもよかったのでは、という意見とともに、妊娠中の旅行に対する賛否もたしかにありましたねえ。
    そういう意味ではたしかにリスキーさも内包した話題なのかもしれませんね。

  • 一平ちゃん>
    刺身こんにゃく話は僕も読みました。あれを笑い話としてネタに昇華できていればよかったのにね、と思う。
    僕はSNSの危なっかしさについていくのをやめ、もう殆どSNSの投稿はやらなくなった。Xは皆無だし、Instagramは毒にも薬にもならない食べ物の投稿を月に1度程度するかどうか。それで何も不自由はない。

    外界とのつながりが減ると楽に生きていけるけど、独居感が増す。本当にこれでいいのか、と思うこともあります。

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