
料理の提供開始後しばらくしてから、壇上ではトークイベントが開始となった。この日は「日本ジビエ振興協議会プレゼンツ」と銘打たれており、協議会の藤木徳彦シェフが日本のジビエ事情について語ってくれた。
この人は長野県蓼科でオーベルジュ・エスポワールを営んでおり、実際にそのオーベルジュでジビエ料理を出すことで知られている。全国で年間200億円規模で野生獣の被害が発生しており、その対策のためにもジビエ料理の振興というのは大事だ、という話を聞かせてもらった。
ただ、オラが家の裏山で仕留めた鹿や猪をそのままお客さんに出せばよいかというと、さすがにそういうわけにはいかない。しかるべき食肉加工場に持ち込み、しかるべき処理をしなければならない。そこら中にジビエがうろうろしているといっても、しっかりした生産加工体制が整わないと流通できない、というのが悩ましいところだ。

なにせパンチのある肉たちだ、食べていると当然お酒もはかどるわけで。よこさんはワインなんぞを頼んで飲んでいた。この日の会場は結構お酒が売れたはずだ。僕が酒飲みだったなら、多分酔っ払うまで飲んだと思う。それだけの魅力的な料理だったし、トーク内容だった。目で見て、舌で感じて、耳で聞く。五感に訴えかけるイベントだ。

この後、「ベッカーズ」を運営するジェイアール東日本フードビジネスの人が現れ、「地域再発見プロジェクトにおける信州ジビエの取り組みについて」という話をした。JRとしても、地域の発展は自分たちのビジネスとして重要事項だ。まだ手つかずに近い「ジビエ」は、これから注目していきたいテーマだろう。

5品もジビエ料理が出てきたのだけど、折角だからとチーズ三種の盛り合わせを追加注文。「折角だから」という逃げ口上を使っちゃうくらい、この日は楽しかった。

チェコの文化を日本に伝える「チェコ蔵」のペトル・ホリー氏による、チェコにおけるジビエ文化の解説も。

美味サライ、という雑誌が「ジビエでウイスキー」という特集記事を組んだということが紹介された。なるほど、ジビエのようなしっかりした料理だと、スモーキーでキック感のあるウイスキーとも相性が良さそうだ。水割りではなく、ロックでちびちびやったら至福だな。暖炉なんかを囲みながら。

なるほど、そういう関係で、今日は山崎と白州がサービスで提供されていたんだな。えらく太っ腹だなあ!と驚き呆れていたんだけど、そういう繋がりがあったのか。
東京カルチャーカルチャーのイベントは、このような企業のタイアップものが結構混じるので、えっ!?と思うくらいお得な内容だったりする。お土産でいいちこを一瓶貰ったこともあるし。
しかし、この会場に来て酔っ払う気満々なひとはほとんどいないため、無料で酔えるぞ!それ!とばかりにこのお酒に殺到するシーンは見られなかった。やはりジビエを楽しむ、という人たちはそこそこ金を持っているし、通常の料理に飽きたらないスノッブな人種だ。でもむしろそういう空間が心地よかった。
トークの中で、カラスだってジビエとして食べることがある、という話になって、それは面白い、是非次回はカラスをここで出したい、と盛り上がった。カラス料理!そんなものは見たこともなければ想像すらしたことがなかった。果たしてどんな味なのか。もし次があったらまた参加したいものだ。
(2013.12.19)
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