鍋奉行を成敗せよ!彩の国鍋合戦

風船まみれ

5杯食べたところで満腹になってしまった。せいぜい、あと2杯が限界という雰囲気。そして、急におなかいっぱい食べたものだから、胃腸がびっくりしちゃっておなかを壊してしまった。お手洗いに駆け込む羽目に。もともと酒飲み故におなかを壊しやすい体質ではあるのだが、久々の大食に体がついてこなかったようだ。

トイレに籠もりながら、あれこれ考える。

人よりは大食漢であるおかでんでさえ、5杯で「もうそろそろいいや」という気持ちになっている。ただ、おかでんの場合、「いろいろ食べ歩いてネタを拾おう」という意欲があるからこそ、「限界まで食べよう」というモチベーションになっている。普通の人なら、2杯食べたところで満腹が相場だろう。もうちょっと食べるぞ、と意気込んだとしても3杯だろう。

そうなってくると、この鍋合戦で優秀な成績を収めるためには、いかに「来場者に、早い段階で食べて貰えるか」が鍵となる。平凡なネーミングで出店していたらダメだ。「うちの鍋は美味いんだから、余計な小細工はしねぇ。味だけで勝負だ」なんて強がったら、勝てない。

さて、トイレの近くには飲料の自動販売機があるのだが、そこにも行列ができていた。どうやら、塩辛い鍋を食べているので皆一様に喉が渇くようだ。

トイレ及び自販機の脇にはベンチがあり、この会場内で数少ない「坐ることができる場所」となっていた。そこには子供達が占拠しており、みな無言でPSPやDSで遊んでいたのが印象的。子供には、「鍋食べ歩き」には興味ないか。

会場に戻って、ざっとまだ未確認である店舗を見て回る。もう余命いくばくもない身、食べるお店は十分に吟味しておかないと。

見る限り、行列が長いのは川越藩陣中鍋のようだ。甲冑を身にまとった人たちが宣伝をしている。行列が長いため、人が途中で折り返しになっていたくらいだ。

あと、ひときわ目立つのが、エプロンやバンダナをオレンジで統一したグループ。「究極至高の元気豚汁」だ。何かプラカードを掲げているので、何事かと思ったら「YES WE 豚」と書かれてあって思わず笑った。

多分2008年-2009年頃にこの文章を読めばすぐに元ネタは理解できるだろうが、時事ネタ故に数年後になると何のこっちゃわからないと思う。故に簡単に説明しておくと、この元ネタはアメリカ合衆国第44代大統領バラク・オバマ氏の選挙時におけるキャッチコピー「Yes,We Can」。これは2008年頃は日本語でも流行語に近いくらい頻繁に耳にした言葉だ。

それがいつの間にか、豚汁提供サークルによって「YES WE 豚(とん)」にされているんだからオバマ大統領はびっくりだ。

せっかくだから、このオレンジ軍団に「やーい豚野郎」とからかってやろうかと思ったが、「WE」の中にはおかでん自身も含まれているかもしれないので、やめた。5杯も鍋食べやがって、この豚野郎め。自分で自分を言葉責めにしてみる。

この豚野郎どもはブースの周りに膨らませた風船を貼り付け、そこに「豚」という文字や豚の顔を描いたりしていて派手だった。あまりお金をかけなくても、PRはできるんだなととても感心した。あと、目立つオレンジ色をチームカラーにして統一させた点も頭脳プレイだ。

情熱!祭鍋

宣伝という点では、「情熱!祭鍋」というブースも積極的に声を張り上げ、あちこちにゲリラ的に出没していた。

店頭には、「名代なべ 情熱祭鍋」と記されている。志木市商工会青年部。各地の商工会、頑張っているなあ。何の組織かよくわからない独立愚連隊が出店していたり、「オラが町の名物を売るぜ」とやる気満々な商工会が出店していたり、この無差別級な戦いがとても楽しい。

