俺の引っ越し2013

不動産屋に戻ると、契約を内定した物件を直接管理する不動産屋から、資料が届いていた。

いまだにこの業界、FAXが現役なんだな・・・と書類を見ながら感心する。そういえば僕の職場では、FAXなんて全く使われなくなった。複合機からFAX機能を取り除いても全く困らないくらいだ。

FAX用にアナログ電話回線を生き残らせているけど、もうそれも解約してよいのかもしれない。全部IP電話に統合だ。そんなご時世。

ただ、僕が今回お世話になった不動産屋は、さすがネット時代に現れた新業態だけある。FAXデータはPCで受け取り、必要なものを随時パソコンのプリンタで印刷していた。わざわざFAXの筐体は持っていない、ということだ。

まず、記入を求められたのは「入居審査書」みたいな名前の書類だった。

自分の住所や親の連絡先をはじめとし、収入、勤め先の名前や資本金、従業員数などいろいろ記入を求められる。

事前にこの手の会社情報を調べておいてよかった。手続きがスムーズに進む。

気になったのは、「家賃を何らかの形で補助されているか?」という設問があったこと。会社から住宅手当を受けています、とか、仕送りを受けてます、という選択肢があり、さらにその金額まで書くよう求められた。いいじゃねーかよ人の財布事情は、と思ったが、向こうから言わせたら「よかねーよ、とりっぱぐれないようにするために重要な情報だ」ってことなんだろう。

それにしても、「わたくしという人物はこれこれこういう素性でございます。入居を許していただけますか?」とへりくだっているようで、なんだか変な感じだ。

こっちがここまで情報を開示するのだから、逆にアンタの素性も開示ししろ、と思う。貸す側、借りる側が不平等な扱いだ。

この入居審査書のあて先が「○○不動産」なのだが、実際に窓口となるのは別の「△△不動産」というところで、意味がわからん。いろいろ担当者に聞いて、「○○不動産」というデベロッパーが提供する物件の特約店が「△△不動産」だ、ということがわかった。こういうのも、こっちから聞かないと教えてもらえない。せめて○○不動産のパンフレットなりなんなり欲しいところだ。

いろいろ気になる点はあるけど、まあいいや。

つぎに、「めやす賃料の計算書」という紙が提示された。

敷金・礼金、月額賃料、共益費、更新手数料などもろもろの費用が明記された見積書のようなものだ。
48ヶ月借りた場合、2年ごとの契約更改なので途中1回の更新手数料がかかる。そういうお金をひっくるめて、48で割った数字も記載されている。この物件に4年間住むのにかかる総費用と、1ヶ月平均の費用というわけだ。

親切だとは思う。ただ、48で割った数字なんてあんまり意味がないけど。

契約日に基づいた日割り計算までは考慮されていない。

「ふーんそうですか」と読み飛ばすところだったが、担当者から「内容をご確認のうえ、一番下に署名をお願いします」と言われて「えっ?」となった。

いやちょっと待った、これの何に対して署名するの?

書面をよく読むと、「私は上記物件のめやす賃料を確認し承諾のうえ、本物件に申し込みます。」と書かれている。

「これ、『めやす』ですよね?曖昧すぎて、何に対して合意したのか/していないのか、よくわからないですよ。こんなのに署名しなくちゃいけないんですか?」

たじろいでいたら、担当者は

「ええ、でもあくまでも『めやす』ですから。内容を確認しました、って意味で署名をしていただければ」

とかいう。さらっと怖いこと言うなぁ。

やりたいことはわかるんだが、こうやって借主側を軽視するような不動産業界の仕組みが気に食わない。いくら「めやす」と称していたって、いくら後日あらためて契約書を取り交わすとはいえ、ここで署名をするということは重要な意味を持つ。それをこんなにあっさりとやってくれっていうのは雑すぎる対応だ。

「あのー、僕この物件の詳細な情報をまだ知らないんですけど。ペット可なのか不可なのか。楽器演奏は有りなのかなしなのか。そういう条件がわからないまま、この金額をはいそうですか、とはいえないですよ?契約書の文面って、見せてもらえないんですか?」
「もうあちらの不動産屋は帰ったと思うので、今日はちょっと」
「でも、ここには今日署名してくれ、ということなんですね?」
「はい。後日にしたら、別の方が先に契約してしまうかもしれませんし」

実際そういうリスクがあるのはわかるけど、それを言うなら正しく借主が判断できるだけの材料を揃えてからにしてくれ。材料不足なのに、胸を張って「早く契約しないと取られますよ。取られても知りませんよ」と自信満々なのはどういう了見だ。

「それにこの計算書、退去時のハウスクリーニング費用とか鍵交換費用が入っていないですよね。48ヶ月の総額、って言ってるけどこれ以外にもお金はかかりますよね?」
「・・・そうですね。でも、『めやす』ですから」

