各自が買い求めてきた料理を一つずつ見ていこう。とにかく、テーブルが料理でびっしりだし、仲間がたくさんいるので慌ただしい。過去何度も、一人マイペースで激辛を楽しんできたので勝手が違う。
しかし、激辛というのはわあわあきゃあきゃあと盛り上がるにはうってつけの素材だ。一人で、しかもオッサンが脂汗をダラダラかいて「ううう」と唸っているのは大変キモいが、仲間同士で「これは辛いね!」「食べられないよこんなの!」って言い合っているのはとても微笑ましい。ましてや、女性が身内にいるならなおさらだ。
まずは、全く辛くない「もちもちポテト」。
麺のように細長いポテトで、辛いモノを食べている最中のお口直しにちょうどよい。でも、気がついたらこういう「箸休め」をひたすら食べ続けてしまい、辛くないものでおなかいっぱいになってしまいそうなので注意だ。
ストイックに辛いものばかりを食べ続けるのもいいけど、こうやって「戦士の休息」を与えるのもいい。
「インドレストランマンダラ」のバターチキンマサラ&ナン。
辛さは激辛だったと思う。ナンがでかくて、肝心のカレーはほとんど写っていない。
辛いモノが苦手な御大、おそるおそるナンを食べて「うん、これなら食べられる」と安堵の表情。さすがにそこまで腰が引けなくてもよいと思うが、それほどこの人は辛さ耐性がない。そんな様を見て、つくづくこの人はつきあいが良い、性格の良い人だと惚れる。普段はチョウチョを追いかけて山に分け入る、心優しい人だ。
でも、心優しくない僕なんかは、「ナンで辛さが中和されますから、カレーも大丈夫ですよきっと」と無責任にけしかける。多分僕がこの御大と同じ年、58歳になった頃には人相がより一層悪い性悪ジジイになっているんだと思う。
一方の善人の御大、悲しいかな騙されるままカレーを一口食べ、「あああっ!」と悲鳴を上げていた。
しかし、このイベント後半にもなると、苦笑しながら「もうね、どうでも良くなってきた感じ。何を食べても辛いから、このカレー程度じゃ今更」なんて言ってた。とはいえ、その後ほとんど口をつけようとはしなかったけど。
「バーンリムパー」のガパオライス。
激辛ではなく、中辛だったかもしれない。赤い色が少ない気がする。メニューの選定と辛さのチョイスは買ってきた人任せ。
挽肉の甘みがある上に目玉焼きがある。さらにライスもある。辛さを中和する素材はたっぷりだ。
「というわけで、これは辛くないと思うんですよ」
また御大にお薦めする。
「えー、辛そうに見えるんだけどなあ」
「それならなおさら、こういう機会でないと食べる機会ってないと思うんですよ。自分から買って食べようとは思わないですよね?」
「まあ、そうだけど」
「じゃあ、味見程度でも食べてみてはいかがでしょう」
案の定この後御大はギャーという悲鳴を上げた。キュウリが一服の清涼剤。
「京華樓」の本場四川風麻婆豆腐。
「ちょっと待って!黒っぽいじゃないこれ!」
御大の声が聞こえた気がするけど、いや、こういうもんです麻婆豆腐というものは。
「ソウルフードバンコク」の「トムヤム唐揚げ・中辛」。
揚げ物は激辛にするのが難しいのか、中辛までしか選択肢がない。これは全く平気で食べられる料理。
「ホルモン焼 幸楽」のホルモンMix(モルモン丼)。辛さMax。
ご飯がついている料理を5人がかりでシェアするのは難しいのだが、辛さを中和させたい人は随時ご飯と一緒にどうぞ、ってことで。
ホルモンの場合、噛みきるためにくっちゃくっちゃと口の中で咀嚼する必要がある。その間い辛さが広がってきてイテテイテ、となるので注意。
「蒙古タンメン中本」の肉ドウフジャン麺(激辛)。
スープがドロドロではないか
「麺にスープが絡むゥゥゥ」なんて、よくテレビのグルメレポーターがもっともらしく語っているが、これがまさにそれ。激辛がまとわりついて、一口すすれば激辛のお花畑だ。
「ああ辛いなあ、辛いなあモウ」
と辛さを口に発しながら食べないと気が済まない、というか我慢できない辛さで大変に結構。
「ナングロ ガル」のネパール伝統蒸し餃子。蒸し上がらない餃子を前に長蛇の列ができていた中、ようやくゲットされた品。これは中辛ということもあって、楽しく食べられる。
さて、本日のメインイベントと目されていた「武蔵野うどん 藤原」の「ドクロうどん」。
