12:33
米海軍横須賀基地、お昼をすぎると人だらけになってきた。
若干うんざり感を覚える。屋台がふんだんにあった昔ならともかく、今年はこれまで以上に屋台の数が少ない。一方客足は近年久しぶりに見るレベルの多さだ。限られたお店に人が群がって、どこも列、列、列。
そもそも、コロナで仲間同士との「阿吽の呼吸」をすっかり忘れてしまったこの2年。みんなで「あっちを見に行こう」「この店に行ってみよう」と提案したり合意形成するのが疲れるようになってしまった。人が多い中、気心知れた友達とはいえあっちこっち探検するのは疲れる体験となった。
屋台としては姿を消した「アンソニー・ピザ」だが、フードコートと同じ建物の中で売っていることがわかった。ひとまず、大人4人でこの巨大ピザ1枚を食べよう、ということになった。
もちろん並ぶ。
お店の姿かたちは全然見えていないけれど、建物の中に吸い込まれていくように伸びている列の最後尾に並ぶ。ちょうどその「吸い込まれ口」のところから、巨大なピザ箱を持った人がぞくぞくと出てくるからだ。
この屋内ピザ店舗、昔はスバーロのピザを売っていたお店だ。そしてテイクアウト用のデリを売っているお店でもあった。今は、何かの密売のようにピザを売っている。
12:43
ほどなくして買えたピザ。
確かペパロニ2,000円、ミックス3,000円だったと思う。これは3,000円のほう。
具は思ったよりも乗っていて、これだったら食べていて味に飽きてうんざり、ということはなさそうだ。4名なので、一人あたり二切れ。ちょうどいいサイズ感だ。
昔はこれを1箱、2時間近くかけて家まで運んで一人で食べたものだ。今なら面倒すぎてそんなことはやらない。ベビーカーを押しているし。
基地内でピザを食べるのは、過去何度もこの地を訪れている中でも初めての体験だ。それはちょっと寂しくもある。
だって、ピザを食べたらお腹がいっぱいになる。つまり、ピザを今食べるということは、「他の屋台での買い食いは期待していない」という宣言にほかならないからだ。
もっと僕をソワソワさせ、ワクワクさせる屋台がいっぱいあればいいのに・・・たとえばターキーレッグをグリルで焼いているとか。そういうのが全然ないんだよ。あっても値段が高すぎて買うのが馬鹿らしいんだよ。
芝の上にピザを置いて、みんなで食べる。
ものの数分でアリがピザの存在に気づき、地面からわらわらとピザの箱によじ登ってきた。この昆虫の嗅覚はすごい。
ピザの味よりも、アリが何匹もよってたかってピザのパンくずを運ぼうと苦労している様子を観察していた記憶のほうが強い。
ここから更に奥に行くと、野球場やアメフト場が広がるエリアになる。アメフト場にも屋台が一軒あったはずだけど、面倒なのでそっちまで行く気になれなかった。
今年は入場まで2時間半かかってしまい、そこで疲れた。さらに昼になると10月とは思えない暑さになり、体がだるくなった。さらには、コロナ以降「人混み」体験が減っていたので、余計疲れたんだと思う。
せっかくだから端から端まで、一般人が侵入できるエリアは探検してみたかった。その意欲はあったんだけど、なんか面倒でやめてしまった。基地初体験の人もいたので、一緒に歩くつもりだったんだけど。それは、屋台が思った以上にスカスカで、「歩いた先で何か別のものが発見される」という期待が持てなかったから、でもある。
大きな屋台があったので、ここの様子を物色する。「元祖ネイビーバーガー」と大きく看板を掲げていて、その脇には「ビール&ビバレッジ」の看板もある。
ドリンクメニューの先頭にかかれていた生ビール24ozは早々に売り切れたようで、文字が消されていた。売り切れたのか、またはビアサーバーの調子が悪くて販売断念したのか、詳細は不明。
他には、「コロナドビール」と「バラストポイントビール」という銘柄のビールが売られていた。珍しいビール好きの人ならぜひどうぞ。ただし、500ml弱で1,350円もするのでガブガブと飲むわけにはいかない。
そのほかはチューハイ、カクテル。750円~1,200円。何が悲しくて米軍基地でウーロンハイを飲むのか、と思うが、安く酒を飲みたいならチューハイを頼むしかない。なにせ外部からアルコールの持ち込みは禁止されている。