今後このイベントはまだ規模を拡大していくだろう。その時、商工会だらけになってしまわない事を願ってやまない。商工会の出店は、オラが町を背負っているのでカッコイイのだが、そればかりになると商売っ気がにじみ出てきてしまい、デパートの特設会場でよく行われる「ふるさと市」みたいになってしまう。

なお、この情熱祭鍋だが、看板の上には一升瓶が載っている。なんでも、志木の地酒「しきのまつり」の吟醸酒をぜいたくに使ってます、ということだそうで。それは大変に結構だけど、一体何の系統に属する鍋かのPRができていない。味付けは?具は?結局、よくわからんかったのでスルーとなった。端的に提供品を紹介できないと、お店は集客できないということだ。

YES WE 豚、謎の祭鍋と続いてその隣のブースには「そばの里」というのぼりがはためいていた。蕎麦には目がないので、非常に気になる。看板を見ると、「献上そばすいとん」と書かれてあった。

[6杯目:献上そばすいとん(荒川商工会女性部)]

献上そばすいとん(荒川商工会女性部)

ロハスなヒト達が作った自然野菜と上質なそば粉ででき上がりました!!

荒川ということは、秩父のさらに奥、三峰山の方だ。群馬県と長野県と山梨県の県境に近い山奥。確かに蕎麦の産地として有名だ。しかし交通の便が悪い場所ではある。

それにしても、何ともシンプルなキャッチコピー。字数制限いっぱいに商品紹介しているブースもあるというのに、このシンプルさ。でも、「そばすいとん」というオンリーワンな売りがあるので、これでも十分なのだと思う。

現に、惹かれてしまいそのままお店に吸い寄せられた自分がいる。

お昼前のピーク時ではあるが、このお店は行列はなし。すっと買うことができた。どの店も均等に混んでいるわけではない。さすがに、格差は結構大きく存在していた。

そばすいとん

そばすいとん200円。献上していただきました。

具は大根、人参、白菜、椎茸、そばすいとん、葱。ほうれんそうのおひたしが後のせトッピング。

しっかりした味つけで、田舎料理っぽくて好感。全体的に他店が味を薄めに設定しているのに対し、ここは濃い。そして、大根と人参の甘みがしっかりと出ていて、甘くて美味い。この甘さはみりんの量にもよるのだろうか?そこら辺はよくわからない。これくらいどっしりした味わいの方がおかでんは好みだ。

そばすいとんの食感がいい

で、売りとなるそばすいとんだが、これもおいしい。すいとんという食べ物はもともともっさりした食感だが、そばすいとんになるとさらにそれが拍車がかかる感じ。蕎麦粉100%で作ったそばがきではないと思うが・・・お店の人に確認してみれば良かった。非常に固めにゆでられており、あごを使って噛みしめる事になる。その際、蕎麦の風味が口の中に広がるのが心地よい。好きです、この鍋。

しかし、濃いめの味付けと食べ応えのあるそばすいとん。これいっぱい食べたら結構な満腹感だ。食べ歩き殺しの鍋、と個人的には命名した。これを食べてしまうと、後がキツくなる。

東洋☆ザ・キック

バーリ・トゥード(ルール無し格闘技)の戦場なので、誰が参加しても驚きはしない。アメリカ人が現れて「アメリカン鍋」を作ったとしても不思議ではない。

そう理解していても、やっぱりここは異彩を放っております、「東洋☆ザ・キック」。東洋大学キックボクシング部のブースだ。

まず「なぜキックボクシング部が鍋を?」というところから怪しい。相撲部が「ちゃんこ鍋」を出すなら分かるが、キックボクシング部とは盲点だった。

そして、さらに怪しいのが、なぜかもつ鍋を提供していることだ。しかも、鍋の名前が「大すきもつ鍋くん」というゆるい名前。学祭っぽいノリだ。

キックボクシング=タイ式ボクシングなわけで、やるんだったらトムヤムクン鍋が妥当だと思う。どこで道を面白い方向に踏み誤ってしまったのか。

webで東洋大学キックボクシング部のwebサイトを見たが、何一つこの「ザ・キック」については触れられていなかった。謎の組織だ。アンガーラ。

ただ、分かったことが一つ。2007年にも出店していることが確認されたが、その時は正統派路線で「本場タイで修業したキックボクサーが作るトムヤムクン」を売り出したらしい。しかし、やはり面白くしないと気が済まなかったらしく、鍋の名前が「渡辺・きんに君鍋」だった。よく書類審査通過したな、おい。

