2020年6月/三密の山・高尾山&高尾山ビアマウントのwithコロナレポート

17:28
薬王院から少し下ったところに並ぶ、だんごなどを売るお店も軒並みシャッターが閉まっていた。人の気配もない。

営業自粛なのかな?と気になるが、ひさしを支えている柱と柱の間に、ついたてになるように透明のビニールシートを張っているのが見える。おそらく、コロナ情勢を踏まえた、飛沫防止のための措置なのだろう。ということは、今でも営業をやっているのだろうか。

「緊急事態明けの高尾山は、お店がぜんぜんやっていない閑散とした場所でした」と書いて、実は嘘でした、というのはまずい。でも少なくとも、この日15時から高尾山に入って、高尾山口駅から山頂の間で営業していたお店は「高尾山ビアマウント」だけだった。「午後からでも登れる山」だけど、この時点では「午後からだと殆どお店がやっていない山」であることは事実だ。

ほんのちょっと前、「日本遺産」なるものに高尾山が認定されたばかりだ。

本当はここでガツンと観光客の来訪を地元観光業は期待していただろうけど、すっかり出鼻をくじかれてしまった。さぞや悔しいことだろう。

でも、高尾山という好立地は今後も有利な観光地であり続ける。いずれ客足は戻るだろう。それまでの辛抱で、持久戦だ。

しんどいのが、大都市から遠い観光地で、コロナ明けでも客が戻るのかどうか不安だということだ。苦しい思いをして持久戦を続けて良いものか、ギブアップしたほうがむしろ良いのか、すごく悩むことだと思う。

17:30
1号路脇に、こんな石があった。「三密の道」だって。

ちょうど2020年春は、「三密を避けよう」という言葉が世間を席巻していた。三密とは、「密閉・密集・密接」の3つの密のことで、このどれかの条件が当てはまる空間では感染症リスクが高くなる、と警告されている。

そんな言葉がなぜここに?と不思議に思ったが、すぐにその理由はわかった。ああそうだ、もともと「三密」は仏教用語、しかも密教で使われる概念だ。先ほどお参りした薬王院は、真言宗のお寺。当然、もともと「三密」という考えがあったというわけだ。それにしても、2020年もっとも流行ったと言えるであろう言葉を、こんな山の中で、しかも石に彫られた文字を見るとは。

密教における「三密」とは、「身密(しんみつ)」「口密(くみつ)」「意密(いみつ)」のこと。生命というのは身体、言葉、心でできていて、これらを整えることで大日如来と一体化するということだ。禅宗あたりでは煩悩とされるであろう「身体・言葉・心」を否定しないで、むしろ積極的に向き合っていく考え方は現実的でおもしろい。

で、この門だけど、僕はずっと「苔抜け門」だと思っていた。なんで苔(こけ)なんだろう?と思っていたけど、あとでこの写真を見た人が「苦抜けだ」と指摘してくれて「あっ」と気がついた。ああ、ここをくぐれば、三密が整って、現世の苦から離れることができるのかもしれない。

せっかくなので、夫婦でこの門の中で密って、記念写真を撮っておいた。夫婦なら密ってもOKだ。

17:37
1号路を振り返ったところ。見よ、この人の気配のなさ。

17時半にもなりゃ、人が歩いていなくて当然だろう?山なんだし・・・と思うかもしれない。いやいやいや、高尾山をナメたらアカン。これくらいの時間なら、余裕で人がばんばん歩いている。

僕はこの光景を見て、「独り占めしてやったぞ!」という儲かった感よりも、ディストピアな感じを受けた。

17:40
ケーブルカー乗り場の近くまでやってきた。ここからは展望がよく、関東平野が一望できる。街の景色は普段どおり。当たり前だけど。それででも、広月コンクリートの町並みの中では、静かに世界が少し変わった。

17:43
気を取り直して、本日のメインイベント、「高尾山ビアマウント」に向かう。今年は、当初アナウンスされていた「6月15日開業」の直前まで本当に営業開始するのかどうかが未定の状態だった。ギリギリまで状況を見極め、対策を打っていたのだろう。

この高尾山ビアマウントは、景色と雰囲気の良さが売りなだけでなく、値段がちょっと安いという特徴がある。サービス精神旺盛な料理とお酒の品揃えなのに、「おや?」と思うくらい安い。都会のビアガーデンと違って土地代が安いからかもしれないけど、おそらく「ビアマウントへの行き帰りに、京王を使ってくれればオッケー」という考えがあるからだろう。電車も、ケーブルカーも、ビアマウントも、京王が経営しているからだ。

僕の友達で、ビアマウントが好きすぎて毎月1回通っている夫婦がいる。その二人が住んでいるのはなんと新浦安、千葉県だ。もちろん京王線にはばんばんお金を落としているわけで、太客といえる。

そんな京王電鉄なので、ビアマウントをバーンと盛大にオープンさせて良いのかどうか、というのは悩ましい。東京の端の山の中とはいえ、「どうぞいらっしゃいませ」と客を大々的に受け入れると、お店の中だけでなく、道中のケーブルカー、電車も混む。

お店に直接問い合わせてみると、「プレオープン」という扱いで営業を開始したのだという。手探りで、ちょっとずつ営業していくことにしたようだ。

どういうのが「プレオープン」なのかというと、従来2時間食べ飲み放題のお店なのに、「90分制」になっているのが真っ先に目にとまる。しかも、延長不可。これまでは、追加料金を払えば30分単位で延長できていたのだけれど。

飲み助からすると、90分というのは短期決戦になる。さっと飲んでさっと立ち去る、そんなスマートさが求められる2020年夏。

その分お値段は少し安くなって、3,400円。

営業時間も、19:30までとなっている。これまでは21時までの営業だったから、1時間半も前倒しで営業を終えている。コロナ対策で夜遅くまでワイワイ飲まないようにしているからだ。なので、今のところは「日暮れ後の涼を楽しみながら一杯」というのはちょっと難しい。

入り口で受付を済ませる。

厳重に飛沫感染予防対策をしたスタッフの方から、チケットを買う。このビアマウントは、Suicaやクレジットカードで決済ができるので楽だ。

19:30閉店なので、90分制度であることを考えれば18時までに入店しておくことが求められる。

チケットとともに、ラミネートされた紙を1枚渡された。これまでにはなかったものだ。読むと、これがフロアマップ。

これまでと同じように見えるけれど、テラスや展望台前の広場部分も客席がずいぶんと減らされていることがわかる。また、この日は展望台の2階部分が閉鎖していた。

ビアマウントは、場所ごとに料理や飲物が置いてあって、それぞれ微妙に取り扱っているものが違っていて客がワクワクするやら混乱するやら、という楽しさがある。しかし、今回はそんなことは一切ない。単に、広場部分にあるフードカウンターにある料理がすべてだ。実は別のところに、隠れメニューが置いてあるなんてことはない。

ソフトドリンクだけ、展望台の1階部分で独自提供しているメニューがあるけれど、それだけだ。

あと、お皿とジョッキは、フードカウンターでスタッフの方に告げればいくらでも出してもらえる。本来なら、入場券についている「お皿券」と「お飲物券」と引き換えに、お皿とジョッキを受け取るルールだったはずだ。そして、食べきったらお皿を交換、飲みきったらジョッキを交換だった。今回は、使いまわしの食器はよくないだろう、ということで一回ごとに交換する運用にしたらしい。

(つづく)

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