やけくそになってテレワーク環境を一層ブーストさせる

机の上に23.8インチディスプレイが設置されたことによって、僕の仕事環境が快適になっただろうか?いや、そんなことはなかった。まだだ、これでは不完全だ。

こうなることはディスプレイを買う前から薄々気がついていた。しかし、この先に歩みを進めるには相当お金がかかる。さすがの僕でさえも、躊躇してStep by Stepで物事を進めざるをえないくらい、ハードルが高い。

というのは、奥行き60センチの机において23.8インチディスプレイは相当ゴツく、その対策が必要だからだ。

これまでの僕はというと、ノートPCの13.3インチを相手に作業をしていた。これが一気にサイズアップするわけだから、フットサルとサッカーの違いくらいはある。


外付けのディスプレイを使ってみて感じた第一印象は、「目線の移動が多くて面倒だな」ということだった。

これまで、眼球をわずか1ミリとか2ミリ程度動かせば画面の隅々まで見渡せていたのに、23.8インチになるとグイッと目の筋肉を使って目ン玉を動かさないといけない。ディスプレイの表示ごときに、「遠いなぁ」と思ってしまう。

そこで気が付くのが、「ああ、自分と画面の位置が近すぎるんだ」ということ。

モニターアーム導入のメリットは数多いけど、デメリットは「ディスプレイがずいぶん前にせり出してきて、圧迫感が強くなる」ことだ。

ただでさえ大きなディスプレイに加えて、モニターアームの厚みによるせり出し。このせいで、とても使いづらい状況だった。ゲーマーなら「没入感」という表現でポジティブに考えられるだろうけど、ExcelやらPowerPointを使っている僕にとっては社畜度MAXでネガティブな感覚になる。

教訓。
テレワーク環境を自宅に構築する際、将来的にモニターアームや外付けモニタの導入を見据えるなら、デスクの奥行きは最低60cm必要。奥行き45cmなどのコンパクトなデスクは、一生ノートPCで完結する覚悟がある人向けだ。

で、この「眼前に迫りくるモニター問題」だが、自分が机から後ろに下がることである程度解決ができる。外付けBluetoothキーボードがあるわけだし。

しかし、そうなると今度は肘が宙に浮いてしまう。これまでノートPC時代なら、肘のあたりから手首のあたりまでべったりと机につけて作業ができていたのだけど、そういうわけにはいかない。

解決策は、一つしかない。肘掛がついている椅子を買う、ということだ。

肘掛なんて、職場において自分の役職の高さを誇示するための「装飾品」だと思っていた。

僕が社会人になった当時、弊社では「管理職になると椅子に肘掛が付く。一般職は肘掛なし」というルールだった。で、人事発令があるたびに、やれ肘掛が足りないとか余ったとか、騒いでいたものだ。

今じゃ、役員になるまで肘掛椅子は無しになったけど。なにせ偉い人まで全員フリーアドレスで働くようになったから。

あんなの、邪魔だ。肘掛けがあるせいで、横座りとか、椅子を逆向きにして背もたれにしがみつくような格好ができない。

しかし、今回ばかりは、どうやら年貢の収め時らしい。肘掛がないと、目の前のディスプレイに圧倒されてしまう。さらば、我が愛しの雑な姿勢。


そしてもう一つ問題が出てきた。

これまで使ってきた椅子には全く不満がなかったのだけど、眼前に迫るディスプレイの圧力に太刀打ちできなくなって良い姿勢になった結果、背もたれに不満が出てきたのだった。

これまで、オカムラのビラージュという商品を使ってきた。

つい先日まで、椅子が壊れるまでコイツとともに生きていく所存だった。

しかし、外付けディスプレイのお陰で上半身の姿勢が良くなった分、背もたれに常時背中を押し当てている状態になったときに不都合が出た。この姿勢だと、自分の背中にフィットした背もたれと、首を支えるネックレストがないと厳しい。

恐らく、多くの椅子というのは「前かがみになって、本や書類、PCを見下ろす」姿勢を前提に作られている。一方で今度の僕はというと、目線の高さにディスプレイがあるため直立の姿勢になる。このため、背もたれに求められる機能が変わってくる。

ダイニングテーブルで仕事をするおかでん

↑は以前の環境での姿勢。

この状態において背もたれというのは、時折「やれやれ」と一息ついて背伸びとかをする際のものだ。集中して作業をしている際に使うことはほとんどない。

しかし、目の前に大きなディスプレイが置いてあると状況は一変する。背もたれにもたれかかるのがデフォルトの姿勢になる。

ビラージュの場合、僕の体格と背もたれがうまくかみあわなかった。

背骨のS字カーブをフォローするために、この手の椅子というのは「ランバーサポート」という機能がついている。腰が反ってくぼんでいるところに沿うように背もたれが出っ張っている。これにより、負荷分散ができて体になるのだという。ゲーミングチェアにも当たり前のように搭載されている機能だ。

このランバーサポート、高さが可変だったら良かったのだけど、ビラージュはそういう作りになっていない。その結果、僕みたいに座高が高い人にとって腰のカーブと背もたれの出っ張りがうまくあわず、どうにも不快だった。腰が押されるので、背中の支えが足りなくて背中から首が安定せずにフラフラする。

これは、前かがみの時には気が付かなかったことだ。


ああこれは駄目だな、椅子を買い換えないとむしろ姿勢が悪くなりそうだな、とさすがに諦めがついたので、新しい椅子の検討を開始した。条件として、

  • 肘掛け、ネックレストがあること
  • ネックレスト部分の角度・高さが調整できること
  • 深く背もたれに体重を預けても不快にならないこと

の3つを考慮した。

つまり、高級オフィスチェアで知られる「アーロンチェア」はそもそも眼中にない。あれはネックレストがない椅子だからだ。

恐らく物書きのように前かがみで作業をする人にとっては、最高の椅子なんだろう。絶賛の口コミを多数見かけるし。でも、僕のニーズとはたぶん違う。

それで良かった。うっかりアーロンチェアが欲しくなったら、20万円を越える出費になっていたからだ。僕の給料が椅子だけのために消えてしまう。

ほら、よく聞くじゃないですか。「高い椅子だけど、買ったら長く使うものだし買って後悔はしなかった」っていう体験談。実際そうだと思うけど、安くて良いものに出会えたらもっといいよね、と僕は思う。

椅子の世界について全然詳しくないけれど、「椅子の値段と快適さが完全に比例する」とは到底思えない。値段はそこそこだけど、居心地が良いな椅子って、たぶんどこかにあるはずだ。


オフィス家具を体験できる場所って、東京といえども案外少ないものだ。ニトリとかIKEA、無印良品ならともかく、それ以外のメーカーともなると「あれこれ試したい」というニーズを応えてくる場所が数少ない。

頼みの綱のメーカーショールームは、「ビジネスユースの人でないと入れない」とか、「コロナの関係で平日限定の完全予約制で、空き日程は相当先」とか、一般客につれない。

ちょうど僕は業務として職場のオフィスリノベーションを担当しているので、ビジネスユースと称してショールームに行くことはできる。とはいえ、会社の名刺を差し出して私物の椅子を探すのは公私混同はなはだしいのでやめた。

実際の椅子をあれこれ体験できる場所は少ないものの、ありがたいのが昨今のe-sports流行りだ。このおかげで、ゲーミングチェアを始めとする快適な椅子のニーズが高まっているようで、家電量販店にオフィスチェアも置いてあったりもする。

とりあえず、ネックレストがついている椅子をお店で見つけては片っ端から座ってみた。


その中で、「おっ、これはいい」と思ったのがこれ。エルゴヒューマンというメーカーの椅子。

座り心地なんて、自宅環境で実際にパソコンを何時間も使ってみないとわからないものだ。だから数多くの椅子からベストワンを選ぶのは難しい。しかし、「これは多分自分と相性が悪いな」というものは簡単に見つけられる。だから、消去法で椅子は決まった。

エルゴヒューマンの場合、ケチをつけるところが殆どなかった。独特の形をしたランバーサポートが体にフィットするか若干不安があったけど、少なくともネックレストは僕にとって最高だった。・・・というか、他の椅子が全部しっくりこなかったんだ。20脚以上の椅子に座ったんだけど。

ネックレストがついていても、僕の頭に合わないものが何と多いことよ。座高の高さ(1メートルある)のせいなのか?そんなに僕はイレギュラーケースなのか?不思議でしょうがない。

たとえば↑なんて、街中のコワーキングスペースによく採用されている椅子だけど、僕にとっては首のサポートが完全に空振りで、頭を預けられない。

オカムラ、個人的には好きなメーカーなんだけど、どうも大型ディスプレイで覚醒した僕との相性はよくないようだ。

オカムラの中で代表的な高級オフィスチェアとして知られる、「コンテッサ セコンダ」(だいたい20万円)でも、僕の首がうまくはまらなかった。「日本人の体型にフィット」とわざわざ標榜しているけれど、駄目だった。なんだ、僕は日本人じゃなかったのか。

高級な椅子だから最高、というわけではない好例。人によって合う・合わないがある。

というか、話は脱線するけど、将来的にはポリコレ的に「日本人」っていう言い方はアウトになる気がする。だって、世界各国にルーツを持つ日本国籍を持つ人が増えてきているわけで、こういう表現を使うことに対してセンシティブな世の中になっていくはずだ。


ネットで調べると、イトーキの「サリダ」の評判が結構良いらしい。スペックを見ると、ネックレストの高さ調整や角度変更ができ、僕の希望に応えてくれている。値段は4万円弱なので、11万円程度のエルゴヒューマンの半額以下だ。

興味がある!これはいい!・・・けど、選べなかった。だって、実物に座れていないから。エイヤッと思いつきで物を買う僕でさえ、今回は遠慮した。

実際に座ってみて「これは微妙だな」と思ったら、それはとんでもない粗大ごみになる。

なにせオフィスチェアという代物は、ダイニングチェアなんかと比べ物にならないほど重くてでかい。だから、座ったことがないものを買うわけにはいかなかった。

お店に展示されていれば良かったんだけどね。僕が巡ったお店のどこにも、この実物がなかった。


で、実際に座ることができたエルゴヒューマンを購入。高かったけど、Amazonだと色によって値段や割引率が違ったので、一番安いのを選んだ。それでも10万円ちょっとしたと思う。うわあ。

何時間残業すればこの椅子の元が取れるんだ?とマジで電卓を叩いてしまったくらいだ。なんで仕事を頑張るために自腹で良い椅子を買ってるんだ。これぞ社畜。

よく、「一日の1/3はベッドの上で過ごしているのだから、良いベッドを買いましょう」と言われる。それはその通りだけど、僕の場合はベッドにいる時間よりも椅子に座っている時間のほうが長い。お金をかけるならベッドより椅子のほうが先、ということになる。・・・いや、この文章を書いていて自分がキモくなってきた。会社から助成してほしいなぁ。テレワークなんだし。

チェアによってはパーツがバラバラになって配送され、自分で組み立てないといけないものもあるようだ。でもエルゴヒューマンは完成品がそのまま自宅に届く。つまり、冷蔵庫みたいなサイズの段ボールが家に届く、ということだ。

しかも重さは30キロ近く。配送してくださった方には頭が下がる。

玄関先で配送業者さんの手によって梱包が解かれ、箱はそのまま引き取られていった。僕の手元には、ピカピカの椅子と取説だけが残る。

ネックレストまであるオフィスチェアの威圧感は事前に十分理解していたので、今更そのことで驚きはない。しかし、このデカさは部屋に配置してみて「しまった、想定と違った」と思う人が一定数いるだろう。

感覚として、快適に過ごすためには机のサイズ込みで幅1メートル✕奥行2メートル程度が最低必要になってくる。もっと狭い空間で使うとなると、椅子から立ち上がってトイレに行く都度、椅子であちこちをガンガンぶつけることになる。

僕がもっとも惚れ込んだネックレスト。高さ調整、角度調整両方可能。

このカーブのどこに首または頭を当てるか、1ヶ月経ってもまだ模索中だ。浅く腰掛けた時、深く腰掛けた時、シチュエーションに応じて「いい塩梅」の角度や高さが変わる。

このネックレストは非常に目立つデザインなので、オンラインミーテイングで顔出しをすると「おっ、エルゴヒューマンの椅子だ」とすぐにわかる。たとえば、哲学者で批評家の東浩紀氏は自宅書斎の椅子がエルゴヒューマンだった。

「えっ?」と二度見してしまう、特徴的なランバーサポート。

背もたれと独立して可動するかのように見えるが、実際は背もたれとくっついている。のけぞるような曲線のスタイルだけど、こののけぞり角度が調整できるわけではない。

ステンレスのフレームに対して、T字型の黒い樹脂フレームが固定されている。この黒いフレームで背もたれが支えられている。

背もたれの高さは3段階で調整できる。背もたれの位置を調整する、というよりもランバーサポートの出っ張りと自分の腰のポジションをあわせるためのものだ。

こういうのは、一度バチッとベスポジを決めるとあとは変更なし!だと思っていた。でも実際は、結構頻繁にネックレストやランバーサポートを調整している。特に肘掛けなんて、一日に何度も調整している。

シンプルな椅子と違って、体とよくフィットする椅子だ。そのため、ちょっと姿勢を変えたら「あれ?なんか居心地が悪い」という感覚にすぐ気がつく。そしてその姿勢にアジャストした設定に変更することになる。

椅子がいろいろな自分の姿勢に追随できるのが素晴らしいが、その分快適さを追求するために常に微調整が必要だ。

この椅子は「基本的な操作は右下のレバー1つで事足りる」ことを売りにしている。

見ると、まるでプリウスのシフトレバーみたいな表示のレバーがある。

下に押しこむと座面の上下。前に押すと座面の位置調整。後ろに引くと背もたれのリクライニング調整。なるほどこれは便利だ。

ほら、よくあるじゃないですか、慣れない椅子に座ったら、レバーがどこにあるのか右やら左やら手探り探す羽目になること。誰かが座ったあとでリクライニングがスカスカのセッティングなので、背もたれを固定させようとしたけど結局やり方がわからなかった、とか。そういうのがこれはなく、わかりやすい表示があって助かる。

実際はこのレバーの右側に写り込んでいるダイヤルとか、背もたれの下にも別のダイヤルが存在する。このレバー1つで万事解決、というわけではない。でもそれらは登場頻度が低い設定項目だ。


使ってみて最初の一週間は、首から背中、肩の前あたりの筋肉で緊張を感じた。

「背もたれに体重を預け、顎を引いた状態で正面の画面を見る」という良い姿勢の経験がこれまで殆どなかったからだ。この椅子が導入されたことで、良い姿勢を取り戻せたと思う。その過程で、体に違和感を感じたのだろう。じきに違和感は解消されていった。

やはり首をサポートしてくれるのは最高だ。お陰で今、長時間労働をやっても首・肩の凝りは全然気にならない。あと、座面の出来が思った以上によく、体重をうまい具合に受け止めて体圧を分散してくれている。お尻が痛くなるということもない。


万事快調、というわけではない。

1ヶ月以上経過した今でも僕は肘掛けのベスポジが見つけられず、机の高さを微調整したり、肘掛の高さ・向き・前後左右の位置など模索している。椅子の問題というよりも、チューニングできる要素が多すぎて、僕が「まあこんなもんだな」と諦められないからだ。

あと、椅子が快適すぎるのと、大型ディスプレイ、ワイヤレスキーボードがいい仕事をしてくれているので、部屋に籠りがちになってしまった。これはとても大きなデメリットだ。

たとえばこれまでは、「今日中に資料をガッチリ作り込む!気分転換と気合を入れるために、コワーキングスペースに行って作業をするぞ!」ということがあった。しかし今や、自宅のほうが快適だし作業がはかどる。それはそれで良いことだけど、外出する意欲が失せてしまうのは、人間の創造性や活力に深刻なダメージを与えてよくないことだ。

さらには、せっかく電動スタンディングデスクを買って「健康のために立って仕事をする」ことにしたのに、殆ど立たなくなってしまった。椅子が快適すぎて、そこから動かなくなってしまった。

寿命が縮む椅子、なのかもしれない。快適な椅子もよし悪しだ。

僕の仕事机と椅子は、自宅の寝室に置いている。そして仕事が忙しいので、子どもの世話と夕食が終わったら仕事に復帰する日が多い。つまり、朝起きてから夜寝るまでの間、20時間以上寝室にずっといる日がザラにある。一人暮らしの家みたいだ。

新しい椅子にウットリするのに飽きてきたら、早々に部屋を出よう。もっと活動的になろう。そうでないと、本当に寿命が縮む。

(2022.07.20)

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コメント

コメント一覧 (2件)

  • 在宅勤務で椅子は本当に大事ですよね。
    イトーキのサリダチェア、一年ほど利用していますが満足しています。
    購入に至るまでの思考のプロセスのところをみんな同じこと考えるんだな~と思いながら読ませていただきました。

    大阪にはイトーキのショールームがあり、事前予約は必要ですが個人でも見学ができ、私のときは説明してくれる社員の方が一人ついてくださり、こちらが恐縮してしまうくらい丁寧な対応で一気にファンになりました。

  • GUYさん>
    あー、サリダチェア、良かったですか。しかも1年使っても満足しているなら良い買い物でしたね。やっぱりオフィス家具メーカーの製品は長時間利用に耐えられるしっかりしたものを作っているな、という印象です。

    最近のド派手なゲーミングチェア、あれは使ったことがないんですが仕事には向いているんだろうか?誰か体験があるなら感想を聞かせてほしいです。

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