02軒目:ヴェトナムアリス(ベトナム料理)
中本のソーラーメンを手にしたまま、すぐ隣のヴェトナムアリスに並ぶ。
昨年は、食べる順番やバランスを気にしたものだ。「同じ日にカレーが重複しないようにしよう」とか「ご飯ものを食べた後は麺類を」とか。しかし今年は、何も事前に計画を立てていない。どうやら会場が混雑しそうな気配なので、「空いているお店から順に」というのが現実的だからだ。で、運良くどのお店も空いてりゃ、右端から順に行けばいいやと。
そんなわけで、中本の左隣、ヴェトナムアリス。
・フォー ガー(鶏肉のフォー)
<Sサイズ>800円 <Mサイズ>1,200円
辛さ→小辛、中辛、激辛
・ブンリュウ フォー(トマトとカニのフォー)
<Sサイズ>800円 <Mサイズ>1,200円
辛さ→小辛、中辛、激辛
赤い服を着た店員さんがいる厨房。「ブンリュウ フォー」のSサイズ、激辛を注文した。料理が出来るまでの間、接客担当の店員さんに話を聞いてみたら、石鍋裕シェフがオーナーを勤める「クイーンアリス」の系列店らしい。へえ、初代フレンチの鉄人がベトナム料理の店までやっていたのか。
「でも、ベトナム料理ってあんまり辛いものがない印象ですけど?」
と聞いてみたら、
「そうなんですけど、今回のために新しいのを開発してきました」
と嬉しそうに教えてくれた。
これがブンリュウ フォーSサイズの激辛。
上に、刻んだ唐辛子が含まれる辛味噌がぼってりと盛られており、なるほどこれで激辛に仕立ててあるわけか、と感心する。
フォーといえば、澄んだ鶏肉のスープで、もやしとパクチーが載っているシンプルなものを想像する。しかしどっこい、このブンリュウフォーはいろいろ具沢山だ。こういうイベントものの料理というのは「高くて量が少ない」というのが相場だが、激辛グルメ祭りにおいてはそういうぼったくり感は少なく、満足度高い。
さて、両手がふさがったところで、いったん席の確保に行く。
二種類の料理を並べてみたが、激辛料理がこうやって並ぶことに軽くテンションが上がる。恐らく、辛さからくる痛みなどに脳が耐えるため、既に脳内麻薬が分泌されているのだろう。
気がついたら両方とも麺類だった。辛いものと麺類は相性が良いようだ。というか、汁物と相性が良いのだろう。ちんたらしていたら麺がどんどん伸びてしまう。早く食べることにしよう。辛い辛い汁を吸い込んで伸びた麺は、すすり上げるとむせてしまうに違いない。
こういう場合、「三角食べ」にするべきなのかちょっと迷う。でもそうやって交互に食べると、何がなんだか味がわからなくなりそうな気がする。だから、まずはソーラーメンを食べ、食べ終わってからブンリュウフォーを食べた。
昨年、「激辛だから」ということを逃げ口上にして劣化した料理を出すお店は一店もなかった。むしろ、「激辛であっても美味いと言わせたい」という気概を強く感じさせられる料理ばかりだった。今年もそのスピリッツは健在で、食べた両方ともとても美味しかった。特にブンリュウフォーはカニなどから出たであろう海のだしがしっかりと味の基本を構成しており、その上で辛さが踊るという心地よさがとても良かった。激辛料理
の中には、鋭い辛さばかりで空虚なものが存在するが、それとは明らかに一線を画するものだった。ソーラーメンは、冷やしであることからするすると食べられ、上にバラエティ豊かに盛り付けられた具も相まってとても楽しく食べることができた。どちらも顔をしかめるような激辛ではないものの、美味しく楽しく食べられるレベルとしてはこれくらいがちょうどよいのかもしれない。
「辛かった!」などという記憶は、後で文章にする際に抽象的だ。もっと具体的な、当時の食の思い出を記録にとどめておきたい。というわけで、「自分の額に浮かぶ汗と、表情」を撮影しておくことにした。
ガツガツ食事をしたあとのおっさんの顔で申し訳ないが、2食食べたあとのおかでんはご覧の通り。やや汗ばんでいるような感じだが、したたるほどではないし、表情も暗くない。四川料理によくある「痺れる辛さ」で度が過ぎるやつに出会った直後は、表情が本当に陰気になる。
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