アメリカ食い道楽で肝臓フォアグラ一直線(2日目)

2日目夕食 耐えかねて、自炊

【時 刻】 20:00
【場 所】 ヨセミテビューロッジ・ホテル自室
【料 理】 ・ビール各種 ・ビーフステーキ ・サラダ ・スパゲティトマトソースあえ

2日目夕食の食卓

ヨセミテ国立公園の中をサイクリングしながら、ジーニアスと「なぜアメリカの奴らはデブばかりなのか」という事について議論。

ジーニアス「そらそうだろ、お前だって見ただろ、あの料理。あんなカロリー高いもの食べてて太らない方がおかしいんだって。」

おか「しかし、せっかく太るんだったら旨いモン食べて太りたいよなあ。あんな料理で太るってのはまるでフォアグラにされるガチョウみたいでヤだ」

ジーニアス「でもな、勘違いしちゃいけないのはアメリカ人全員がこうデブばっかりじゃないってことだぜ。ニューヨークとか大都市に行けば、もっとみんなまともな体型してるから。ここにいる奴らなんて、田舎モンが結構多いからこんなにデブデブしてられるんだから。」

日本語が周囲のヒトに通じない事をいいことに、もう言いたい放題なんである。仕舞いには、われわれの前方からまるまると太ったデブが通り過ぎたるたびに「うひょー」なんて訳の分からない奇声を発して友人Kと顔を見合わせ、「た、隊長!今のデブは10点満点でいうところの何点でありますか」「うむ、今のデブは後頭部が3段腹状態になっていたから8点」なんて採点を始める始末。何のために美しいヨセミテ国立公園に来てるんだか、わかりゃしない。単なるデブウォッチングと化してしまった。

夕暮れ。夕食をどうするか、というわれわれにとって非常に重要かつ悩ましい問題を解決しなければならない時間になってきた。「ここはもう自炊するしかないでしょう」ということで、ホテル備え付けの調理器具で料理を作ることにした。

「アメリカといえばステーキしかないでしょう」。ジーニアスがきっぱりとこう断言した。そうだ、その通りだ。せっかく自炊するんだから、いかにもアメリカ・・・っていう料理を作らないと意味がない。そうなれば、安くてデカいステーキをわさわさっと頬張るのは全くもって正しい選択だと思った。早速、スーパーへ買い出しに出かけた。

ステーキ肉はほどなく発見されたが、思ったより安くない。写真の肉(1/4程度食べた後のものだが・・・)、一人前で4.5$くらいだった。アメリカといえば、牛肉は蛇口をひねれば出てくるくらい有り難みの無い食材で、値段だってうまい棒を駄菓子屋で買うくらいの気軽さで買えるものだとばかり思っていた。なんでぇ、日本とほとんど値段は変わらないじゃないか。

多分、ヨセミテ国立公園というものすごくへんぴな所にあるスーパーなので、「流通コスト」「観光地物価」「競合店舗が皆無」などの要因が絡んで値段が高かったのだろう。しかし、それを勘案しても「肉の値段が安くなかった」というのは、アメリカに対して誇大妄想を抱いていた少年おかでんには相当ショックであった。

アメリカの地ビール各種

肉とくればビール、って事で、見慣れない銘柄のビールを大量購入。友人Kが1本だけなのに対し、おかでんは「全種類制覇じゃ」とばかりに、5種類もの銘柄をセレクト。何しろ、1本(300cc弱)が80セント程度で買えてしまうのだ、バーゲンに人生の内半分の体力を捧げる主婦みたいに、必要以上に買い込んでしまった。安い。安すぎる。アメリカでは酒税が非常に低いのだろうか。日本でビールを買うと、その半分くらいは税金として持って行かれてしまうのにねえ・・・。たったこれだけの些細な事だけど、「アメリカに移住しようかな」とふと考えてしまった。相当アルコール依存気味か、俺って。

ちなみに、バドワイザーやミラーといった有名銘柄は1ドル20セント。地ビールの方がメジャーよりも安いという日本とは逆の価格設定だった。日本も、低価格で地ビールを売ることを考えないと駄目なんじゃないかなあ、とわざわざアメリカから遠い日本の地ビールに想いをはせた。

アルコール売場の横には、「アルコールを購入する際はレジにてID提示を求められます」と警告表示が出ていた。なるほど、ここら辺は日本以上に厳しいよなあ、って事で悶絶しながら体の奥深くにしまっていたパスポートを取り出して、一路レジへ。ちょっとどきどきしながら。・・・だが、こちらの予想に反して、「IDを見せろ」とは一言も言われなかった。「お前は老けて見えるから顔パスだったんだよ」とジーニアスに言われたが、「日本人はガイジンからは若く見られる」って事を期待していただけに、激しく残念ではあった。「ちぇっ、ちぇっ、お世辞でもいいからID見せろって言えよなあ。」アメリカは夢と希望をうち砕く国だって事を痛感しました。はい。

