行列に並ぶこと10分だったか15分だったか、食券売り場に到達した。店舗ごとのチケットを買うのではなく、全店舗共通のチケットを買うことになる。確か、3枚で500円、5枚で1,000円だったと思う。かき氷5杯だなんて・・・誰が食べるんだよ、と思うが、あっ、気がついたら5枚綴りのチケットを買ってしまっていた。
だって、お得なんだもの。
あと、せっかく19地方のかき氷が集結してるんだ、全体の1/4くらいにはごあいさつをしておかないと、イベントに対して失礼ってもんだ。本当なら、全19かき氷に等しくごあいさつして、僭越ならが一番を決めさせてもらうべきなのに。
一人じゃなくて、二人、三人で訪れているならば5杯なんて余裕だ。朝飯前だ。つくづく、こういうアホ企画に「はいはい、行きますよ」と即答できる人が身近にほしい。そういう仲間はいるのだけど、フットワークが軽い分忙しい方たちだ。そりゃそうだ。
事前に、紙に食べたいかき氷の番号を書いておく。僕の場合、5つだ。それを、食券とともに渡すと、受け取った店員さんが番号をバックヤードに向かって高らかに呼ぶのだった。
バックヤードには電動かき氷機がずらっと並び、スタッフの方が必死になってかき氷を作っている。その氷(全かき氷共通)に、自治体ごとにオリジナルの具をトッピングし、出来上がりだ。
受け取ったかき氷。我ながらマヌケな構図だ。
大の大人一人が、このかき氷5種類が乗ったお盆を手に、「席が空いてない空いてない」とフロア内をウロウロしている。
これで「パパー、こっちこっち!」なんて子供が手を降っていればまだ様になるけど、おや?あのおっさん、一人で黙々とかき氷を食べ始めたぞ?しかも写真を撮りつつ・・・なんて、一体どんな地獄の絵だ。
そんな自虐的な考えは横においておいて、なんとも華やかなお盆になった。見ているだけで楽しい、見ているだけでワクワクしてくる。カラフルだし、見慣れない具がゴロゴロしているし。
ただ、想像はしていたけど、やっぱり量が多いな。これ、一杯あたり200円で食べられるのだから恐縮してしまう。お店で商売として運営するのは無理な値段だ。「おらが地元の特産品PR」という名目があるからこそ、成り立つお値段。生ハムなんて、2切れ載っているけどこれだけでも相当なお値段だぞ?
写真を見てのとおり、「あっ、こいつイロモノに走りやがった!」というのがすぐに分かるチョイスになっている。すまん、「うまそうか、そうでないか」という観点は完全に横に置き、面白い物を選んでしまった。
残酷だな、人気投票っていうのは。食べ物の根本である「うまいもの」を真面目に追求するより、結局見た目勝負だという現実。すまん、甘夏みかんとか食べてみたかったんだけど。
一方、あまりにネタに走りすぎて、選ばれなかったのが「呉氷〜麺」だった。今回19種類の中でもっとも攻めているかき氷だと思ったけど、さすがにやりすぎると食指が伸びなかった。これはこれですまん。
さあ、そんなわけで選ばれしイロモノどもを見ていこう。
まずはこれ、今回僕がもっとも期待していたかき氷「1.北海道幌加内町 和~そば金時~」。
緑色の熊笹シロップの上に、蕎麦の実が載っていてサクサクした食感。あと、蕎麦クレープのようなものが添えてある。
ザクザクと食べていたら、氷の中の感触が違う。かきだしてみたら・・・なんだこりゃー!蕎麦が出てきた。まさかかき氷の下から蕎麦の麺が出て来るとは。これはインパクトがでかい。
ちなみにインパクトはでかいけど、うまいかまずいかは別問題だ。氷を食べていて麺が出てきて、うまいということはない。
これも「よくやったなこりゃあ!」と驚いて興味津々だったかき氷。「7.愛知県豊橋市・東三河 種無し巨峰&チーズ」。
考えてみると、ぶどう味のかき氷自体があまり見かけない気がする。いや、もちろんあるところにはあるのだろうけど、相変わらず屋台のかき氷は毒々しい色をした「メロン」「レモン」「ブルーハワイ」だから、ぶどうというのは(僕にとっては)新鮮。そして、その新鮮さをぶち壊す、さらなる新鮮はチーズ。いやいやいや、ちょっと待て、あらかじめメニュー写真を見ていてわかってはいたけど、本当にキューブ状のチーズじゃないか。違和感がありすぎる。
