
ヘブンスそのはらのロープウェイがどんどん進んでいく。
標高が上がるにつれて、より一層紅葉が光り輝いてきた。これにはびっくりだ。
今回は恵那山登山のためにここを訪れたわけだが、思いがけない歓迎を受けた感じ。こんなに紅葉が綺麗だとは思わなかった。

いやいや、まだまだ!
もっと赤や黄色が狂い輝く。すごいすごい。
ロープウェーなので、木々の間近ながらも、高い位置から眺められるのもいい。

山麓・・・といっても、このあたりはどこまで言っても山の中腹のような場所だが、標高が低いところはまだこれから色づくのだろう。今はまだ、遠くから見たら茶色く見える。
お陰で、遠くの山に全然気が回っていない。ええと、あの山はなんだ。木曽駒ヶ岳と空木岳がある、中央アルプス界隈だろうか?

ちなみにロープウェイ正面に見えるのは南アルプスの山々。
これほど見事なまでに、赤石山脈をずらーっと南から北まで眺めることができるとはびっくりだ。
正面にぴょこんと飛び出て見える山が、聖岳。
日本百名山の中で、「どうやってアプローチすれば良いのやら・・・」と途方に暮れる山の一つ。いや、まだ「途方に暮れる山四天王」の中でも最弱の部類だけれど。

ちょっとまって!
山よりも木だ!今は紅葉を見なくちゃ!
見たことがないよ、こんな絶景。
ヘブンスそのはらの紅葉、これだけすごいのに、今日は日曜日なのに、それでも客がそこまで多くないって穴場すぎないか?どうしたんだ、巷の人々は。
・・・あとで知ったが、この年の紅葉のピークはもうちょっと前、10月下旬だったらしい。ええ?これでピークを過ぎた状態なの?いやいや、もうこの状態で十分ごちそうさまですよ?

ロープウェーの終点近くは、赤赤と染まっていた。今日は快晴で濃い青空ということもあって、秋の終わりの主張がとても華やか。

ロープウェーから降りる。
標高1,402メートル。只今の気温、12.9度。
ここでも「天空の楽園」の看板が。
ロープウェーの運行は一旦16時で終了するが、休憩時間を挟んで夜にまた運行を再開するそうだ。スキー場のナイターゲレンデというのは珍しくないが、スキーシーズン以外で夜間にロープウェーが動いているのは珍しい。

ロープウェー乗り場の正面にあった建物に入ってみる。
がらんとした屋内。

壁に、「萬岳荘って?」というPOPとともに、紹介記事が張り出してあった。雑誌「PEAKS」に連載されていた「シェルパ斉藤の山小屋24時間滞在記」という連載記事。

萬岳荘は今晩僕が泊まる山小屋なので、ざっと目を通しておいた。こういう紹介記事は、貴重だ。
最近の山小屋はwebサイトを持っていることが増えたが、情報量が少なかったり、情報が古かったりしてこちらの疑問が解消しないことが多い。そして、一般的な登山者も、情報発信がSNS中心となり、がっちりと山小屋紹介をしてくれるサイトが相変わらず不足している。
特に山小屋というのは、一部の小屋を除き冬期休業する。毎年、「営業のはじまりと、おわり」がある場合、それをきっかけにサービス内容やお作法がガラッと変わることはよくあることだ。
特にコロナで山小屋は営業スタイルを大幅に変え、数年前の情報でさえほぼ信用できない状況だ。
この「山小屋24時間滞在記」には、「料理の提供はできないが、食材の提供は行っている」との記載がある。自分で野菜を焼いたりして食べてくれ、厨房は使えるから・・・という、自炊スタイルだ。
しかし、現在の萬岳荘の公式サイトには、この食材提供について全く記載が見られない。どうやらサービスを廃止してしまったらしい。