わたしブタ ブヒヒイブッヒ ブヒヒヒヒ ブッヒヒブッヒ ブヒヒヒヒーイ

絶好調の東洋☆ザ・キック。

こんな張り紙がテントからぶら下がっていた。

「わたしブタ ブヒヒイブッヒ ブヒヒヒヒ ブッヒヒブッヒ ブヒヒヒヒーイ」

短歌だ。

元ネタを知っているおかでん、手を叩いて大爆笑。ちょうどキャッチーな話題だったので、早速取り入れたその素早さが素晴らしい。多分、元ネタを知らない人は「なんだこの訳のわからん言葉の羅列は」と思ったに違いない。

せっかくなので、なぜこれが面白いか解説しておく。

2009年1月19日朝日新聞千葉版の記事を引用。

山武市出身の歌人で小説家の伊藤左千夫(1864-1913)をしのび、短歌に親しむことを目的にした第57回左千夫短歌大会(同市主催)が18日、同市殿台の成東文化会館のぎくプラザで開かれた。小中高校生と一般の各部で作品を募集し、今回は過去最多の2987の応募があった。高校生の部ではゴリラの孤独を表現した県立成東高校2年菱木俊輔君(17)の作品が市長賞に輝いた。
「ぼくゴリラ ウホホイウッホ ウホホホホ ウッホホウッホ ウホホホホーイ」

昨年春、千葉市内の動物園でゴリラを見て、「ゴリラも人と同じように孤独なのではないかと感じた」そうで、その孤独感を表現したかったという。ゴリラのイメージを文字で表すなら「ウ」と「ホ」だったので、そのふたつでまとめるようにした。
書き始めて30分ほどで完成したという。選者の田井安曇さん(78)は
「素手でつかんだ本音を歌っているユニークないい歌だ」と評価する。

の記事が出た直後、ネットでは「こんなのに賞を取られた他の応募者涙目www」とか「21世紀を代表する前衛歌人誕生の瞬間であった。」といった意見多数で話題になった。

それからたった一週間後に、こうやってパロディが店頭に出ているのだから楽しいったらありゃしない。

しかもご丁寧に解説が付けられていて、それもふざけている。

牧場でブタを見て、「ブタも人と同じように孤独なのではないか」と感じたので、その孤独感を短歌で表現してみました。
ブタのイメージを文字で表すなら「ブ」と「ヒ」だったので、そのふたつでまとめるようにしました。

その割には全然孤独感がなく、ヒャッホー的な浮かれ具合なんですが。

こくみ豚入りたっぷりきのこ鍋

健康的なアホさ加減でぶっちぎっている東洋☆ザ・キックにエールを送りつつ、隣のブースを見に行く。今度は和光体操クラブ。これまた変な団体だ。なんでも、「坂下でストレッチ体操をしている仲間」なんだそうで。そんなクラブが作っているのが、「こくみ豚入りたっぷりきのこ鍋」。

こくみ豚?なんだ、それ。

看板の横には、こくみ豚の絵が掲げられてあった。「僕、こくみ豚デス」と名乗っている。そうか、こくみ豚というのはまげを結って浴衣を着ている、お相撲さんみたいな豚の事なんだなと納得。

