団地探検

陸橋で強引に高度を下げる

おっと、うろうろしているうちに標高を下げすぎた。

この道路を越えても鈴が峰団地ではあるようだが、平野に近づいてきたということもありバンギャルドさは失われる様子。普通の民家が建ち並び、部外者が見て楽しいエリアではない。

標高が高いところほど、一風変わった建物が建っているというのは面白い。

なお、この道路を越えるためには長大な陸橋を歩いていかないといけない。エスカレーター?エレベーター?馬鹿言っちゃいけません、気合いで歩け。ひたすら歩け。一応路線バスは走っているので、歩くのがぶちたいぎぃと思っとる人はそちらをどうぞ。

陸橋から下は普通の一戸建て団地

われわれ、下界にはいつくばるアリンコみたいな庶民にはこういう「夢の一戸建てマイホーム」を見せておく。で、油断させておいて、実は庶民が訪れない山の上ではワクワクさせる建物がずらりと並ぶ。全くうまく細工をしたものだ。油断してたぜ。広島に縁あって長いが、まさかこの場所がこういう構造になっていたとは。

第二住宅。37棟が肩を寄せ合う

パパ頑張ってマイホーム買ったよ!35年ローンだけど、頑張って前倒しで返済するよ!感が満点な家には全く興味がない。おかでんのような無頼漢には、殺伐感さえ感じさせる現代芸術的建物の方がお似合いだ。

というわけで、きびすを返してもう少し鈴が峰の中腹より上を歩いてみることにする。

たどり着いたのは「第二住宅」。建物の配置図を見ただけで、ああここは期待してよさそうだ、とうれしくなる。37棟から構成されるブロックなのだが、建物の大きさはバラバラ、配置は何かの暗号か?というくらいまちまち、そして棟の番号の振り方が「えーと、適当でいいや。これ一番。こっち二番」としたかのようだ。

まーた変な建物が・・・。
居住性よりもアイディア重視

うはー。分かっちゃいたけど、ここは凄いな。

ひな壇住宅ほどの派手さはないけど、見れば見るほど変だ。むちゃしやがって・・・。

何なんだろう?建物をデコボコさせることこそが、日本の夜明けぜよ、とでも考えられていた時代があったのだろうか?ベランダがそのとばっちりを受け、猫の額くらいの大きさしか与えてもらえていない。

そもそも、だ・・・。およそ、角部屋って建物側面にも窓がつく・・・。しかしここは何もないっ!何もないっ!何が目的っ・・・何が目当てなんだ・・・?(ざわ・・・ざわ・・・)

階段の取り付け方など、従来のアパート/マンションの概念とは90度ずれているのも物珍しい。これ、最上階の人は階段の上り下りをしている最中に雨に降られると傘が必要。ちょっとユーザーフレンドリーではない。でもそれでいいのだ、デザイン重視なのだ!イヤなら出て行け!ということか。マジパネェっす。

建坪率など関係ないのだよキミイ

当時は建坪率なんていう概念があまりなかったのだろう、建物の間が狭いこと狭いこと。猫の散歩道状態になっている。

でも、こういう道でも住民にとっては使い勝手のよいルートらしく、油断しているとひょっこり狭い道から人が顔を出してくる。縦横無尽に道を知り尽くしているらしい。

自転車でこんなところを、坂道に任せて疾走したら一発で事故だ。また、人と人とがすれ違うのがやっとの幅しかないので、すれ違い際に近所のあの娘とフォーリンラブ、というロマンスがあるやもしれぬ。ハイリスクハイリターンな道ではあるよ。

究極のひな壇住宅発見

もう少し上に登ってみると、これまでの団地を超越する凄い奴を発見した。

鈴が峰西アパート。

名前からして、多分こちらも市営住宅なのだろう。東アパートが相当キテレツだったことを踏まえ、西アパートも負けじとアイディア勝負。

その結果でき上がったのが、リアルひな壇住宅。すげー。こんな建物、できてしまうのか。

鈴が峰東アパートは、建物の集合体で山の斜面を埋め尽くし、ひな壇をこしらえている。それに対して西アパートは、一つの巨大な建物を作っちゃった。建築には詳しくないのだが、多分難易度としてはこっちの方が上だろう。うまいこと山の形と建物全体を融合させないと、大変な事になる。山の一部が崩れたりしたら、建物が歪む。見ろ、日本の土木建築技術は圧倒的ではないか。

チベットのポカラ宮殿みたい

建物を正面から見るとこんな感じ。

チベットのポカラ宮殿を思い出させる。

これまでの建物群が、バラバラなデザイン見本市だったのに対し、ここは「斜面に整然と、かつ必死にへばりつく建物」がテーマらしい。左右対称のきっちりした建物だった。

真ん中に階段があるのだが、壮観

で、このエレガンツ(←意味不明な複数形)な建物、上のフロアへはどうやって登るの?というと、やっぱり階段なのだった。エレベーターなんてぜいたくはこの世界観の中では登場しない。

建物の狭間に、まるでゲーム「ドンキーコング」のような階段があって、さあこれを登れ、今すぐ登れ、と。

これ、上のフロアの人が「新しく冷蔵庫を買いました!」なんて事になったら、配達する電気屋さん参っちゃうな。建物を見上げて、「ブルシット!」なんて、アメリカ人みたいな悪態をつきそう。

きっとこの階段を登り切ると、中ボスくらいはいると思う。きっとそうだ。そうでなければ、レアアイテムが入っている宝箱はあるだろう。勇者だと自負する諸君、ぜひ挑み賜え。

見事なひな壇っぷり

この建物を横から見ると、なんだか面白い。

最上階の屋根から、ピンポン球を転がしてみたい。テンテケ跳ねながら、下まで落ちていくのを見ると格好の憂さ晴らしになりそう。

迷路みたいな廊下

各フロアの廊下は、地下通路状態になっており薄暗い。なにしろ、片側は山の斜面だ。

この怪しさがまたたまらない。こういうのを見て「おおおぅ」と感動するのって、多分男性だけだと思う。女性にはこの良さっていうのかな、味わいってのはなかなか理解が得られないだろう。

ああそうか、通路は段差になっているんだな

当たり前といえば当たり前なのだが、各階の廊下って山の斜面にそって斜めに配置されているんだな。珍しい光景だ。

廊下の上に家があるという構図。お子様が走り回って、下の階の住人に迷惑をかけてしまうとお悩みの奥様。この家なら大丈夫。真下が廊下になっている部屋でなら、少々お子様がドシンドシンやっても怒られることはない。

陸橋を使って下界に戻る

長大な陸橋を二つ通過していくと、ようやく下界が見えてきた。

山の麓まで下りれば、JR新井口駅、広島電鉄商工センター入口駅、そして複合商業施設のアルパークがある。一気に俗世間だ。

100年後までこの鈴が峰団地が現状のまま保存されていたら、産業遺跡になるかもしれんな、と思いつつこの団地を後にした。

そうだ、一つアイディアなのだが。時々フジテレビで放送されている「逃走中」という番組、あの収録をこの鈴が峰団地でやったら最高だなきっと。でも多分あまりにキツすぎてゲームとして成立しないと思うが。

(2010.04.06)

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