ひでぇ。都合のよいときだけ「めやす」という言葉を使うのか。だったら署名いらねーじゃないか。後からいくらでも費用追加できるってことだ。ちなみにハウスクリーニング代と鍵交換代は、内見の際に貰った間取り図のところに小さく書いてあった。見落とさねーぞ僕は。

いちいち気に食わないのだが、刃向かったところで「イヤなら契約しないでいいです。さようなら」と貸主から言われておしまいだ。一応問題提起だけはしておいて、しぶしぶ署名には応じた。

免許証や収入証明書を複写し、申込書と計算書に添えて先方の不動産屋に送付した。これで、審査待ちとなる。

この日の事務手続きはこれにて終了なのだが、この後、担当者から今後の進め方について説明があった。

これから2-3日で審査結果が出るので、入居OKとなったらすぐにお金を指定口座に振り込んで欲しい、という。その金額と振込先はこちら、と「契約金明細書」という紙を渡された。ここには、先ほどの計算書に書かれている金額をより詳細にバラし、契約日を踏まえた日割り計算までされていた。あ。鍵交換代もちゃんと書かれているぞ。ここに書いているのに、さっきのめやす計算書には書いてないって、やっぱりおかしいだろおい。

「鍵交換がちゃんと明記されているのはともかく、『室内消毒費19,000円』ってなんなのこれ。こんなの、貸主側の負担なんじゃないのか?・・・って、アナタに言っても仕方ないんですよね。はい」

いちいちケチをつけてもきりがないし、単なる仲介をやっているだけの目の前の担当者に文句を言っても通じっこない。不満のぶつけようがない。

気になる点はさらにある。この明細書によると、12月分(日割り計算)の家賃と共益費に加え、1月分も併せて払え、と書いてあった。何で?

「いえ、なんで、と言われましても」

そういう質問をしてくること自体意味不明だ、という雰囲気で困惑する担当者。振り返って、店長に助けを求める。しばらく状況を担当者から聞いた店長、

「ええ、ごく普通ですね。よくあることですよ」

とけろりとしている。いや、違う違う、僕が言いたいのは、よくあるかどうかではなく、おかしくないかこれ?って言ってるの。この業界でよくあるんだとしたら、そりゃ業界の仕組みがおかしいだろ、と問題提起したい。

「もう11月も終わりですし、ここで契約金などをお支払いいただいて、また1月もしないうちに翌月の家賃をお振込みいただくのはお客様にとってお手間となるでしょうから、今回ご一括でお支払いいただくようになってます」

いや、僕は全然手間だと思ってないので、家賃を前払いしたくないです。家賃一か月分って、決して安くない金額だぞ?それを前倒しで払いなさい、というのがいかに一方的な話か、まるでわかっていない。
引越しを考えているくらいだから、これしきのお金を前払いするのは簡単だ。別に金がないわけじゃない。僕がいらだっているのは、こういういろいろなところで「不動産屋(及び家主)の傲慢さ」が見えることだ。

ただ、「イヤなら借りなくてもいいよ」と言われたとき、代わりとなる案が思いつかない。路頭に迷ってしまう。不平等だとは思うけど、それが成り立つのが今の不動産業界の需給だ。いずれ、「お願いします借りてください」と貸主が下手に出るような時代がくれば、こういう不平等慣習は変わっていくのだろう。傲慢な不動産屋、さっさとつぶれてしまえ。

ちなみにお金の振込みは11月29日の銀行営業時間までに必ずするように、と先方不動産屋から念押しされたそうだ。乱暴な話だ、今日は11月24日夜だぞ。審査OKが出てから振込みまで、2-3日しかない見込みだ。

「あちらの不動産屋、なんとかして11月期の営業成績ってことにしたいんですかね?」
「さあ?」

この後の段取りだが、12月8日に契約締結という運びになった。事務処理を行うのは、今回お世話になった不動産屋ではなく、実際に物件を管理する不動産屋の方だそうだ。あくまでもここの不動産屋は、仲介に特化しているらしい。

「いえ、実際に契約事務処理や鍵の引渡しまでうちでやることもあります」

担当者は言う。要するに、相手の不動産屋の考え方次第、ということらしい。今回においても、「契約は先方の不動産屋。鍵の引渡しはこっちの不動産屋」という仕切りで調整しようとしていたが、結局鍵の引渡しも先方の不動産屋という形で落ち着いた。お世話になった担当者だが、この日を最後に二度と会うことはなかった。落ち着いたらメシでも食べにいきましょう、って話してたのに。

で、実際の契約発効日は12月14日。この日から家賃が発生することになる。何とか12月末まで契約開始を引き伸ばしたかったのだけど、入居の意思表示から2週間以内の契約締結じゃないとダメ、と押し切られた。折角家賃を1,000円値切ったけど、結果的にはあまり得しなかった気がする。

引越しは当初予定では12月末だったけど、新居を放置するのが悔しいので1週間前倒しすることにした。

「1週間だけだけど、セカンドハウスができたぜー。愛人を住まわせようかな」

など、この間だけはこじんまりとした妄想を膨らませることにしよう。

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