いや待て待て、そこで納得してはいかん。そんな馬鹿な。豚だけと、馬鹿な。

調べてみたら、イトーヨーカドーがオリジナルで生産している豚のブランドで、4品種を掛け合わせてそれぞれの長所を一つの肉の中に閉じこめたものらしい。知らなかった。普段イトーヨーカドーでお買い物はしないからなあ。

で、4品種かけあわせたら、このお相撲さんみたいになるのか?・・・拘るね、僕も。

それにしても、この豚の絵の下にこそ、先ほどの「わたしブタ」の短歌を貼り付けてやりたいところだ。絶妙なバランスになったはずだ。

新座市商工会青年部

隣のブースに目をやると、異常事態。

客が皆無というだけならまだしも、カウンターの上に何も料理がスタンバイされていない。新座市商工会青年部の、チゲモツ鍋。

何事かと思ったら、「モツ煮込中」という張り紙がつり下げられてあった。

ああ、痛恨のミスだ。仕込みが間に合わなかったのだろうか。今、ちょうど来場者はピークに達している時だというのに、提供時期を逃すとは。

しかもモツとなると、煮るのに時間がかかる。柔らかくするには結構気合い入れて煮込まないとダメだ。もちろん、下ゆではしてあるはずだが・・・。ちょっと心配。

東松山やきとり鍋

こちらは東松山やきとり鍋。

今、B級グルメの世界では「東松山のやきとり」は知名度が上がっている。ここのやきとりは、「鶏肉」ではない。なぜか、「豚のカシラ肉」を使う。で、辛味噌で食べる。じゃあ焼きトンじゃん、と思うが、なぜか焼き鳥と呼ぶのであった。

それが今度は鍋になるとは、いろいろ派生形があるものだ。というか、相当無理があるネーミングだぞ。仮に炙った鶏肉を鍋に入れても、「焼き鳥鍋」とは言わないでしょ、普通。

出店しているのは「居酒屋串さん亭」。おお、居酒屋がブースを出してるとは。面白いね。東松山市商工会が、「うちの名物の知名度をもっと上げたい」ってやってるのかと思ったが、個人商店だった。

調べてみたら、この「串さん亭」はちゃんと公式サイトがあった。それによると、「東松山やきとり鍋」はこの店が元祖なんだそうだ。元祖、というか、異端すぎて他にやっている店がないのかもしれないけど、詳しくは不明。

興味はあったが、一応態度保留。胃袋とよく相談しないと。先ほどのそばすいとんが確実に体を重くした。

[7杯目:豆乳入りホワイトヘルシー鍋(新座名物にんじんうどんチーム)]

豆乳入りホワイトヘルシー鍋(新座名物にんじんうどんチーム)

地場の野菜と新座名物のにんじんうどんを豆乳入りホワイトソースで煮込んだハートフルでヘルシーなあったか鍋です。

来場前から目をつけていたお店の一つ。「豆乳入りホワイトヘルシー鍋」という言葉に惹かれたからだ。醤油ベースの鍋が多い中、こういう違った味付けの鍋はできるだけ積極的に食べてみたいものだ。

実物を確認するまでもなく、とりあえず購入の列に並ぶ。

おや?

行列がカウンターに近づいた時点で、不思議な光景を発見。鍋の具とつゆが投入される前のお椀に、既に何かが盛り込まれている。・・・麺だ。やたらとオレンジ色した、麺だ。何だあれは。

カウンターには、わざわざその麺のサンプルまである。ここは鍋屋じゃなくて麺屋だったのか?

あらためてこのチームのキャッチコピーを見てみると、「新座名物のにんじんうどんを投入入りホワイトソースで煮込んだ・・・」と書かれている。あ、にんじんうどんだったのね。しかもここ、チーム名がそのまんま「新座名物にんじんうどんチーム」だ。全然気がつかなかった。

結局、これだけ店舗数があると、鍋の名前でしか人は食べる・食べないを判断しないということだ。僕は「豆乳入りのホワイトソース」に惹かれただけだったが、結果的ににんじんうどんという風変わりな鍋に出逢ったわけだ。

それにしても、さっきからだんご汁、そばすいとん、そして今回のにんじんうどん。炭水化物だらけだなあ。余計満腹になるんですけど。

シチューのような鍋

ホワイトソースなので、スープはほぼシチュー。ただし、ベーコンが具に入っているため、結構塩っ気が強い濃厚な味に仕上がっている。7杯目に食べるにしては、正直くどい味付け。ベーコンをある程度塩抜きした方が、豆乳のまったり感が強調できて良かったのではないかと思うが、そうなるとまったりしすぎてダメかもしれない。豆乳って、好き嫌い別れる飲み物なのでこのあたりのさじ加減は難しい。

悪くいえば「くどい味付け」だが、良く言えば「夕食のおかず兼主食になりうる鍋」といえるだろう。うどんが入っていることだし、これいっぱいで食事は完結できる。やっぱり、団子やすいとんと違い、麺が入るとがぜん主食な感じが強くなる。

お子様は好きだろうな、という味付け。

特に人参嫌いのお子様に食べさせるには最適。人参ってほらこんなにおいしいのよ、癖なんてないでしょ、と言わせて食べさせればちょうど良い。ただし、「もともと人参好きなんですが」という大人からすると、人参の個性が薄い気がしてやや物足りない。

具は白菜、ほうれん草、とうもろこし、ベーコン、海老、にんじんうどん。あと、スープの中には大根おろしのようなものが入っていた。赤味を帯びていたので、人参おろしなのかもしれない。正体は不明。

にんじんうどんはおいしいのだが、人参の役割は色つけ程度。あまり人参を練り込む意義がわからなかった。塩味強めの濃厚豆乳スープに圧倒されてしまったからだ。単体で食べるとまた違った印象を受けるとは思う。

栄養バランスを考えて、とか子供の偏食を改善したい、という向きには向いているいっぱいだろう。

寿司屋のつみれ鍋
すし屋のつみれ

にんじんうどんの隣は、「寿司屋のつみれ鍋」。和食の板前さんの格好をした人がテント内を慌ただしく動き回っている。出店者は「太郎寿司」というので、多分本当にお寿司屋さんが出店したのだろう。

ネーミングって、こうあるべきだよな、と思う。単に「新鮮魚介類のつみれ鍋」では客は来ない。しかし、「寿司屋の」と入れた事によって、圧倒的にインパクトが出てくるのだった。寿司屋=新鮮な魚を扱っているはず=その鍋も美味いはず、と来場者は勝手に期待感を膨らませるのだった。具体例を挙げて申し訳ないが、「ふるさと鍋」なんて名前で出しているチームはネーミングセンスが足りないと思う。その名前を見ても全然ドキドキしないから。

この太郎寿司の「ドキドキ作戦」は、店頭に今日使う野菜類を陳列し(パイプ椅子の上というのが急場作り感ありありだが)、なおかつホワイトボードで鍋の具を紹介しているところだった。飲食店でホワイトボードメニューといえば、「その日限りに入荷した、特別なお勧め」という意味合いが強い。だからこそ、なんだかホワイトボードメニューを頼むとお得感を感じる。安直だけどね。そういう演出をするあたりも、憎い。

行列はというと、ざっと周囲を見渡した限りではこの時間帯(12時00分頃)では一番できていた。ただ、行列がでいている=繁盛店とは限らない、ということはこれまでに証明されてきているので、「だから凄い」とは一概には言えないのだが。結構オペレーションには時間がかかっているようで、てきぱきと客さばきはできていない様子。

行列は生き物。つい10分前までは短い行列だったのに、今では長蛇の列・・・なんて事はざらだ。行列が行列を産む。そして、「こんな行列だったら並ぶのはイヤだ」という人が敬遠することで、行列は短くなる。すると今度は「空いている!ラッキー!」という人が行列を作る。この繰り返し。

