わたしの歯医者遍歴

奥歯虫歯治療(再々)

歯の点検で見つかった、奥歯の虫歯。さんざん苦しめられ、医者を途中で変えてようやく治した歯なのに、再度そこに虫歯だという。一番最初に「削り過ぎちゃったかなあ」と言いながら歯を容赦なく削っちまった医者に、何度目かの怒り。なんてことしてくれたんだ。

また歯のかぶせものを取り外さなくちゃいけない。笑っちゃうよな、1年たらずで同じ場所を2回も破壊だぞ?誰かに責任を取らせたいくらいだ。

虫歯宣告で暗鬱としている中、先生に院長室に招き入れられた。治療方法はいくつかある、と説明を受けた。

この病院は、丁寧にレントゲン写真やデジカメ撮影画像を見せてくれるだけでなく、タリフをちゃんとペーパーで用意してくれるところが素晴らしかった。治療法、その概要、費用が箇条書きで明記されていて、大変にわかりやすかった。しかも、判断は次回までで良いという。家でじっくり検討する余裕があった。そんなとき、ペーパーがあると大助かりだ。

これまでの病院は、口頭で説明するだけで、何を言っているのかよく理解できない事が多かった。これは歯科医だけでなく、どこの病院でもそうだ。何度となく患者には同じ説明をしているのだろうし、ちゃんと紙に書いたものを渡す努力をして欲しいものだ。「インフォームドコンセント」という言葉ばかりは一人歩きしているけど、口頭でじゃじゃっと話せばそれでいいと思っている節がまだまだ強い。患者に熟慮させるための配慮が足りない。せいぜい、その辺に転がっている紙を使って、手書きで雑な絵や文字を書いて見せる程度だ。

ちなみに、この「奥歯のかぶせもの」をどうするかについて、病院側から提示された提案は以下のとおり。

  • バラジウム 保険適用 とりあえず治したい
  • ゴールド(18K)/ゴールド(20K) 歯に優しい
  • ハイブリッドセラミック 比較的安価でキレイ
  • セラミック 最も天然歯に近い美しさ
  • 硬質セラミック 最も天然歯に近い美しさ+割れにくい

表には、審美性や耐久性が五段階評価で記されているし、値段やその材質の特徴も書かれてあった。ちなみに下に行けば行くほど値段は上がる。保険適用可能なバラジウムで2,500円くらいなのだが、硬質セラミックになると6万円ほどになる。

正直、どれが良いのかわからない。先生に聞いてみたら、「歯ともっとも親和性が高いのはゴールドです。私もゴールドを使っています」と仰る。「いや、でも金歯って目立つんですよね。笑ったときに金歯が見えるってのは僕はちょっと」と尻込みすると、先生は「案外気にならないものですよ、他人はそんなに人の歯の事はきにしません」とさらっと仰る。まあ、先生自らが金歯というのがその証なのだろう。でも、僕は正直イヤだった。

「親和性が高いって何ですか?」

それが気になる。先生曰く、

「歯とかぶせものはきっちり合えば良いのですが、後からつけた歯とは別のものなので、どうしても時間の経過とともに隙間ができたりする。そこからまた虫歯になったりするので、かぶせものを一度つければそれで終わりではなく、やはりどうしても虫歯が出来る都度やり直さないといけなくなる。親和性が高い材質であるほど、そのリスクを減らすことができる」

のだそうだ。先生の発言を正確にはくみ取れていないかもしれないが、概ねそんな内容だったと思う。うーん。一年に二度もかぶせもの(保険適用のバラジウム)をダメにしてしまった僕からすると、それって結構深刻な問題だ。

ただ、僕としては歯と同じ色のセラミックがいいんだよな。何で先生これをプッシュしないんですか?金歯にするよりも儲かるのに。

「このメニューに載せているということは、どの材質であっても自信を持っておすすめできる、ということです。しかしそれぞれ特徴があって一長一短なので」

はあ、なるほど。じゃあセラミックの欠点とは?

