「あれっ、野菜ばっかり!?」
マグロォに気を取られていたら、隣の「バーベキュー用炭火コンロ」の上には野菜がびっしりと敷き詰められていた。まるで、「こっちのコンロは菜食主義者専用。あっちのコンロは肉食主義者専用」と分けられているかのようだ。
こっちで巨大なマグロを焼いているので、全体のバランスを取ると野菜を大目に・・・ということなんだろうが、マグロはまだ当分時間がかかる。焼き上がるまでの間、我々は菜食主義者としてこの野菜をモグモグ食べることにしよう。ほら、「野菜から食べた方が太りにくい」っていうし。
というわけで、焼き野菜。バーベキューの本場・アメリカ人から言わせたら「何をストイックなことをやってるんだ?ZENの世界か?」となるかもしれない。違う違う、そうじゃない。
やっぱり、巨大なマグロォを焼いていると、そのインパクトに圧倒されてしまう。そんな傍らで肉を焼くとなると、なんだかトゥーマッチな気になるんだ。だから、自然とバランスをとろうとして、焼き野菜ということになる。
炭火コンロを取り囲んで焼肉スタイルで食べる、というのは人数が多すぎて無理だ。なので、焼き上がったものはお皿に取り、テーブルに運んでからみんなで食べた。
よこさんが持参した「秘伝の味」。奈良県産のタレらしい。見たことも聞いたこともない。
自分とこの商品に「秘伝の味」と名前を付けるのかね、と思うが、そうすることによって「おっ、ネーミングがいいね!買ってみようか!」となるのだから素敵だ。
この商品、「焼肉・万能たれ」と銘打っている。ということは、マグロにかけてもおいしいということだろうか。ちょうどいいや。
「たれのアイディア料理」ということで、ちゃんと「バーベキュー」についても記述があった。秘伝のたれでバーベキューをやったら、それはすなわち秘伝のバーベキューということだ。おいすごい事になったぞ、僕ら秘伝を食べるんだぞ。
でも残念だったな!今日でこの味の秘密は全部バラされるのだ!この舌でしかと判別してやるぜ!いくら秘伝にしたって、わかるモンはわかるんだ。
「・・・砂糖醤油?なんだか、モチを食べるときに付けるやつっぽい」
「それだ!」
けっこうストレートに甘い醤油、といった風情。一般的な焼肉のたれとは毛色が違う。なんだか、昔ながらの素朴な味といった感じ。
待て、「秘伝」を丸裸にするんじゃなかったのか?「~といった感じ。」で終わらせるんじゃねぇよ。
ひとまず乾杯だ。
ビールは500mlを12本も買い込んであったのだけど、酒飲みたちは最初スパークリングワインからスタートしていた。
「泡からいく?」
なんて言ってる。どうやら、彼ら彼女らの隠語としてスパークリングワインのことを「泡」というらしい。でもちょっと待ってほしい、ビールも泡が出るぞ?
乾杯もそこそこに、マグロォテール肉を頂いてみる。見よこの火の通りっぷり。まるで陸に住む動物の肉のようだ。
味については既に述べたとおりだが、時間が経つとお皿の下にじっとりと油が溜まってきた。そういえばツナ缶も、わざわざ「ノンオイル」や「スーパーノンオイル」といった商品があるよな。もともと脂ぎった食べ物なのだろう。このため、ゆっくり食べていたらベチャベチャの油まみれになってしまう。できあがったらすぐに食べるのが良い食べ物。そのかわり味は最高。
焼き野菜軍団を徐々に網の上から胃袋の中へと移動させ、空いたスペースに豚タンを並べた。
このバーベキュー最初の(陸の)肉は豚タンからスタート、というわけだ。もうちょっとガツンとした肉を景気よく焼いても良いのだけど、なにしろ常に視界の片隅に、おマグロ様をくるんで盛り上がったアルミホイルの姿が見える。あれをこのあと食べるのか・・・と思うと、自然と遠慮がちになってしまう。
そんな有様を尻目に、おやびんがバゲットを切り始めた。
今回、当日の天気が雨なのか晴れなのかといった議論ばかりをやっていたせいで、肝心の「シメはどうする?」という話を全くやっていなかった。当日お店で、いきあたりばったりでエーイと焼きそばに決めたのだけど、一方でいつの間にかバゲットが買い物籠に入っていた。何にするんだこれは。トーストでも焼いて食べるのか?
さらに、バゲットだけでなくバターも買っていたので、焼肉にバタートーストとは斬新な、と驚いたものだ。ガーリックトーストにするならいざ知らず、単なるバタートーストっぽい。
・・・と思ったら、買い物籠の奥から塩辛も発見された。なんだなんだ、何が一体始まるんだ?
するとおやびんは慈愛に満ちた顔で、「塩辛にバターを溶かして焼いて食べるの」とおっしゃる。その瞬間は、弥勒菩薩像の笑顔と一緒だった。な、なんてことをするんだ。塩辛にバター?しかもそれをバゲットに?
「ただでさえ辛い塩辛に(有塩)バターだなんて、塩分が多すぎるんじゃありませんか?」と思ったが、あれよあれよと完成。
アルミホイル皿の上で、塩辛を暖めつつバターを煮溶かしたものをバゲットの上に載せる。へー、初めて見たぞこれは。和洋折衷料理、という言い方でいいのかな。それともこれは洋風料理?
塩辛ならではのまったりねっとりした感じが、ザクザクしたバゲットの食感とギャップがあっておいしい。そして、大量に塩辛をバゲットに乗っけると酒飲みのアテだけど、少量なら酒を飲まない人でもちょうどよい塩加減だった。さりげなくBBQ的でないようでBBQ的で面白い。
一方、ずっと炭火であぶられていた本マグロのカマをそろそろ食べてみることにする。
マグロのカマ。若干ピンクが残っているくらいの火加減で食べてみる。
「完全に火を通さなくても大丈夫かな?」
「刺身で食べるのは良くないかもしれないけど、ある程度火が通っていれば大丈夫じゃないかな」
マグロが送られてきた宅急便には、何一つこの手の解説がなかったのでそのあたり全く不明だ。
「まあ、多分大丈夫」
ということでそのままいただくことにした。
味についてはあんまり印象に残っていない。テールで受けたインパクト、カシラの巨大さといったキラキラした特徴がない。せめて、ブーメラン状に大きな形状のままの方が良かったとおもう。1kgくらいのカマの塊のほうが、焼き甲斐があったし食べた時に記憶に残ると思う。
コメント