ただ、おかでんが会場を後にするまでは安定してここは混んでいたようだった。そして、つみれ鍋を食べている人からは「今までで一番おいしい!」という絶賛の声も上がっていた。

ちょっと惹かれたのだが、行列が長いので面倒だった。しかも、つみれ鍋だといまいち燃えないので、とりあえずパス。

[8杯目:すべてが福島県産酒蔵に伝わる伝統の味「かす汁」(白河市ひがし商工会)]

「かす汁」(白河市ひがし商工会)

すべての野菜、魚、調味は福島県産を使い、安心して食べて頂ける鍋。昨年大好評の味を改良し、今年も参戦しました。

時刻は12時15分。既にこの時点で、先ほど食べた「そばすいとん」が「残り25杯」とカウントダウンが始まっていた。短時間のイベントなので、リスクを取らずに売り切ろうとしているお店はそろそろ売り切れが出始めるというわけだ。

ただ、このそばすいとんには常時行列ができているわけではなく、単に仕込量が非常に少なかったのだと思う。

そろそろこちらもラストスパートかけないと。食べたい鍋があったら、さっさと食べないと機会を逸する恐れが出てきた。

そんな中、次のいっぱいに選んだのはかす汁。埼玉県勢が圧倒的多数、というかほとんどを占めている鍋合戦のなかで、遠路はるばる福島県白河市から参戦した強者だ。

「ひねり餅」なるものを入れるのが特徴のようだ。

ひねり餅とは、店頭にこう解説されてあった。

日本酒を仕込むときに、お米の蒸し具合を確認するために作ります。少しの量を手でひねって餅状にします。かなり熱いので大変な作業です。
このまま食べても、焼いてもおいしいです。今日はこれを「かす汁」に入れています!

よくわからんが、もち米ではなくて日本酒用の米(山田錦etc?)で作った餅、といえば手っ取り早そうだ。そんなにスゲー食い物とは思わないが、まあ確かに「いかにも酒蔵」感が出てよろしい。

かす汁

具は、かなりぶっとい葱、豆腐、大根、里芋、人参、そして後のせトッピングのひねり餅が確認できた。

店頭には「本日の食材はすべて福島県産!」として、食材とその生産者一覧が記載されていた。それによると、どうやら他にもかぼちゃと鮭が入っていたようだ。

かす汁。好き嫌いが分かれる鍋だ。

おかでん自身、もともとかす汁はあまり好きではない。あの独特の酒臭さが嫌だ。甘酒すら好まないくらいだ。今回、あらためてその印象を強く持った。特にこのかす汁、酒粕濃度が濃いめであり、どわん、と酒臭さが口の中に広がった。

とはいえ、この時期、寒い中食べるには最適だ。他のさらさらした鍋なんかと比べて、どっしりと体が温まる。そして腹持ちも良い。先代の知恵だと思う。

かす汁を美味いと思わないのは、まだおかでんの舌がおこちゃまだからなのか、それとも単なる嗜好の問題なのか、考えさせられたいっぱいだった。

ただ、思うに、多分これ酒かすと味噌とのバランスがあまり良くないと思う。酒かすが強すぎ。

天日干し自家製大豆のチリコンカン鍋

かす汁を頂いている間に、ブース毎の栄枯盛衰はめまぐるしく変わる。

「東松山やきとり鍋」、売り切れ店じまい開始。

「寿司屋のつみれ鍋」、つい数分前まで大行列を誇っていたが、行列沈静化。変わって、隣の「塩モツ鍋」の行列が伸びてきた。なんの変哲もない「塩モツ鍋」という名前にもかかわらず集客できているのだから凄いことだ。

YES,WE 豚をやっている元気豚汁。「究極至高の」と銘打っているけど、「しょせんは豚汁でしょ?」ということで最初から食べる気はない。しかし、活発に宣伝しているので自然と目に付く。すると、宣伝担当の中に小さな子供も交じっているのでびっくりした。おい、幼稚園児じゃないかお前は。