「どうしてもゴールドと比べると耐久性に劣ります。おかでんさんの場合は奥歯ですので、とても大きな力がかかります。弱い材質を使っていると、いずれ壊れます」

そうなのか。なるほど了解した。

結局、セラミックを選択した。人間、松竹梅という選択肢があったら、竹を選んでしまいがちなのと一緒だ。一番お高い硬質セラミックはちょっと躊躇した。かといって、ハイブリッドセラミックは経年劣化して変色するらしいし硬度がやや劣るらしいし。

お支払いはクレジットカードで前払い。先般の「歯根破折」のときもクレカ払いができた。便利になったものだ。そして、この医療行為2連発でもう今年の医療費は10万円越え。確定申告で医療費控除を申請できる状態になってしまった。来年はちゃんと確定申告しなくちゃ。

治療については特にこれといって特徴はないので省略。

できあがった奥歯は、虫歯ではないかのように白かった。これは保険適用外にした価値があった。金属で鈍く光る歯を鏡で見る都度、「ああいやだなあ」という気持ちになることを防ぐことができたのは、とても気分的に楽だ。

ナイトガード

奥歯治療の終了と同時に、ナイトガードをちゃんと歯科医院で作ってもらうことにした。これまではAmazonで買ったアメリカ製のナイトガードを使っていたが、半年程度でへたる。それは歯で噛み締めるという性質上仕方がないのだけど、じゃあ歯科医が作るナイトガードってのはどんなのだろう?と思ってお願いしてみることにした。

虫歯における詰め物をかたどるために歯型をとるのと同じプロセスで、がっぽり上あごの歯型を取られた。

一週間後に出来上がったのだが、市販製品とはまったく違うできばえだったので驚いた。新品の写真がないのでwebに掲載はしないでおくが(お古のマウスピースの写真なんて誰も見たくないだろう)、興味がある方は「医療用 ナイトガード」などのキーワードで画像検索をかけてみるといい。

市販品が「馬蹄形の樹脂に噛み付く」形だったのに対し、医療用ナイトガードは歯の形にぴったり合った、薄い皮膜だった。歯に一枚上着を着せる、といった感じだ。とても薄く、新品の時点では一度歯に装着すると外す(というか剥がす、に近い)際に苦労するくらいだ。おかげで、寝ている間のフィット感はすばらしく、寝るのが楽になった。

ちなみにお値段は5,000円プラスアルファ、くらいだったと記憶している。Amazonで市販品を買ったときが3,800円程度だったので、正しくチューニングされたものが+1,200円だと思えばこっちの方が良いと思う。

ちなみにマウスピースは使っているうちに汚れてくるので、毎日の洗浄は欠かせない。この歳にして、「ポリデント」をドラッグストアで買うことになるとは思わなかった。入れ歯じゃないのだけど。

接着ブリッジ

歯根破折治療を施し、「折れた部分は接着剤でくっつけた」上前歯。先生が「審美的な意味合いが強い」とのたまうとおり、非常に危うい存在だった。グラグラするということはなかったが、いつまたぼきっと音を立てるか不安になる程度の信頼感の低さだった。

食事を快適に楽しむことはできず、常に気をつけていないといけない。仕方がないとはいえ、これで歯が治ったといえるのかと残念な気持ちになっていたものだ。

前歯が使えないとなると、食べられない料理というのは案外あるものだ。りんご飴や焼きとうもろこしといった「かじりつく系」の料理は当然無理だが、「焼き鳥」のような串に刺さったものも難儀した。あれは、前歯で食材を噛んで、引きちぎるという動作が必要だからだ。せんべいだって大変だ。一度細かく手で砕いて、奥歯で慎重に食べる。

そういうことをやってきたのだが・・・伏兵現れる。

盛り付け例

へべれけ紀行「日本の中のブラジル」で記事にしたが、群馬県のブラジリアンタウンに行ったときの話。お昼ごはんはブラジル料理のビュッフェを食べたのだが、そこで食べた手羽に小さな骨が入っていて、それを前歯で噛みぬいてしまったのだった。

こういう料理を食べるときは、唇と舌を使って事前に「索敵」して安全を確認する癖が身についていたのだが、やわらかい鶏肉の奥に小骨があることまでは探知できなかった。そのため、がりっと噛んでバキッと。あー。

