牛肉記念日

肉を焼くぜ

肉を焼く。最初は仲居さんがお手本を見せてくれたが、その後はセルフで。

ここで「ええいまどろっこしい、時間が惜しいので一度に」とぐわっと箸で肉をつかみ、鍋に投げ入れてはいけない。あくまでも優雅に、一枚一枚ほどきながら鍋にそっと着地させないといけない。

関東風なので、肉に割り下をかけてさっと煮焼いて食べる。野菜を肉と一緒に煮込んだりはしない。

薄切りに加えて霜降りしまくりの肉。あっという間に火が通る。

「固くならないうちに食べなくちゃ」

と声をかけつつ箸を伸ばすが、こんないいお肉は火を通しすぎたって大して固くならないはず。はやくはやくと箸をのばす自分が少し恥ずかしく、それをごまかすための方便に過ぎない。

小鉢

小鉢の料理はあくまでも少ない。そんな胃袋の余裕があったら肉をもっと食べなさい、といわんばかりだ。いやそうなんスけどね。

肉は、一口食べた瞬間に「うはははは」と笑ってしまうくらいの美味しさだった。「口の中でとけちゃーう」なんていうと、テレビのグルメレポーターっぽくてイヤだ。その言葉は使わないように気をつけながら、この今口の中で起きていることを理解しようとした。

それにしても普段食べている肉とは別ものだな。いや、いいお肉はこれまでも食べてきたけど、ここまですごいのはちょっと経験がない。恐れ入った。恐れ入ったついでに、箸休めの何か別な料理、ください。これを何枚も食べ続けるのはさすがにキツい。

お酒を飲まない人はご飯セットを

お酒を飲む人が多いからか、冒頭ではご飯セットは出てこない。お願いしたら出てきた。旅館料理みたいなものだな。

溶き玉子で食べよう
別の食べ方もある

すき焼きは肉ばかりでなく、野菜もあったはずだけど写真を取りそびれた。だから何を食べたか、覚えていない。肉のインパクトの前に圧倒され、写真どころじゃなかったし、肉以外の記憶がおろそかになってしまった。

その肉だが、とんでもない喰い応えだった。薄い肉の分際なのに、一枚一枚がずしんずしんと来る。もともと、砂糖と醤油で味が濃いすき焼きというのはさほど量が食べられるものではない。で、このお店の場合、味の濃さに加えて肉の脂の多さが追い討ちをかけてくる。同席させてもらった他の人は全員女性だったのだが、ものの4,5枚食べた程度で「もうおなか一杯・・・」となっていた。ご飯お味噌汁は箸をつけないどころか、仲居さんに持ってきてもらうことすらしなかったくらいだ。もともと大食漢ではない方だとはいえ、それくらい強烈におなかに溜まる食べ物だということだ。

なるほど、周囲のお客さんが「肉おかわり祭り」になっていないのはそういうことか。

唯一の男性であり、お酒を飲んでいない僕は結構食べることができたのだが、そうはいっても枚数でいったら15枚も食べてはいない。21時頃からの食事ということもあり、おなかが空いていたはずなんだけど後半うんざりしてきてしまった。

これは驚きだった。胃袋そのものはさほど満たされた感じはしない。でも、肉の脂にやられて、箸がいまいち進まなくなってしまうのだった。
「うんざり」というとちょっと表現が悪いか。でも、「脳と、腹と、手先」がどうも一体化していない気がしたのは事実だ。あれれ、もっと食べたいはずなのに、とわれながら不思議だった。

デザート

最後のデザート。口の中がリセットされて、とても心地よかった。

いや、リセットされたのは口の中だけ。肝心のおなかの中はどうも脂っぽさがとぐろを巻いている状況。この状況はお店を後にしても、帰りの電車の中でも、そして家に帰り着いてからもずっと続いた。満腹感を伴うなら、まあよくある話だよね、まだ若気の至りだね、と笑って済む。でも今回のように、満腹感というほどではない状況なので、ずっと頭にクエスチョンマークがくるくる回っている状況だった。

後日、同席した友達に話を聞いてみたが、やはりみな一様に肉の脂にやられてしまっており、「夜中、目が覚めてしまった」「翌日までもたれた」という声が続出だった。おそるべし、特上肉。

値段もさることながら、いろいろな意味で非日常感を堪能できたひと時だった。お祭り感もあることだし、来年もぜひ訪れてみたいものだ。とても美味しかった!

(2014.01.24)

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