チーム名を見て納得。「しもにいくら保育園保護者会パパママズwithキッズ」。保育園の保護者がやっていたのかー。しかも、「withキッズ」なので、子供達も大活躍だ。楽しい思い出ができたことだろう。

引き続きブース物色を続ける。事前に気になっていたブースの一つが、ここ、「食文化研究会」が出している「天日干し自家製大豆のチリコンカン鍋」。ケイジャン料理が登場だ。食べてみたかったのだが、胃袋と相談の上、やめた。さすがにチリコンカン(ポークチリビーンズ)は胃にたまるだろ。あと、スペッシャルに美味いということはなさそうで、妥当においしいレベルに納まりそうなので遠慮した次第。

特におかでんの場合、激辛なチリコンカンが好きだ。カイエンペッパーがどっさり入っていないと納得市内と思う。敬遠したのは正解だったと思う。

ここのブース、大行列は無かった物の常に人だかりができている「結構繁盛店」だった。

新倉小おやじの会

こちらは「新倉小おやじの会」が出す、「給食カレー鍋」。給食メニュー人気No.1のカレーを新倉産の野菜と一緒に煮込んだものだそうだ。

カレー鍋、ここ最近急速に市民権を得た鍋の新ジャンルだ。34ブース中1店舗しかないのはちょっと意外だが、でもカレー鍋を食べ歩きする気にはなれない。1店舗あるだけで十分だと思う。

「給食」カレー鍋なんて言ったモノ勝ちじゃないか、と最初は思った。「おふくろカレー」でも「頑固おやじのカレー」でもなんでも、名乗った者勝ちだ。

ではなぜここが「給食」を名乗るのかというと、ソフト麺が入っているからだった。ソフト麺サービス中、と軒先に張り出されてあった。なるほど、それなら納得だ。ソフト麺といえば給食の代名詞ともいえる存在だ。学校給食が無くなってから、ソフト麺に出逢う機会ってホント無くなったなあ。あれほどまでに給食に特化した食べ物は他にはないのではないか?

なお、このソフト麺には数に限りがあるそうで、品切れ次第「単なるカレー鍋」になってしまうとのこと。おい、鍋とソフト麺の数をそろえておけよ。

[9杯目:川越藩陣中鍋(川越藩火縄銃鉄砲隊)]

戦場で作る鍋をイメージしました。焼きにぎり・サツマイモの天麩羅の入った正に力のつく鍋です。

イベント開始直後から安定して集客力を誇っていた「川越藩陣中鍋」。

鎧兜を身にまとった人たちがうろうろして、その存在感だけでPR効果抜群だったこともあるが、前回優秀賞に輝いたという実績も集客に一役買っているのだろう。

ポスターによると、

いざ出陣!
戦の前に作って食べたと思われる鍋料理!
焼おにぎり、サツマイモの天ぷら、滋養バツグンの肉だんご、その他根菜類が入った力のつく鍋!!
刻みねぎをのせて召し上がれ。

と書かれてあった。

なんか突っ込みどころ満載な気がするんですが、気のせいでしょうか。

まず、川越藩って実戦経験、あるの?関ヶ原の戦いにも出ていないようだし、戊辰戦争にも絡んでいないようだ。せいぜい、明治維新がらみで小競り合いがあった程度だと聞き及んでいる。

それから、サツマイモ(甘藷)が入っているということは、江戸時代後期でないとつじつまがあわない。となると江戸後期を想定した鍋、ということになるわけだが、この時代になると開国と同時に入ってきた新式の小銃が登場しており、火縄銃は時代遅れになりつつあった。もっとも、火縄銃を使い続けた藩はあったそうだが、予算の関係なのか兵の練度の問題なのか、ともかく時代遅れだったと。あんまりカッチョエエ話ではない。

他にも鍋に天麩羅やおにぎりが入っているのは当時の食糧事情を勘案するとどうも時代考察を意図的にねじ曲げている気がするが、まあいいか。

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