歯が折れると見事なまでにテンションが落ちるものだな、人間って。我ながら感心するくらい、テンションだだ下がり。どうにもならないから、今は落ち着いて明日以降病院だな、とわかってはいる。対処はわかっているのに、げっそり。

何しろ、時間の経過とともに前歯がずるずると落ちてくる。引っ張ればスポーンと抜けてしまうのだろうけど、まだ歯茎に支えられていてそこまでは至っていない。でも、他人が見てもわかるくらい、両隣の歯と高さが違うようになる。舌で押し込んでも、1分もすればまたすぐずり落ちてくる。

こうなると、もうろれつが回らない。前歯に舌を押し当てて発音する言葉ってのは結構あるようで、それを無意識のうちに避けようとするから発音が怪しい。フガフガした言葉になる。ああ、お年寄りがフガフガしているのはこういうことか、と我が身で実感。

一度折れた歯を接着し、それがまた折れたのだ。もう一度同じ治療をやっても、強度が保てないのは素人目でもわかっていた。こりゃー、いよいよインプラントだな。腹を括った。20万円だろうか?30万円だろうか?

後日、病院に行って、例の院長室で先生から説明を受けた。やはり、もう一度接着剤をつけて「何事もなかったかのように」するのは無理なのだそうだ。じゃあインプラントなのか?と身を乗り出したら、先生は結構な慎重派で、両手放しでお勧めというわけではないそうだ。

この先生、「メリットとデメリット」をちゃんと説明してくださるのだけど、デメリット部分をとくに入念に教えてくれる。なので一瞬「どれもお勧めじゃあないのではないか?」と思ってしまうくらいだ。安易に「これいいっすよ!」と言ってこない分信頼できる。

インプラントは、定期的なメンテナンスが欠かせないことだけでなく、いずれ歯茎が加齢とともに退化して小さくなった際、中の金具が露呈して見栄えが悪い場合があるという。

「おかでんさんの場合、笑ったときでも歯茎が出ないのでさほど問題はないと思いますが・・・気にされる方は気にされますね。そういうときはまたインプラントをやり直す場合があります」

おう、一回あたりかなりお金がかかるものだが、一生のうちに一度やったらOKというわけではないのか。しんどいのぅ。

とはいえ、「両側の健康な歯を削る」ブリッジはイヤだ。奥歯くらいならまだしも、外見に直結する前歯をガリガリとやるのは野蛮だ。

「ブリッジは野蛮でイヤなんですよねえ」

と先生に愚痴ったら、先生は

「それはものの考え方次第です。野蛮だとは私は思いませんけどね」

と言われた。うーむ。

インプラントだろうな、と心に決めて院長室に入った僕だったが、お値段を聞いてびびった。60万円を超えるのだという。外部の病院でCTスキャンをやってもらったりするお金は別なので、実際はなんやかんやでもっとかかることになる。おい、クレカ払いにしても、限度額が気になる金額だぞそれは。

インプラントは自由診療の最たるものなので、病院によって値段はまちまちだ。安いところだと、最近は10万円台からやっているところもあると聞く。実際の普及価格帯としては20万から30万円、といったところか。顎の骨に穴を開けてボルトを埋め込む、という大胆な治療なのでお金がかかるのは当然だが、それにしてもこの病院で60万円超というのはちょっと僕には無理だった。きっとしっかりと治療してもらえるのだろうが、ない袖は触れぬ。

途方に暮れていたところ、先生は「接着ブリッジ、という方法もあります」と教えてくれた。初めて聞く言葉だ。

普通のブリッジと同様、「左右の歯で真ん中の義歯を支える」という仕組みは一緒。しかし、そのやり方が違う。義歯の左右に金属のプレートがついていて、その金属を両側の歯の裏に「接着する」ことによって義歯を支えるのだった。もちろん、金属を接着するために両側の健康な歯を削らなければならないのだけど、1ミリ2ミリ程度で済み、歯へのダメージは少ないという。健康な歯をごっそり削る従来のブリッジとは違う。

歯の裏側、しかもごくわずかを削るだけえとはいえ、「健康な歯までとばっちりが飛ぶ」ブリッジには抵抗感があった。しかし事実上それしか選択肢がないわけで、これでお願いすることにした。ちなみに治療費は20万円台後半。うひゃあ、これもそれなりに高い。でも、60万円を超えるお金がかかる、と説明を受けたインプラントと比べれば激安に見える。ああいかんな、金銭感覚が麻痺してきた。

