「マグロォォォ!」
という歓声とともにおマグロ様の登場。まだ解凍しきれておらず、シャリシャリした状態になっている。このままかき氷機にかけたら、まぐろ氷ができそうだ。でも、たぶんその前に刃が詰まってとても困ったことになりそうだ。乾くと、生臭い。
「ほら、折角だからマグロォォォと記念撮影を撮っておくべきではないかと」
よこさんを焚きつけて、マグロが入った袋を手に取ってもらう。さすがに生で触るのは無理だし、頭からかぶるわけにはいかない。
「そう、勝ち誇ったような顔をして・・・」
と指示を出したけど、出来上がった写真を見ると、なんだか生ゴミを持っているだけの写真みたいだった。よこさん、すまん。
ごめんなさい、勝手にいくつか肉を買っておきました。
無茶してナンボの気持ちが発動してしまい・・・
と前日になって犯行予告をコメント欄に書き込んでいたさみさんが、肉を自らの荷物から取り出してきた。なんでも、「肉のハナマサ」に行ったら、たぎる気持ちが抑えられなかったらしい。
さみさんは今回が初登場初参加の方だけど、さっそくいい意味でやりたい放題だ。
「なんですかこれは?」
豚トロがあるのはわかるが、その他の赤いのと白いのが謎だ。
赤いのは、シマチョウをたれに漬け込んだもの。ぶつ切りになっておらず、長い腸のまんまらしい。そいつぁすげえ、でかいことは正義。シマチョウなんてコロコロ網の上で転がすサイズしか知らないので、長いヤツを引っ張ったり転がしたりするのはワイルドで楽しそうだ。
一方白っぽいのは、今朝方3時だか4時だかまで調理をしていた、豚ばら肉なんだという。そのまま焼いちゃえ、というわけでなく、家で下ごしらえをしてくるとは!こりゃ楽しみだ。
今回、買い物は現地で行うことにしてある。バーベキュー場から10分弱歩いたところにスーパーがあるからだ。
やっぱり、みんなでわーわー言いながら買出しをし、現地で調理して食べるというのが一番楽しい。ある意味、バーベキューなんてのは準備段階で楽しさの6割程度を占めるのかもしれない。何から何まで幹事やお店任せで食材が用意されているというのは、ちょっと面白みに欠ける。
どうせ我々がやるBBQなんて、食材を切って焼くだけのシンプルなものだ。さあ食べるぞ!となると話は早いので、買出しに小一時間かけたって全然平気。
ただ、買出しから帰ったらすぐに調理開始!乾杯!とやりたいものだ。そのためにも、炭をセットしておいて、買出しの間に炭火が安定しているようにしておく。
今回は二つの炭火コンロ用に炭をおこさないといけないので、結構の量の炭をスタンバイ。ちょっと炭を消費しすぎではないか?と心配になってしまう。
炭の難しいところは、調子に乗るとガンガン浪費してしまい、BBQ後半になると燃料不足に陥るということだ。かといって炭をケチると、全然火力が弱くて「干し肉を作っているんだか、肉を焼いているんだかわからない」という状況に。
炭火は、火力を強くしようと思って炭を追加投入しても、なかなか火がつかないものだ。タイムラグがかなりあるので、先手先手で運用していく必要がある。
全員で、スーパーまで歩いていく。
徒歩10分かからない程度。
以前のバーベキューでは、買い物かごにポンポンと食材が投げ込まれ、気が付いたら「冬眠でもするのか?」というくらいの量に膨れ上がった。全員で仲良く「あれ食べる?これはどうする?」なんてキャッハウフフと言いながら店内で合議するわけにはいかないから、「これを食べたい」と思ったものを早い者勝ちで投げ込むスタイルだ。もちろん、いい歳をした大人なので、一定の配慮を踏まえているけど。
今回もその無秩序が再現するかと思ったが、我々の目の前にあったのはとても高額な野菜の品々だった。ちょうどこのバーベキューが開催されたころは、「キャベツが1玉500円越え」なんていうニュースが巷を賑わせており、それは決してひとごとではなかった。
「うーん・・・高いなあ・・・」
そのまま黙り込んでしまう。衝動買いをするには、すべての野菜が高かった。高くないのはモヤシくらいだ。
しかし、おつとめ品、として割引になっている野菜も転がっていて、「おっ、これは安い!(だから買ってもいいよね?)」といいつつやっぱり買い物かごにいろいろ投げ込まれていった。
「さつま揚げが好きです」
とカツがいい、さつま揚げがかごの中へ。
「油揚げをかりっと焼くとうまいよね」
と僕がいい、油揚げお買い上げ。ちょっと待て、マグロ様がいることも相まって、西洋料理・バーベキューの様相が薄らいできているぞ?