うどんの上に乗っている、ドクロにかたどられた唐辛子粉は大したことはなかろう。しかしスープだ、お前はいかん。見るからにやばそうだ。
この料理、どうしてもドクロが目立つ見てくれだけど、影の親分はこっちのスープだ。赤い。ひたすら赤い。
ためしにうどんをつけてすすってみる。うん、辛くない。二口目。・・・ああ、辛いぞ。三口目。・・・手が止まった。あーッ。
このあと、しばらく何も食べられなくなること数分。
辛いモノを食べると、その後本当に次に箸が進まなくなる。口の中が痛くて、手が動かなくなるからだ。よし次を食べよう、という意欲を脳が、手が、口が拒絶する。この辛さを和らげるには、ひたすら時間の経過を待つしかない。
激辛料理にチャレンジ!という趣旨のバラエティ番組がよく放送されているが、あれは明らかにリアクション演出がひどくて見ていて萎える。食べた瞬間にのけぞって悶絶したり絶叫するからだ。実際の辛さというのは、もっとじわじわとくるものだ。そんな、脊髄反射で体が反応するようなことはないはずだ。
人それぞれだと思うが、僕における「激辛料理」というのは、「あー・・・辛い・・・辛いなあもう!」っていうものだ。「辛さの許容容器」というのが自分の体内にあって、その容器から「辛さ成分」が溢れた時に箸が止まる。なので、激辛料理であっても、最初の一口目二口目は案外食べられるものだ。容器の許容範囲に収まっているからだ。
それにしてもこいつの凶悪なことよ。本当に箸が止まる。全員が同じように箸が止まって、一時は誰も何も口にしていない「休憩タイム」になってしまったくらいだ。まあ、調子にのって「唐辛子だっておいしいもんね」とか言いつつスープに浮いている唐辛子をかじったりしていたせいでもあるけど。
このうどんがうまいかというと、もうそういうのを超越して「単に、痛い」。辛くて、うまいというレベルを超越していた。凶器だ。鈍器だ。
厚生労働省は、国民の健康増進のためにこの料理を禁止すべきだ・・・と思えるくらいの辛さだった。いや、素晴らしい。こういう料理があってこその「激辛グルメ祭り」だ。いいぞもっとやれ。
さて、辛いモノ苦手の御大は、予告通り「ヴェトナム・アリス」のフォーガーを買ってきていた。もちろん0辛。
みんなで料理をシェアしながらわいわいと食べていたのだけど、僕は最後までこの料理を口にする機会がなかった。最初は会話に参加していた御大だったけど、だんだん腰が引けてきて、テーブルのすみっこの方で小さくなっていたからだ。で、「唯一自分が心を許して食べられる料理」、フォーガーを抱きかかえるようにしていたからだ。お陰でフォーガーはのびのびになていたけど、御大の心の支えとして最後まで健在だった。
この料理の鶏ダシがきっと御大の心を和ませたに違いない。
ここまでが「一人二品ずつ買ってくる」料理。
一通り食べたところで、エクストラステージ突入。まだ物足りないとばかりに、一人が買って着たのがバーンリムパーのパッタイ激辛。
コイツも案外ガツンとくる辛さ。麺だし、スープはないし、さほど赤くはない。地味な辛さだろうと思われる外見だけど、そうではない。米麺独特のぱさついた感じがあるので、モグモグやっているうちに辛さがガツーンとやってくる。ああ辛い。
というか、ドクロうどんでヒリヒリする口においては、もう何を食べても辛く感じる。ひょっとしたら、アイスクリームを食べても辛く感じるかもしれん。
この日僕は、「南アルプスの天然水 ヨーグリーナ」のペットボトルを2本も飲んだ。飲み物だけで1リットル。それだけ辛かった、ってことだ。カロリーが気になるけどドンマイ。でも、お陰で翌日はおなかの調子が崩れることなく健やかに過ごすことができた。さすが乳酸菌飲料。
「京華樓」の牛スネ・牛モツの四川風和え。
というわけで、結局10店舗12品の料理をこの日食べたことになる。さすがに人数が多いと、いろいろ食べられて面白い。そして、盛り上がる。
今回参加した4名は、「来年もまた行きたい!」と目を輝かせている(御大は除く)。来年もまた、訪れたいものだ。
ちなみに、「ガーリックパラダイス」は賛同者不在だったため、行く事はなかった。さすがに「ガツーンと食べようぜ!」というわけにはいかない料理なので、どうやってモチベーションを高めていくかが難しかった。
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