ステーキはあくまでもおかず。主食をまだ決めていなかった。しばらく思案した結果、「スパゲティでもゆでるか」って事に決めた。早速、ミートソース缶を見繕ってジーニアスの買い物かごに入れようとすると、「ちょっと待った」とストップがかかった。「あのな、この国におけるミートソースの味ってのはわかってるよな、あのバフェで食べたような味だぞ。そんなまずいモノをわざわざ入れるのはよそうぜ」と真剣に「それだけはやめてくれ」という顔でおかでんに訴えかけてきた。確かに、過去食べたミートソースの味を思い出すと、積極的にその味に近い料理を作って食べたいとは思わない。「そうだな、わかった」とあっさりとミートソース缶を返却した。

旅行中は、「なんでアメリカのミートソースはくどい味わいなのだろう」と不思議でしょうがなかったが、最近になってその味の正体がわかった。チリパウダーだ。自宅でチリコンカンを作ろうとして、たまたま買ったチリパウダーがまさしくアメリカのミートソース味だった。この味にまた出会った時アメリカ旅行がフラッシュバックして、思わず身構えてしまったくらいだ。このチリパウダーが、「これでもか」ってなぐらいに投入されていたらしく、なんとも胡散臭い味になってしまっていたわけだな。

結局、ミートソース缶を諦めて、ジーニアスの勧めに従い単なるトマトピューレ缶を購入した。味付けすればするほどまずくなる、いらん味付けは不要、って事だ。あと、サラダを1パック購入。以上、これにて夕食の買い出しは完了。

謎の調理器具

さあ、夕食の準備だ。まずは缶切りでトマト缶を開けないと・・・ということで、調理器具入れをあさってみたが、缶切りが見あたらない。出てきたのは、謎の器具(写真参照)だった。しかし、この器具はどう見ても缶切りとして使えそうもないシロモノだった。

「でも、これ以外缶切りらしいものがないぞ」「缶切り、もともと配備されていなかったのでは?」「そんなことはないだろう、そうだとしたら、この器具は何だ?やっぱり缶切りじゃないのか?」「そういえば、栓抜きもないよな」「・・・この器具で栓を抜くのか、やはり」

われわれはアタマを抱えてしまった。フロントにこの器具の使い方を教わりに行ってもよかったが、どう説明すればいいのかわからないし面倒くさい。ならば、力ずくでこの器具を使うしかあるまい。友人Kは大きい月形の尖った部分で缶のへりをがしがしぶん殴りはじめた。まるで、石仏を彫る僧侶だ。どう見ても20世紀末を生きる文明人とは思えない光景。

5分ほどして、ようやく缶の一部に小さな穴があいた。本来缶切りってのはこの穴をてこの原理で広げていくわけだが、われわれが手にする謎の器具は、「支点」となるものがない。「力点」と「作用点」しかない。故に、てこが成り立たずに缶を開けられないのだ。尖った部分を穴に突き立て、前後にへこへこ動かしてみても、穴の大きさは全く変わらなかった。

ここで、二人アタマをつきあわせて器具をにらみつけ、あーでもないこーでもないと議論すること10分あまり。器具をぎりぎりまで水平にして穴に差し込み、こじあけるような形で動かせば何とかてこっぽくなるのではないか、という結論に至った。そのねらいは見事的中したが、それでも缶の中身とご対面できるようになったのはそれから30分後の事だった。やはり、文明人らしくない。なんだか磨製石器の時代に逆戻りしたって感じだ。

まあ、そんなこんなで料理はできあがったので、さっそく食事タイムと相成った。450グラムのスパゲティをゆであげてみると、恐るべきボリューム。思わず腰が引けてしまった。いくらなんでも多すぎだ、こりゃ。メインのステーキは、まあまあの味わい。恐れた通り、でかい筋が肉の中を我が物顔でふんぞり返っていたため、なかなか食べにくかった。それでも、それでも、だ。バフェとかで食べる料理よりはるかにおいしかったってのは「自炊して良かった」という喜びと同時に、「塩こしょうしただけのステーキが、レストランの料理よりもおいしかったなんて・・・」と愕然とさせられる事実であった。

さすがに、スパゲティはトマトソースのみの味付けでおいしくはなかった。のっぺりと、平坦な味。まあ、当たり前か。「せっかくだから」と残さず食べようとするおかでんに、ジーニアスが「残せ残せ、そんなもの。日本でもいくらでも作れるじゃないか」とぴしゃり。まあ、日本に帰ってまた作りたい料理じゃないが、確かにおっしゃるとおりなので食べるのはやめにした。ごちそうさまでした。

この食事の評価、4点。スパゲティはおいしくなかったが、焼きたてのステーキで救われたかな、という感じだ。皿や鍋の後かたづけをし、午後10時就寝。

(つづく)

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