この「山小屋24時間滞在記」の面白いのは、山小屋の間取りが丁寧に描かれていることだ。後日、書籍化されたので僕はこの本を買った。
あくまでも、著者のシェルパ斉藤氏が長年かけて全国各地の山小屋を渡り歩いた旅行記だ。山小屋のガイド本ではない。そのため、情報が結構古かったりして、ガイド本的に使いたい人には明らかに不向きな内容となっている。
それでもこの本が面白いのは、100を超える山小屋が紹介されていることと、山小屋の間取りがわかる絵がとても興味深いからだ。狭い土地で、限られた人的・資源的リソースで建てられた山小屋なので、どれも作りが独特だ。小屋のスタッフが寝る場所が殆どないとか、スタッフ限定の風呂場が一般客からは見えないところにひっそりあったり、絵を見ていると面白い。

それはともかく、ヘブンスそのはら。
標高1,400メートルまで上がってくると、随分空が広い。
ゆるやかで幅が広いゲレンデが、ここにはある。
https://mt-heavens.com/map-green
ここからセンターハウスまで、ゆるやかな下り坂。

センターハウスに通じるゲレンデは、「天空の遊歩道」名付けられていた。
すぐ脇にリフトがあって、ロープウェー乗り場からセンターハウスまでをリフトで移動することも可能だ。
チケット代金にそのお金も含まれているので、使わない手はないのだが、結構遊歩道を歩いている人がいた。歩くのも苦にならない程度の、穏やかな斜面。
僕はというと、ケチくさいので「チケットがあるならば、ぜひリフトに乗っておきたい」と思っていた。しかしちょうどその時、旧友のFishから電話がかかってきた。電話応対のため、歩きながらFishと会話し、そのままセンターハウスに向かった。
Fishは15年来の女友だちだ。台灣出身で、昔は台灣旅行にお世話になったりしたものだ。

すでに結婚して子どももいるそうで、おかげですっかり疎遠になっている。そんな間柄で、数年ぶりに向こうからいきなり電話をかけてきたのでびっくりした。何事だ、と。

Fishと話しながら、ゲレンデを下っていく。
ゲレンデ脇の木々を見ると、さすがに標高1,400メートルともなると紅葉も終わりに近づいていた。すっかり葉を落とした木もあちこちにある。

やたらと空が青いし、紅葉がバキバキに写真に写る、と思ったら、今回カメラに装着したPLフィルターのおかげだった。
どう設定すればちょうど良い塩梅になるのかがわからないので、フィルターをクルクル回しながら加減を調べる。

センターハウスにやってきた。
ここには売店と食堂があり、キッチンカーも停車していた。驚いた、ここはロープウェイでないとたどり着けない場所だと思っていたが、関係者限りとはいえ車が入ってくることができるのか。

センターハウスとロープウェー乗り場を結ぶ、ペアリフト。

結局Fishとの話は全然終わらず、1時間以上続いた。
話の内容は、彼女の仕事に関するお悩み相談だったと記憶している。
「声を聞くのなんて、果たして何年ぶりだ?」という間柄で、お悩み相談が長丁場になったことに笑ってしまう。なんで僕に相談しようと思ったのか不思議だが、何にせよ「そうだ、おかでんに話してみよう」と頼りにしてくれたのはありがたい。
しかしそのため、萬岳荘に行くバス便を1つ乗りそびれてしまった。

開き直って、センターハウス前で少し時間つぶし。
今回の装備品の写真を撮っておく。
ザックは38リットルのもので、これから4食分の食事が入っていることもあって結構ぎっしりだ。
萬岳荘泊、しかも有料とはいえ厨房設備が使えるので、寝袋も調理器具も持参していない。それでこのサイズ。ちょっと量が多いのだが、早朝出発で気温が氷点下になる見通しのため、着るものが増えてしまった。

センターハウス正面のゲレンデをバックに記念撮影。
ここからクワッドリフトに乗り、山を登ったところに標高1,600メートルの展望台がある。そこからバスに乗ってしばらく行った先が、萬岳荘。

センターハウスの中に入ってみる。

センターハウスの中。スキー場内ということもあって、独特のガランとした雰囲気がある。床が殺風景だからそう感じるのだろうか。
(つづく)
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