あと悩ましいのが、「8人いる」ということだ。「これ1パックで8名じゃ少ないよね。じゃあ2パック」と一事が万事そんな買い方なので、「たかが一品増やしただけ」でもどんどん量が増えてしまう。結局今回も、かなりの量になった。
なんだか勝ち誇った顔で、重たい食材を抱えてスーパーから退却する一同。
しばらくぶりに舎人公園に戻ってみると、バーベキュー場はすっかりお客さんで満ち溢れていた。子供が大勢いる団体があちこちに見える。僕らの集団は、子どもが一人もおらず、マグロォォォと叫んでいる怪しい連中だ。
敢えてこういう場で、一人バーベキューをやったらどれだけ浮くだろうか?と思うとゾクゾクする。一人バーベキューでなくても、カップルバーベキューでも随分珍しい光景だろう。やっぱりバーベキューというのは大人数でやるという暗黙の了解があるのだろうか。
放置していた炭だけど、着火できないまま鎮火するという事態にならずしっかり火がおこっていた。いい塩梅だ。
火がおこった炭を分割し、もう一つの「マグロォ専用コンロ」に移す。
マグロォの頭は、購入したお店のサイトによると「アルミホイルを敷いて片面1時間ずつ焼くべし」ということだ。つまり、両面で2時間。かなりの長丁場を覚悟しなくちゃいけない。いざ食べる段になって、既におなかいっぱいになっている可能性、大。
レジャーシートを広げる。
座り込むための場所ではなく、荷物置場として使われる場所だ。これを確保しておかないと、かばんや調理器具、「今すぐ使わない食材」などを転がしておく場所がない。テーブルの上は場所が限られているので、こういうスペースは必須。
で、登場しましたおマグロ様。
さっき買ってきた野菜を切り刻むよりも先に、早速コンロに突撃だ。というのも、早く調理開始しないと延々食べられないからだ。「かまどの鎮守様」としてずっと火を見守ってくれるのはありがたいけど、それにしちゃデカすぎる。早く焼き上げて早く食べ切ってしまいたいものだ。
当初、網に載せるつもりだった。そのほうがぱりっと焼けるだろうと思ったからだ。鉄板の上だと、溶けてきたジュースでジクジクしそうだ。しかし、予定外だったのはバーベキュー場が用意していた網。これまではガッチリしたステンレスの棒で作られたものだったのに、今年からは使い捨ての、ぺらぺらな針金の網に変わっていた。試しに、おマグロ様をその網の上に乗せてみたが、網がおもいっきりしなってひっくり返りそうになったのでやめた。さすがに、「マグロのような重たい物体を焼く」ということは想定していなかったらしい。マグロは極端だとしても、こんなに軟弱な網ならブロック肉を焼こうとしても難儀しそうだ。
よこさんが「有料でもいいから、昨年までのしっかりした網を貸してくれないか聞いてきます」と事務所に突撃したが、しばらくして「だめでしたー」と帰ってきた。もう、しっかりした網は扱っていないらしい。
結局、鉄板の上でマグロ鎮魂祭の開催となった。
半身のマグロ、重さにして1キロ以上。キハダマグロだし、のけぞるほど大きくはない。とはいえ、じゃあお前んちのオーブンレンジでこれを焼けるか?と聞かれたら、無理だ。入りきらないサイズ。
「これをいちいち片面1時間ずつ焼いたらきりがないぞ」
ということで、なんとか鉄板の上に二つのマグロォを乗せてみた。鉄板の設置面が非常に狭いので、この上からアルミホイルをかぶせて蒸し焼き状態にしないといけない。
それにしても、一体どこが食べられる部位でどこが食べられないんだ?
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