何か見慣れないカクテルはないだろうか?と思ってよく見てみると、「ケープコッド」という謎のカクテルがあった。
調べてみると、ケープコッドとはマサチューセッツ州にある岬の名前だった。アメリカ東海岸界隈でよく飲まれるカクテルで、ウォッカにクランベリージュースを混ぜたものだという。なるほど、味の想像はつく。
ネイビーバーガーを売るお店。
軒先には、おすすめメニューとして「8オンスビーフステーキサンド」が掲げられていた。
マッシュルーム、オニオン、グレイビーソースつき。
お値段、なんと2,400円。高い。
こんなの、買う人いるのか?というレベルで高い。だって、東京都の最低時給だったとしても、2時間働いてもこのビーフステーキサンドにありつけないんだぞ。どんな豪華な食事なんだ。
最低時給よりはちょっと上の値段で働いている僕でさえ、まったく手が出せない価格だ。既婚者だからじゃない、仮に独身で自由の身だったとしても、これはちょっと手が出せない。
いやあ・・・なんか貧富の差、格差を感じるなぁ。
で、食べ物。
- ネイビーバーガーチップス付き 1,200円
- ビーフステーキサンドイッチ 2,400円
- バーベキューブリスケット 1,500円
- バーベキューシュリンプ 1,200円
- チップス 100円
- コーンブレッド 100円
だ、そうで。もう、このお店で何かを買おうと決心したらネイビーバーガーしかないな。頼みたいものがほとんどない・・・。
グリルでは、ネイビーバーガー用のミートがガンガン焼かれている。そりゃそうだ、僕らとんでもない行列で待っているからな。時間がかかることは覚悟していたけど、20分待つことになった。長い。
料理の準備が間に合わず客が待っているんじゃない。レジがキビキビ動けておらず、そこがボトルネックになっていた。お陰で焼けた肉はどんどん積み上がる。
ようやくカウンター前にやってきた。店頭には料理サンプルが置いてある。
右側の料理が8オンスのビーフステーキサンドイッチらしい。なるほど確かに立派なビーフステーキだ。高いのは納得だ。ボッタクリ!などと言うつもりはないが、物理的に2,400円は払えない。
手前がバーベキューシュリンプ、奥がバーベキューブリスケット。ケチャップがどばっとかかっている。うーん、これを食べてもケチャップ味しかしない気がする。
結局ネイビーバーガーを頼むしかないね、ということになる。
テントの奥を見ると、完成してラッピングまで済ませたネイビーバーガーがずらりと並んでいた。そりゃそうだ、ミートはグリルから焼き上がったやつががんがん届けられる。で、バンズに挟むレタス・トマト・オニオンはご丁寧に1セットずつバットに並べられていて、手袋をはめた手でごそっとつかむだけでハンバーガー1個分のトッピングが一度に済む。これは楽だ。
だったら20分も待たせないで早く売ってくれよ・・・と思うわけだが、オペレーションが遅い。僕らの前の前で、店員さんが一旦レジを締めたかったのか小銭と札束を数え始めた。ジーニアスが「おい、こっちは並んでるんだよ。早く売ってくれよ」とぼやく。
マネージャーらしき人が何か大きな声を出しながら店の内外、左右を歩き回っている。英語がわかるジーニアスに「彼、マネージャーらしいけど何を言ってるんだ?」と聞いてみたら、「よく聞き取れなかったけど、ネイビーバーガーおいしいよ!みたいなことを言っていたっぽいぞ」とのことだった。なんだ、「店員たちよ、もっと頑張れ!お客さんを待たせるな!」というハッパじゃないのか。
ネイビーバーガー断面。
具は美味しかった。だけどバンズがパサパサした感じで、これは僕の口にはあわなかった。
何かアメリカならではの特色がある味ではないので、わざわざ1,200円払って食べるよりも日本のマクドナルドでビックマックでも食べていたほうがいい気がした。
「米軍基地で!ネイビーバーガーという料理を!食べた!」という臨場感を楽しむ食べ物だ、これは。
(つづく)
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