粉チーズをふりかける、という発想はなかったんか?と思うが、ここに至るまでさまざまな試行錯誤があったのだろう。一見さんがとやかく言う話じゃない。
で、苦労の結晶「巨峰とチーズ」の組み合わせはどうだったかというと、いやー、まあ、そのですね、ぶどうかき氷を食べて、その合間にチーズを食べてますっていう感じ。そのまんまだけど。氷の上に乗ったチーズは冷えて固まり、完全にかき氷と別の存在になっているのだった。
イロモノを選ぼう、という基準があったとしても、そうそう5種類も選べるわけじゃない。ギリギリの当選を果たしたのがこれ、「6.静岡県浜松市 うなぎいも かき氷」。さつまいもとかき氷、という不思議な組み合わせであることもポイントだったけど、名前でついつい選んでしまったことは否定できぬ。
先程のチーズ同様、角切りにしたさつまいもがトッピングされている力技かき氷。悪くないんだが、「毎日かき氷を食べていたのでもう飽きちゃった。何か私に刺激をちょうだい」という有閑マダム向けだ。いきなり選びたくなる一品ではない。
しかし、「うなぎいも」なるさつまいもがあって、それが浜松の特産であるという情報は頭に入った。宣伝効果という点ではバッチリだ。くやしいなあ、なんだかうまいことのせられている気がする。
これも地味に気になっていた一品。見た目は地味だけど。「8.兵庫県養父市 朝倉山椒かき氷」。
メニュー写真はもう少し爽やかな緑色をしていたけど、実物はネロっとした濃い緑。
味は全く覚えていない。山椒ならではのピリリとした味があったかどうかさえ、記憶にない。うん、美味しかったと思いますよ(たぶん)
五杯目のラスト、「18.熊本県菊池市 ゴロっとメロンに生ハムを添えて」。贅沢だと思うけど、全然肩の力が入っていない脱力系かき氷になっている。
そもそもかき氷に「塩っけ」があるべきなのかどうか、というのは審議対象だな。スイカに塩をかけるのとわけが違うぞ、生ハムなんだから。
でも、そういえばさっき「チーズ」という塩っけも食べたな。案外これから、塩っけ要素を含んだかき氷って開拓の余地があるかもしれない。甘いのとしょっぱいのは無限ループが可能だし。
なんなら、つけ麺を食べ終わったら、最後にスープ割りがあるように、「かき氷を食べ終わったら、最後はそこにだし汁を注いで、スープにして飲んでください」という新世代かき氷が登場するかもしれない。
いや、嘘ですなんでもないです。
ういー。全部食べたった。
結論?一言で言うと、途中から全部同じだった。「ひたすら、氷!」。
というのも、氷そのものはどのお店も一緒。食べ比べということで、5種類のかき氷の上半分ばかりをつついていたら、気がついたらどのお皿も下半分だけに。すなわち、氷の国へようこそ。
削り方に特徴がある、とか氷の種類が違う、ということもなく、全く同じ氷を前に最後は若干げんなりした。そりゃそうか、一人でかき氷を5杯食べている時点で何かがおかしいんだ。
それはともかく、大変面白い体験だった。5杯くらいなら余裕だ。これならまだいける。氷アンド氷アンド氷、に飽きがきたけど、ならばさらなるかき氷追加で「味変」をするのもよかろう。
一瞬、本気で「次なる5杯」を考えた。しかし、食券を求めて並ぶ行列は先ほどより長くなっていた。さすがに並び直してまで食べたいとは思えなかったので、ここで打ち止めにした。われながら自制がきいたと思う。
もしここで「次の5杯」があったら、「折角だから全部食べちゃおうぜ」という流れになって、結局一日のうちに19杯食べることになっていただろう。あぶねー。我ながら、あぶねー。
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