新しくブリッジで装着するための歯を作るまでの間、仮歯を入れておく必要があった。もちろん、「仮歯なんていらねぇよ!」と言ってもいいのだけど、さすがに前歯が欠けているのは我慢ならないくらい見栄えが悪い。1万円かかる、と言われたけど、二つ返事でプラスチックの仮歯を入れてもらった。こういうのも、保険はきかない。歯ってのはかなり「保険適用」と「適用外」が複雑で、端から見る分にはとても興味深い。「治療」と「審美」が直結する世界だからだ。

プラスチックの仮歯は、かなり頑丈だった。正式な歯ができるまでの間、とてもなじんでしまって「もうこのままでいいんじゃないか?高いお金を払ってブリッジにしなくてもいいんじゃないか?」と真剣に思ったくらいだ。

もっとも、その仮歯は左右をスーパーボンドで接着されているだけという状況だ。決して安定しているわけではない。

先生は、仮歯を入れる際に「後で仮歯を取り除く際に、接着剤を削り取らないといけないんです。だから、どこに接着剤がついているのかわかるように、わざと白い色がついています」とおっしゃっていた。なので、最初は歯の裏側だけに接着剤が付けられていたのだけど、ものの数日でグラグラし始めた。いくら気をつけて食事をしていても、前歯にはどうしても負荷がかかるからだ。その結果、もう一度病院に行き、歯の前面にも接着剤をたっぷりつけてもらった。先生は「取り除くのが大変なんです」と若干しりごみしてはいたけれども。

その後1回通院して、治療はあっけなく終わった。治療そのものも短時間で済んだ。既に加工済みの義歯と金属を顎にはめて接着するだけ。あとはかみ合わせの調整。歯の色がぜんぜんずれていたらどうするんだ、と思ったが、あらかじめ「おかでんカラー」を踏まえて義歯は作られてあったらしい。

この治療を行ってから約1年が経過したが、今のところ快調に使えている。めったにやらないけど、「前歯で噛まないといけない料理」に出会っても問題なく噛めている。ひとまずは満足している。

ただ、上前歯3つの裏側にツルツルした感触の金属が張り付いているので、その点はいまだに違和感が残っている。

番外編:スマホアプリ「Sleep as Android」

自分が歯ぎしりを本当にするのか、よくわからない。自覚がまったくないからだ。いびきならまだしも、歯ぎしりとな。朝起きたときに顎が痛いとか、歯が痛むといった経験はこれまでないので、どうにか確認したいものだ。

そこで、スマホアプリの「Sleep as Android」というものを使ってみることにした。枕元にスマホを置いてこのアプリを動作させておけば、朝までノイズを録音し続け、それを分析して睡眠の質を報告してくれる。いびき音なども、まさにその瞬間!の部分を抽出して自動保存されている。

使ってみたら、ギリギリという歯ぎしり音は全く見当たらなかった。あの音は、一緒に寝ている人からしたら恐怖以外の何者でもない。以前、社員旅行で歯ぎしりがすごい人と同室だったことがある。その結果、あまりに地獄の様相だったため耐え切れず、部屋の外の廊下でごろ寝する羽目になった。音の大きさが問題なのではなく、「ギリギリ・・・」という音がとにかく怖い。それを思えば、自分がそうでなかったのは安心だ。

しかしその代わり、「こん、こん・・・」というカスタネットを叩くような音が頻繁に録音されていた。それは時には甲高い音になり、「きん、きん!」という音のときもある。なんだこれは、心霊現象か?と身構えたが、調べてみたらこれも歯ぎしりの一種。「タッピング」というらしい。つまり、寝ている間に無意識に歯をカチカチと鳴らしているのだった。うわー、やだなぁ。マウスピースをしていてもしっかり音が鳴っているのだから、ため息がでる。ストレスからこういう行為をしてしまうらしいので、とにかくストレスを解消させないと。また、温泉療養でもしなくちゃいけないかな?と思う昨今。

1 2 3 4 5

コメント

コメントする

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください