アートと笑いの境界線@横浜市開港記念会館

アートと笑いの境界線@横浜市開港記念会館

シュールレアリズムの芸術家が、全く脈略のない二つの言葉を組み合わせて遊ぶ、ということをやっていた故事に倣った企画。

あらかじめ観客から、「前の言葉(形容表現)」と「後ろの言葉(名詞など)」をそれぞれカードに書いたものを集め、それをその場でランダムに組み合わせて言葉を作る。出来た言葉をテーマに、ジャルジャルが即座にコントを行う、という構成だった。

バラバラの言葉を組み合わせるので、当然意味不明な言葉ができあがる。テーマが決まってわずか10秒足らずで舞台が暗転し、コントを開始しなければならないジャルジャルは大変だ。しかし、何事もなかったかのようにコントを始めるその才能は圧巻だった。

アートと笑いの境界線@横浜市開港記念会館

即興で行ったコントのテーマは

「奥歯ガタガタいわしたい死がい」
「ネイティブな牛若丸」
「野性の駅」
「いつにも増してくるぶしの神」

アートと笑いの境界線@横浜市開港記念会館

などと、普通では思いつかない日本語の組み合わせだらけ。それを、打ち合わせなしで瞬時にかけあいのコントにするのだから、これは高度な技術だと思った。もちろん、コントの内容もシュールなものであり、まずどういうシチュエーションでコントを始めればよいのか、そこからして難しい。そして、オチにどう展開するのかも、お互いの身振りや言葉のチョイスから推測し、話を相手にあわせたり、逆に自分で話をリードしていかないといけない。

いやあ、すごいものを見た、という感想。

アートと笑いの境界線@横浜市開港記念会館

第二部は、「なんでこんな作品を作っているのだろう?」という不思議な作風のアーティストを実際に招いて、作品をスライドで見ながら解説してもらうという回。ジャルジャルも居残り、作品に突っ込みを入れたりしていた。

第三部が僕の主目的ともいえる回。僕がもっとも敬愛する現代芸術家、会田誠氏が登場。シュールな漫画で知られる、しりあがり寿氏と一緒に、第一部同様に「客席から集めた、二つの言葉をランダムに組み合わせて、それをテーマに絵を描く」ということをやった。
「吐き気がする企業戦略」
「全米が泣いた国指定重要文化財」

みたいな、大変絵にしづらいテーマが設定された。しりあがり寿氏はまだ「漫画家」として、デフォルメした絵を描いて茶化すことができる立場だけど、芸術家という立場会田誠氏はとても苦しい。制限時間いっぱいまで苦しみ抜いて、結局カンバスを真っ白に塗った作品を「見たことない絶望」というテーマのアンサーとして公表したりしていた。

僕らは普段、できあがった作品しか目にする機会がないけれど、こうやって芸術家が悩み、苦しんでいる様を見るというのもある種の芸術だな、と思ってすごい刺激的な時間だった。

「アートと笑いの境界線」、こういう企画はどんどんやって欲しい。まだ境界線が見えた感じはしない。おかわりが欲しい。

ただ、回を重ねていくと、どんどんお笑い寄りに企画内容が変わっていきそうだし、客層も「お笑いを見たい人」が増えてくるかもしれない。物足りないくらいの頻度で、ときどき開催してくれると嬉しいものだ。

(2019.02.02)

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