13:23
清津峡から駐車場に戻る途中、道の傍らに道路を除雪した雪が積み上がっている場所があった。
ここでタケを遊ばせてみる。
やっぱりタケは冷たくて手が濡れる雪に対して、恨めしそうな顔をする。積極的に遊ぼうとはしなかった。
そうか、「子どもは雪が大好き」というのは先天的に持っているものじゃなくて、経験を積み重ねることによって獲得する楽しさなのか。例えるなら、最初は苦くてまずかったビールがだんだん美味しくなっていくような感じだろうか?
雪の壁を少し削って、タケの眼の前で小さな雪だるまを作って見せる。
眼の前の白くて冷たい「何か」が、ボールのような形に変化したことに彼は少し興味を持ったようだ。ちょっとだけ触ってみた。しかしやっぱり冷たいことには変わりないので、手をパンパンと叩いて水分を振り払っていた。
13:50
宿に向かう途中、「道の駅 南魚沼」に立ち寄った。
国道17号線沿いにある道の駅だ。この道の駅が特徴的なのは、枕のようなサイズの袋に入った、せんべい・おかきが山積みで売られていることだ。さすが米どころ新潟だけあって、米菓だらけだ!と驚かされる。
しかも、巨大な袋に入っているだけでなく、その値段が安いのも目を見張る。大きな袋に入っているのに2袋500円からという値段設定になっている。高いものでも1袋390円だ。390円の商品が高級品に見えてしまう錯覚ができてしまうくらいだ。
甘いものに目がないいしだけど、しょっぱいものには興味がないかな?どうかな?と思っていたが、彼女は「キャー、すごい!」と大興奮していた。どれを買って帰ろうか、入念に吟味をしはじめた。彼女が喜んでくれて、ここに来て良かった。
「安いんだし、生鮮食料品じゃないんだから欲しい商品があったら全部買えばいいのに。」と思うかもしれない。でも僕らは明日、新幹線に乗って東京に帰ることになる。せんべいやおかきはとても容積が大きな食べものだし、無理してバックに詰めたらバキバキに割れてしまう。ドアtoドアで車で移動する人でない限り、物理的に買える量というのは決まってしまう。
14:19
3袋のおかきを買ってご満悦の我々は、駐車場の片隅にタケを連れていき、また雪を遊ばせようと試みた。親としては、「せっかく雪国に来たのだから、雪と一緒に遊んでほしい」と思っているからだ。僕の中に、「少しでも元を取りたい」というセコい気持ちがあるのは事実だ。
しかし、タケはやっぱり雪に興味を示さない。それよりも、駐車場の車止めの上を平均台のようにバランスを取りつつ歩くほうが楽しいようだ。端っこまで歩いたら、「もう一回!」と言い、いま来た道を戻ることを繰り返した。
人間は、己の欲求を主張する言葉を早く覚えるんだな、と感心させられる。「無い!」「もう一回!」「ヤダ」は他の言葉とくらべてとても積極的に喋る。
14:23
彼を雪のあるところに連れて行って、「ドーン」と掛け声をかけながら雪の上に立たせてみた。ザクザクした踏み心地を楽しんでくれるんじゃないか、と思ったからだ。しかし、まだ彼は雪に対して心を開こうとしない。
親が手を引いて、雪山を登るのをサポートしてみたけど、一回彼はツルッと滑って、それ以降「もう雪は嫌だ」という態度を示すようになった。
これ以上無理に雪と遊ばせても逆効果だ。いったんここはタケと雪との遊びは終了。
・・・で、車に乗せるとき、「乗りたくない」と暴れるタケ、そのタケをチャイルドシートに座らせようと苦労するいし、という展開が後部座席で展開される。
本日の宿、「こぐりやま山荘」に向かう。
六日町市の中心地から離れたところにある宿だ。明日の目的地である十日町市の松代からは車で45分くらい離れており、宿として選ぶには決して便利な場所ではない。それでもここを選ぶことになったのは、他の宿が全然空いてなかったからだ。
ちょうど政府主導の施策である「全国旅行支援」キャンペーンが実施されており、COVID-19で冷えていた旅行需要が急回復中だ。それで空室がないのに加えて、需要と供給によって価格が決まる宿泊業独特の値段設定のおかげで、3月11日に空室がある宿はびっくりするくらい高額だった。
「こぐりやま山荘」は他と比べて割安だったので、選んでみた。とはいっても、「ペット同宿可」の宿で、なおかつ「わけあり部屋なので安い」ということなので、どんな一泊になるかは未知数だ。
15:00
宿に向かう道は、あちこちが冬季通行止めになっていて、何度か大回りを余儀なくされた。スキー場の脇を通っていく道だけが冬でも除雪されていたので、その道を通る。
なるほど、なんでこんなところに宿があるのだろう?と思ったら、スキー目当てのお客さんが泊まることがあるからなんだな。
チェックインする前に、宿の手前にあるカフェに立ち寄る。一旦、カフェの存在に気づかずに行き過ぎてしまい、Uターンしてしまうほど地味な存在だった。これは「偶然発見して立ち寄る」のは難しい。繁華街ならともかく、山の中でこの地味さはすごい。
調べてみたら、「ひいらぎ山荘」という宿に併設されているカフェという位置づけだった。なるほど、だから地味なのか。
営業は16時までと短い。ランチは14時までやっていて、ランチプレートの人気が高いらしい。
僕らはコーヒーとケーキを注文する。セットで900円なので、安い。
15:04
静かな時間が流れるカフェ。
旅行で「今日はもう何も予定がないぞ」という時間はとても贅沢だ。子どもがいたとしても、そう思う。このあと宿にチェックインをするだけで、あとはご飯の準備も、片付けも、お風呂掃除も、何も考えなくていい。家で「今日はもう何も予定がないぞ」というのとはわけが違う。
以前、僕の母親が「正月に、家族旅行に行くのが夢だ」と繰り返し言っていたことを思い出した。「え?でも、正月だと宿代がすごく高いでしょ?」と聞いたら、「正月の準備をあれこれしなくていい、と思うだけでとても気持ちが楽になる」と母親は答えた。そのときは意図をあまり理解できなかったけど、今ならその気持ちがよくわかる。
15:14
そんな優雅な時間の中で楽しむコーヒー。
タケが机の下に潜ったりして、遊びたがるのを抑えないといけないけれど、それを踏まえても優雅だ。
本当なら、上越市の「うしだ屋」さんのところに遊びに行く予定だったが、なにせ一家全員病気なので仕方がない。でもむしろそのおかげでゆっくりする時間が取れたのだから、だれも何も損はしていない。「うしだ屋」さんにはまた機会があれば会いに行きたい。
ケーキをいただく。
最近のいしは、オシャレなお皿やカップを見るたびに「ittalaかな?」とお皿の裏に書いてあるメーカー名を確認する癖がある。今回もそう。
前回の彼女の誕生日に、プレゼントで我が家のお皿がittalaになったので、そのせいで特に気にしているようだ。
(つづく)
コメント
コメント一覧 (11件)
エントリーしようかどうしようか思案した結果、今年ものっとれ!に馳せ参じることに決めました。
2023年はいしが出走しましたが、2024年はおかでんが出走します。(いしは弊息子タケと会場で過ごします)
今後、1年おきに夫婦が交代で走ることにしてはどうか、と考えています。
小さい子どもがいる家族が手軽に泊まれる宿が十日町にはないのが悩ましいところです。
結局、今年もお隣の六日町市に宿をとることになりました。