スパイシーな夜を、貴方に。(とうがらし料理/赤ちり亭)

カリビアンライス

「また米ですか?」

次にやってきたお皿をみた二人に突っ込まれてしまった。料理は「カリビアンライス」。名前から見たとおり、そのまんまライスだ。でも、「ちょー辛」の印がついているのでとりあえず許せ。

「辛い?」
「いや、辛くないと思う」

ご飯ものだからだろうか。

見た目はチャーハンだが、食べてみると「油で炒めた」モノではないことに気がつく。ピラフのようなものだ。カリブ風ピラフ、と形容するとわかりやすいだろう。

具は何か、だって?いや、そんな事聞くな。もう、何が何だかわからん状態になっている。ハバネロ鍋のせいだ。せめて味の感想くらいでも、だって?それも無理。

赤ちり特製ぶるだっく

赤ちり特製ぶるだっく。

ぶるだっく、とは鶏のもも肉を激辛のタレで漬け込み、しかる後に焼いたもの。韓国料理だが、韓国の定番料理というわけではなさそうだ。一般的な韓国(朝鮮)料理店では扱っておらず、「HongChoぶるだっく」「ぶるだっく食堂」といった限られたチェーン店だけがこの商品を扱っている。

激辛とは聞いていたのでいつの日にかHongChoぶるだっくに行こう、と思っていたので渡りに船だ。ここの店員さんも、これは辛いとお勧めしてくれたし。

で。

「辛い?」
「いや、むしろ甘いくらいだ」

この時点でようやく味覚が完全に麻痺してしまっている事に全員が気がついた。まだハバネロ鍋のせいで口がしびれており、少々の辛さ程度では全く反応しなくなってしまったのだった。そのかわり、鶏肉がもつ甘みの方が上回ったというもの。いちう、お品書きには「ちょー辛」とされているので辛いはずなのだが。

赤ちり風マーボー風ホットグラタン

次にきたのは赤ちり風マーボー風ホットグラタン。

やってきたのは、グラタンというだけあって穏やかな色。さすがに若干赤味を帯びていて「表面のチーズをめくると、中は・・・」という予感をさせるが、なんとも心落ち着く風貌だ。豆腐と、茄子と、マーボーをチーズトッピングでオーブンで焼いたもの。これはさすがに全く辛く感じ無かった。それもそのはず、後でメニューを見直すと「ちょい辛」レベルの料理だった。すまん。「マーボー」と「ホット」という表現に目がいってしまい、それほど辛く無い奴を間違えて頼んでた。

まあ、いまさら激辛なものが出てきてもどうせ味覚は麻痺してるし、傷口に塩をなすりつけるようなものなのであんまりうれしくないが。素直にここは己のミスを褒めておこう。

「ああああああ」

気がついたら、周囲はお客さんでいっぱいだった。基本的に若い客層だ。おにーさん達数名で飲み食いしていたり、カップルがデートで、熱い料理で熱く盛り上がっていたりしていた。大繁盛だ。18時30分時点で客引きをしていたのがうそのようだ。

しまいには、「ただいま満席でして・・・」と来店者をお断りしはじめる状態にまで発展。繁盛しているなあ。

感心ばかりはしていられない。われわれは90分で飲み放題ラストオーダーだったのだが、その後も有料で飲み続け、食べ続けるつもりだった。しかし、お店から「そろそろ・・・」の声。そして、伝票が卓上に。むう、ここはやむをえまい。

とはいっても、鍋の中にはまだ半分近くハバネロ鍋が残っている。さすがにこれを放置するわけにはいくまい。頼んだ以上、遊び半分でなく真剣に対峙し、そして完食したい。

「よし、全員で食べよう」

LEAVE NO MAN BEHIND、と心のなかで叫び、最後のスパートに入る。いつの間にか、「本日の企画の主目的」が「罰ゲーム」に近い状態になっている。この心境の変化に我ながら驚いた。辛いものに尻込みする自分がいるなんて、と。

対面では、わたし。さんが「ああああああ」とうなりながら地団駄を踏んでいた。口と喉以外の別のところに刺激を与えないと、この痛みから逃れられないのだろう。そういえば、先ほどから「帰りたい・・・おうちに帰りたいよぅ」と冗談ながらも弱音を何度も吐いていたな。

全員連帯責任の結果

全員連帯責任、と一人取り皿いっぱい分の具を盛りつけたが、それでもまだ余りがあった。二人前しか頼んでいないのに、結構あるな。というか、これまでがあまりに食べ無さすぎたのだ。うっかり三人前頼んでいなくて良かった。

余らせるという屈辱はなんとしても避けたいので、残ったものはおかでんが責任を持って、ニコヤカに、でも汗だくになりながら食べた。最後は3杯も食べた。これで一応具は全て胃袋の中へ。鍋はつゆを残して奇麗になくなった。とりあえず一安心。

「食べきったように見せかけて、実はつゆの中に具がたくさん残っていた」とか、「取り皿には食べきれなかった具がたくさん」なんてのは非常に恥ずべき行為なので、それは絶対にしなかった。

ここでお店の人が余計な気をきかせて、「シメに雑炊なんてどうですか?」って言ってきたら、あまりの恐怖で失禁していたかもしれん。この凶悪なスープを十分に吸ったご飯を食べるだなんて、悪魔的すぎる。

「いやあ、すごいもん食べたなあ」と一同、驚くやら感心するやらまだ汗かきっぱなしだわ痛いやら、でお店を後にした。

このお店、さすがにハバネロ鍋はやりすぎだ。激辛目当てのわれわれでさえ相当へこたれたくらいなので、ギャグの域に達している辛さだ。本当に「自分に合った激辛」を追求するなら、「赤ちり鍋」をはじめとするノーマルメニューを選び、後は適時お好みにあわせて卓上激辛調味料を振りかけるのが正解だろう。結局、この日、試しに黄金一味は少々使ったもののそれ以外は全く使わなかった。マリーシャープスのBEWEREは体験してみたかったのだが、惜しい。

次回、もしこのお店に訪れる機会があれば、ノーマルメニュー+調味料で存分に楽しみたい。

ちなみにお会計は、3人で8,070円。一人当たり2,690円だったというわけだ。飲み放題を安くしてもらったせいもあるが、それにしても安く付いたな。学生時代のコンパでももっと高くついたぞ。一同、驚く。

でもこの値段の安さ、品物の単価が安いという理由もあるが、それよりも「ハバネロ系の料理でノックアウトされてしまい、後は息絶え絶えだった」という事がある。追加注文を一切しなかったので、3人が食べるにしてはやや少ない量のオーダーで終わってしまったのだった。つくづくハバネロは恐ろしい。ハバネロを舐めたらいかんな。

二次会は村さ来

店の前で全員集合の記念撮影をした後、「さて・・・」となった。

ハバネロで相当痛めつけられたのだが、のど元過ぎればなんとやら、で今はもう平気。逆に、ビールばっかり飲んでいたのでますます意気揚々としている状態。そもそも、辛さのあまりに食が進まず、まだ何かおなかに入れたい気分。

そこで、おかでんから他の二人に「このすぐそばに面白いお店があるんだけど、行きませんか?」と提案。それを聞いたやっさん、「いやー、それはせっかくだから別企画でやった方が面白いんじゃないですか」と言う。

でも、そういうわけにもいかんのですよ。この企画のついでに、こっそりやっちゃいたい事情ってものがあって。

そんなわけで、向かった先は「赤ちり亭」から直線で100m程度しか離れていないであろうお店。そこには、大変になじみ深い「村さ来」の看板が灯っていた。

よりによって村さ来かい。何しに行くのよ。

ふつうの居酒屋だけど

「ふっつぅーの店内ですね」
「そうですね」

なんて言いながら、席に通される。当たり前だが、ごく普通の「村さ来スタイル」の内装。おっちゃん達が安くお酒飲むのに最適、みたいな。お座敷では学生どもがコンパやっとるやんけ、みたいな。

そういえばおかでんが初めてお酒を飲んだ場所が、村さ来だったなあと遠い目をして思い出す。あんまり酒について興味はなかったけど、つきあいで飲んだ。酔った、という状況が理解できず、「んー?お酒飲んでるけど、今まさに酔っているのかなあ?」と首をひねっていた記憶がある。

いかん、おかでんの回顧録になってきた。そんなノスタルジーでこのお店に訪れたわけではない。そもそも、それだったらおかでんの家から徒歩3分で村さ来はある。

お通しが三種類

三人で行ったら、お通しが三種類別々のものが来た。

些細ながら、心憎いサービスだ。

「昨日の残り物をまとめて処分するためにお通しにしちゃった。」というやっちまった感がないのがうれしい。

今日取り上げたかったのは、まさにこのお通し・・・なわけ、ないよな。

四人で訪れたら四種類出てくるのだろうか。何種類お通しには種類があるのか、ちょっとだけ厨房が気になった。

いやいや、そういう主旨じゃないから、このお店に来たのは。

げてもの系メニューが豊富

このお店に来て、われわれは卓上にあるメニューを一回も開かなかった。

開く必要が無かったからだ。

お目当ては、壁に貼ってあった。これが、今回このお店に訪れた理由。
そこには、「大好評人気メニュー」と記されている。まあ、よくある話だ。しかし、その後に続く「大好評」な品々に一瞬たじろぐ。

たにしの串焼き(二本) 360円
カエルの唐揚げ(下半身) 980円
野うさぎの唐揚げ(骨つき) 780円
カンガルーの鉄板焼き 680円
ワニの鉄板焼き 980円
ダチョウの刺身 ダァー 780円
すずめの串焼き(二羽) 360円

要するに、言い方は悪いが「ゲテモノ料理」を出すお店だったのだ。もちろん、これら食材はれっきとして食用として流通しているものであり、ゲテモノではない。単に、「日本人が食べ慣れていない」というだけだ。食わず嫌いが一番よくない、ここは大いに未知の食材に触れ、味わい、自らの知見を広げようではないか。

これを単独ネタ企画でやらなかったのは、おかでんがこのお店を知ったのがつい最近「@nifty」の「DailyPoral Z」に掲載されていたからだ。そこで掲載されていた事をトレースするだけなので、今更感が強かったということがある。

まあ、今日日これだけネット社会になってくると、何をもってパクリとみなし何をもってオリジナルとみなすかは非常に難しい。とはいっても、「数年前掲載されていた情報を元にこのお店を訪問」なら兎も角、「つい先日掲載されたよ」というものを元ネタにするのはあまり気持ちよくない。だから、ハバネロ鍋ついでに訪問、というわけだ。

何を注文するか、3人で議論する。

「タニシは・・・まあ、貝、でしょ?あんまり珍しくないかも」
「カエルは食べたことある。これは中華料理ではそんなに珍しくない」
「すずめは京都の伏見稲荷に行けば当たり前のように売られてるぞ、姿焼きで」

なんていいながら、注文する品を絞り込んでいった。さすがに全品を頼むのは胃袋の状態から考えて無理だ。

結局、「カンガルーの鉄板焼き」「ワニの鉄板焼き」「ダチョウの刺身」を頼んだ。おっと、忘れてはいけない、メニューには載っていないけど実は裏メニューで存在するという「サソリの唐揚げ」も注文しないと。

DailyPortalZを見ていないと、知り得なかった隠れメニューだ。

ダチョウの刺身
ダチョウの刺身アップ

まず最初にダチョウの刺身がやってきた。780円。
メニューに「ダチョウの刺身 ダァー」と書いてあって、「ダァー、って何だ」という話になったが、どうやらダチョウ倶楽部のギャグを意識したものらしい。うわ、つまらん。

ダチョウの肉に対面するのは初めてだが、びっくりするくらい赤い。マグロの赤身は「赤黒い」色をしているが、こちらは鮮やかな赤だ。脂身は全くといって良いほど、ない。

「これは・・・胸肉、かな?」

肉を眺めながら、動物園で見たダチョウの姿を思い出しつつ部位を想像する。確か、ダチョウってあのもっさりしたアフロヘア的胴体から、にょきっと足が突き出ているよな。もも肉って存在するんだろうか。当然、足を動かすからにはその筋肉が必要なはずだが、どこに格納されているんだ。謎だ。

とにかく、この赤さは尋常ではない。一体ダチョウは栄養分をどこに蓄えているんだ。ちょっとでも飢餓に陥ったら、あっけなく飢え死にしそうだぞ。

お皿には、刺身らしく大葉と大根のつまが。しかし、おろし生姜とにんにくが添えられているあたり、馬刺し風にして食べよという事なのだろう。やっぱり、魚肉とは違うのだな。

ダチョウの刺身は醤油でいただく

ダチョウ肉を食べてみる。生姜やにんにくといった薬味を添えてしまうと、馬刺しそのものになってしまいそうだ。まずは醤油だけで頂く。

うん、淡泊。見た目通り、脂っ気が全くないので、淡泊そのもの。鹿とか猪といったジビエ系の臭みがあるかと思ったが、それすらない。物足りないといえば物足りない味だな。ただ、どのような調理方法にも合うとは思う。ハンバーグにしても良いだろうし、ソテーにしても良いだろうし。調味料次第で、味はがらりと変わるだろう。肉そのものに特徴が無いからなあ。

海外では「低カロリー高タンパク」と喜ばれて食されているところもあるやに聞く。ただ、霜降り肉信仰いまだに根強い日本においては、まだこの肉が定着するには時間がかかりそうだ。

ルイベ状態のダチョウ肉

冷凍されている肉を切り分けたらしく、肉はルイベ状態。食べるとシャリシャリするので、やっさんは自分の取り皿の上に肉を広げ、解凍作業を行っていた。

解凍している間にうんちくを語ると、食肉用のダチョウの飼育が日本で行われるようになったのは平成2年。場所は沖縄。ダチョウは生後半年はストレスに弱く飼育が難しいが、それ以降になると強靱な生命力を身につけるらしい。しかも食料はその辺の雑草でも構わない。ヒヨコ段階での飼育ノウハウを身につければ、養駝鳥は容易。何しろ生後9カ月で人を見下ろすサイズにまでデカくなるし、極寒の北海道でも育つ。南の国の生き物という印象が強いが、非常に順応力が高い。

そんなわけで、実は日本のあちこちで食肉用としてダチョウは飼育されている。ただ、ブロイラーのようにケージに押し込めて大量飼育、なんてわけにはいかない生き物だ。一般の流通に乗る程までには至っていないのではないか。「簡単に育つ」と思って取り組んでみたら大失敗、という事例も結構あるらしいし。

さそり!

次にやってきたお皿は、本日のメインイベント、サソリ。

まだこの後カンガルーやワニがやってくるのに、先にメインイベンター登場だ。そういえば赤ちり亭も、最初に小橋建太や武藤敬司といったメインイベンターが登場してしまったな。料理をコースとして捉えたら、大失敗だ。

でも、プロレスの世界では良くあることだ。野外興業の際、この後雨が降りそうだ・・・となったら、試合順を逆にしてしまう。つまり、第一試合がメインイベントとなり、第二試合がセミファイナル、となる。せっかくお金払って観に来てくれたお客さんに、一流選手の試合を見せてあげたいという配慮があるからだ。これだと、興業中に雨天中止となったとしてもとりあえずお客さんは満足して帰ることができる。ただ、運良く、というか運悪く、というか、雨が降らなかった場合、試合が進むにつれて若手選手によるショッパイ試合になっていくので、なんとも締まらない興業になってしまうというデメリットはあるが。

話がずれた。サソリだ。サソリはメニューに載っていない「裏メニュー」なので、どのような調理方法で供されるのかは知らなかった。出てきたのを見ると、あらご立派、見たまんまサソリちゃんな唐揚げで晴れやかに登場。扇形に並べてあるところがにくい演出というかなんというか。それよりも、毒があるしっぽをこちらに向けて威嚇している辺り、挑発的だ。

そのまんま、さそり。

潰してミンチにしました、とか春巻きの皮でくるみました、なんていう小細工を一切行わず、ずばり「私、サソリと申します」と開き直っている様がイカす。お前、自分がグロいと思われている事に気がついていないだろ。

サソリは、昆虫の種類でいったらクモの仲間ということになる。ほら、それ聞いたら安心したでしょ、クモと思って食べれば・・・。いや、ますます食欲がうせる。

サソリは猛毒があることで知られるが、そんなもの食べても大丈夫なんか?という心配が当然ある。ただ、この毒は体内に針で打ち込まれて初めて威力を発揮するそうで、消化器官からの摂取だと問題はないとのこと。そういえば、以前スズメバチを漬け込んだ焼酎をご馳走になったことがあったが、死ななかったな。それと一緒か。ただし、結構シビレたけど。

長野に行ったら蜂の子やざざ虫を興味津々で食べるくらいの性分なので、サソリが素の状態で出てきても特に抵抗感は無かった。からっと揚がっていて、逆に旨そうだ。普段、サソリなる生き物を見ないから抵抗ないのだろう。逆に、「セミの唐揚げ」なんてのが出てきたらおかでんは逃げる。死んで、道ばたにひっくり返っている姿を散々見てきているので、非常に気味が悪い。あれはどう調理されても食べたくはない一品だ。でも、セミを食べる文化も地域(国?)によってはあるらしいので、食文化というのは侮れないものだ。

罰ゲームではない。嬉々として食べるのだ。

早速食べてみる。スパイシーナイツ企画に参加するくらいのメンバーなので、食わず嫌いはいない。「どんな味なんだろう?」といいながら、我先にとサソリに手を伸ばしていた。

・・・いや、若干うそが混じった。我先にデジカメや携帯を取り出し、写真撮影にいそしんでいた、というのが正解。さすがにサソリがお皿に載って「どうぞアタシを食べて」状態になっているのを目の当たりにする機会なんて滅多にない。写真を撮らずにはおれないシチュエーションだ。本日の主目的であったハバネロ鍋にはカメラが向けなかった参加メンバーだったが、こればっかりはめいめいが「マイ記念写真」を撮影していた。

写真撮影が一段落したところで、さて早速食してみる。

「うーん?味がないような」

何とか形容しようとするが、なかなか思いつかない。というより、甲羅のシャクシャクした食感が楽しいけど、それだけの食材だ。そうだなあ、川海老の唐揚げで、海老の味を無くしたもの、といったところか。
特にこれといった味があるわけではないので、少なくともご飯のお供にはならない。酒のつまみオンリー用途だ。しかも、ウケ狙い限定。

カンガルーの鉄板焼き

この後、じゅーじゅー音を立てている鉄板が卓上に運ばれてきた。

鶏肉なのに「おお、美味そうな豚肉だね」と反応したとしたら、「鶏と豚の違いも分からないのバーカバーカ」と言われるだろう。しかし、さすがにこれはなんだかわからん。注文しているけどまだ届いていない品は、「ワニ」と「カンガルー」。二者択一だけど、やっぱりわからん。

店員さんは、「カンガルーの鉄板焼きですー」と言って去っていった。そうか、これがカンガルーか。

牛焼肉のようにも見えるが、それにしては色黒だな。焼き方の加減なのか、それとも地黒なのか。

写真撮影を終えたおかでんを除く二名は、早速食べながら「これは何の肉に似ているんだろう?」と類似している料理名を類推しはじめた。しかし、おかでんはただ一人沈黙。

おなかが痛くなってきた。。。

日本語で「おなかが痛い」と形容すると、大抵「おなかを壊して、下腹部が痛い」事を指す。もちろん、胃潰瘍の人がおなかが痛いこともあるわけで、一概にそうとはいえないのだが、よく耳にするシチュエーションは「下痢」ということだ。ただ、今回はそんなわけではない。みぞおちよりやや下あたり、すなわち胃袋あたりが猛烈に痛みだしたのだった。その痛みに耐えるだけで、もう言葉が出てこない。やられた。ハバネロ鍋が、今頃になって効いてきた。

するどく差し込む痛さと、鈍痛とが入り交じった痛さ。脂汗を垂らしてここはやり過ごすしかない。

「カンガルーの肉って、どこの肉なんだろう?」

無理矢理、二人の話題についていこうとする。

「やっぱりあの跳ねる足が特徴だから、ももの肉だろうか?」
「いや、カンガルーって体をしっぽで支えているから、しっぽの肉かもしれん」
「でもカンガルーってメスの奪い合いでオス同士がボクシングするでしょ。ひょっとしたら腕の肉も相当鍛えられているかも」

なんて議論をするが、結局結論出ず。

二人は「マグロの頬肉みたい」という類似品にたどり着いたようだが、おかでんはもうそれどころではなく、一口食べるのが精いっぱいだった。味?しらん。

ワニの鉄板焼き

続いて出てきたのが、ワニの鉄板焼き。こちらもジュージュー音を立てていて、胃腸が苦痛で悶絶している身からすると五感でイヤがる状況だった。

サソリ以降、お約束のようにレモンが添えられているのが印象的。臭み消しだろうか。

さすがにここまでくるとおかでん、ギブアップ。「ちょっとトイレ」といってトイレにこもってしまった。あまりに痛くて、人との会話が苦痛だったからだ。一人きりになってこの痛みに耐えたかった。

トイレに入ったからといって、吐くわけでもなく、用を足すわけでもなく、ただうずくまって痛みに耐えるだけだ。何かが変わるわけではない。時間だけが過ぎていく。その途中、半分壊れた扉の鍵を開けられ、酔客のおっちゃんたちに中をのぞかれるという屈辱まで味わった。情けない。

しゃがみ込んでいると、なぜか少し体調が良くなった気がした。10分ほどして、ようやく席に戻る。取り残された二名で、この料理が何に似ているかクイズをやっていたようだが、どういう結果に落ち着いたのかは知らない。いや、聞いた気がするけど、覚えていない。

「ウーロン茶でも飲んだらどうですか?」と勧められたが、もう自分が自分であること、を維持するので精いっぱい。外部刺激は一切お断りだった。そのアイディア、却下。でも、後になって考えると、胃腸の炎症を沈静化させるためにも水分で激辛成分を薄めるというのは正しい措置だったと思う。そういう判断すらできないくらい、体調が逼迫していたということだ。

お会計を済ませて、お店を後にした。

歩くと、痛みが全身に響く。これはきつい。途中、繁華街のど真ん中でへたりこんでしまった。「もう駄目だ、先に帰ってください、僕はここでしばらく休んでいきます」。

駅まで徒歩数百メートル、それすら歩けないありさま。

結局、みんなが付き添ってくれて駅まで移動したものの、おかでんとしてはできるだけ体が揺れないようにすり足移動を心がけた。

一番危なかったのは階段の下りだったが、ここは思ったより問題なくクリア。

池袋駅の改札で「じゃあ、皆さんお疲れさまでした・・・」と解散したが、ここまで悲惨な解散は過去初めてだ。ただし、おかでん限定で。他の二人はけろりとしていた。スーパーハバネロチキンを食べているやっさんは「あ、ちょっと私も来ているかも・・・」と危機の予感があったようだが。

やっさんとは同じ方面の電車だったので、一緒に階段のホームを登ったのだが、そこでおかでん、痛み爆発。階段途中でまたもやへたりこみ、「やっさん!先に行っていてください!僕はもう駄目だ!」と脱落、遭難。やっさんは真っ白な灰になっていくおかでんの姿を振り返りつつ、ちょうどホームに滑り込んできた電車へと消えていった。

今まで幾度となくオフをやってきたが、ここまで悲惨な目にあったのは初めてだ。

恐るべし、ハバネロ鍋。恐るべし、赤ちり亭。さすが「裏メニュー」と名乗るだけのことはある。安易に頼むと、痛い目にあう。比喩表現ではなく、本当に「痛い」目にあう。

今回のおかでんの場合、辛いモノが大好きであるが故に発生した事故とも言える。普通の人だったら、ここまで胃腸が悲鳴を上げる前に食べるのをやめていただろう。しかし、そこそこ辛さ耐性があったばっかりに、こういう事になったわけだ。「喉元過ぎれば熱さ忘れる」ということわざがあるが、とんでもない。喉元過ぎたら痛みが始まる、と言える。

もし、激辛は好きではないけど、試しにハバネロ鍋を食べたいと思うのであれば、2名分のハバネロ鍋に対して最低4名、できれば6名くらいが居た方が良いと思う。あと、汁はできるだけ飲まない。それくらい、危険な奴だ。

オフ会はこうして幕を閉じたが、混乱はその後BBSに引き継がれた。各自が自宅に帰宅した直後から、状況を伝えるレポートをあげはじめたのだった。生々しいので、そのまま転載しておく。

148: 名前:おかでん投稿日:2008/11/29(土) 23:16
スパイシーナイツから生還しました。
かろうじて生還、が正解。あともう少しで池袋で土に還るところだった。
座っているだけでもおなかが痛い、歩いたらもうしゃがみ込むしかない、階段を登ると痛くて無理。
こんな悲惨な目に遭ったのはこれまでのスパイシーナイツ史上、いや、おかでんの歴史の中ではじめて。

ハバネロ鍋、ハバネロチキン、すごい強敵です。
もう二度と食べません。というか、食べられません。

二軒目、ワニやらサソリやらカンガルーやらダチョウを食べに行ったのですが、途中から中座してトイレに籠もってました。身動きつかなかった。

これからは、「ひたすら辛さへの追求」はもうやめましょう。お願い許して。
「スパイシー」の名にふさわしく、複雑なスパイスの味わいを楽しむ、辛美味い料理を探訪していきましょう。

149: 名前:おかでん投稿日:2008/11/29(土) 23:16
これから乳酸菌飲料とヨーグルト食べて、明日また来るであろう第二波の痛みに備えます。
おやすみなさい。

参加してくださったわたし。さんやっさん、どうもお疲れさまでした。
途中で中座したり、テンションだださがりで申し訳なかったです。

150: 名前:わたし。投稿日:2008/11/29(土) 23:39
無事にご帰還なされた様で安心致しました。
わたしも帰りの電車ん中で痛み出しました。
決しておなかが痛いわけではなく、胃の上部が痛いとう感じで悶絶しました。
ワニやらサソリやらカンガルーさんとか思い出しながら頑張った次第です。
やっさんとおかでんさんはわたしよりも辛い思いをされてると思いますがどうにが頑張ってください!
応援してます。それしかできないです、すいません。

151: 名前:おかでん投稿日:2008/11/29(土) 23:42
わたし。さんも痛みだしましたか。やはり強烈だなあ、あの料理は。
やっさんは、ハバネロチキンを食べていましたが牛乳とカルピスで中和させていたので、被害は少ないかも知れません。無事だと良いのですが。

お互い辛い状態ですが、耐え抜きましょう。胃の中を洗浄するわけにもいかないので、水分を十分に摂取してひたすら安静にするしかないです。
僕はブルガリアヨーグルト一箱食べて、ようやく一息つきました。
でも急にからだがだるくなってきたぞ。睡眠薬を飲んだ時みたいだ。

152: 名前:わたし。投稿日:2008/11/29(土) 23:52
ヴォルビック買ってきたのでたぶん何とか生き抜けるかと・・・兎にも角にもあんじょうしてください。
何だか分からないけど「ごめんなさい」と言いたいです。

153: 名前:おかでん投稿日:2008/11/30(日) 00:12
痛い!痛い!
尿道が痛い!
おしっこしたら、尿道がもの凄く熱くて痛い!こんなの初めてだ。

おなかが痛い、という表現をさっきからしているけど、一見「腸の状態が悪い(下痢)」による腹痛を想像すると思う。そうじゃないんだよー、胃袋が痛いんだよー。
さすがに今はおなかの痛みは落ち着いてほっと一息ついたんだけど、おしっこが痛いとは思わなかった。

こりゃあ明日が怖い・・・。

154: 名前:やっさん投稿日:2008/11/30(日) 00:22
おかでんさん、わたし。さんお疲れさまでした。
自宅へは1時間ほど前に着いてましたが、おかでんさんの様子が気になって掲示板をのぞきにきたら、わたし。さんも電車の中でやられてましたか・・・

おかでんさんとも話してましたが、ハバネロを食べた後に胃を物理的に動かすと、痛みが激しくなるような感じですね。
私も途中電車の中で少しジンジンきてましたが、やはり乳酸菌の力は偉大だったようで、今は一応落ち着いてます。
ただ明日は私も覚悟しておきます。
おかでんさんもわたし。さんもお互い頑張りましょう。

155: 名前:おかでん投稿日:2008/11/30(日) 18:06
>>154
なんかハバネロ鍋食べた3名が、帰宅後妙な連帯感になってる(笑)。
そうか、やっさんもやられましたか。

僕なんか、池袋駅ホームに階段で上った時点で動けなくなり、「やっさん先に行ってください」
と階段から見送ったくらいでした。
その後、最寄り駅に着いて駅の階段を下りるときは落ち着いていたので、「あ、もう回復傾向だ」と思っていたんですが、今度は自宅マンションの階段を登るときに激痛。
どうやら上り階段だと駄目だったみたい。

おかでんは本日「第二波」は防げました。ただし、体がだるくて、眠くて、一日中寝て過ごしてます。
相当体(肝臓?)に負担がかかった様子。

悲惨だ・・・。

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